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「飲食店を木造・木質化させて、魅力的な店舗を作りたい」と考えていませんか?
飲食店の木造木質化を成功させるためには、さまざまな事例を知って、良い点を取り入れることが大切です。そこで本記事では、木造木質化した飲食店における7つの事例を紹介していきます。
飲食店が木造木質化した際のメリットも紹介していくので、店舗の特徴を活かせるような木造木質化を考えていきましょう。
「木造化」と「木質化」の違いは下記の通りです。
混同しないように注意しましょう。
次に、木造化・木質化させた下記7つの飲食店における事例を紹介します。
背景や意図、メリットなどを考察しながら、店舗に適した木造木質化のヒントを探していきましょう。
「トラットリア・アグレステ」は「地産地消」をコンセプトとした、茨城県石岡市のイタリアンレストラン。店舗の内装や構造部にはたくさんの木材を使用しているので、店内は温もりを感じられる落ち着いた雰囲気です。
特に、天井に見える梁のうち90%以上は茨城県産の木材を使用しています。「いばらき木づかい事業」を活用し、経費の助成を受けました。
また、テーブルやイスは石岡市内にある家具工房に発注したので、地域産業への貢献にもつながっています。茨城県産の食材や木材を活用しているからこそ、トラットリア・アグレステに訪れる客は、茨城の魅力を発見できるのではないでしょうか。
「タリーズコーヒー伊丹店」は、歴史ある伊丹酒蔵通りの景観に見事マッチしたコーヒーショップです。
軒の深い木造平屋の店舗が、酒蔵通りだけでなく、周囲の緑とも調和しています。利用者からは「一度この雰囲気を味わうと他に行けない」や「とても落ち着き長居をしてしまう」と言われており、利用客の居心地の良さにもつながっています。
利用客から愛着を持って店を利用してもらうことで、結果として高い収益を得ることも狙いの一つです。実際にタリーズコーヒー伊丹店は、系列店の中でもトップクラスの来客数を記録しました。
今後は「コーヒーのおいしさと木造の味わいで愛される町の名所になること」を目指しています。
「椿茶屋」は、長崎県五島列島の福江島にあった歴史ある建物をリニューアルした茶屋です。内装と外装にはできるだけ多くの木材を使用し、周囲の豊かな自然に溶けこむことを目標としました。その結果、建て替え前の茅葺屋根の雰囲気を残しながらも、周囲の景観になじむ茶屋へと変貌しました。
囲炉裏の天板には、リニューアル前の建物で用いられていた古材を再利用しており、地域の記憶を受け継ぐ役割も果たしています。提供される地元食材とともに、店舗や内装が地域の魅力発信に貢献しています。
「ともしびショップ湘南平」は、飲食店とショップが併設された店舗です。障がい者支援に取り組む社会福祉法人が運営しており、木材を用いて多様な個性が調和する空間を目指しました。
木材の業界では欠点として捉えられることが多い不揃いな伐採木を「個性」として捉え、内装や家具に利用しています。1階のホットケーキ店「湘南リトルツリー」では、不要となって伐採された50種類以上の県内産樹木を加工して、柱やドアなどに活用。
木材ごとの個性を活かして、テーブルやカウンター、イスも製作されました。「健常者と障がい者をつなぐ場」としての社会的な役割も期待されています。
「もくあみの杜」は、湯布院の観光名所「金鱗湖」の付近にある、飲食店などが集まった複合施設です。「もくあみ」という杉材を組み合わせて使用したことによって、シンボリックな木組みデザインになりました。もくあみは、伝統工芸である竹細工の「ござ編み」をモチーフとしたものです。
小屋組みや軒、外壁、廊下といったあらゆる場所にも国産の木材が使用されています。緑豊かな環境にもよくなじんでおり、観光で訪れた人がゆったりとくつろげるような場を形成しています。
人気コーヒーショップ「星野珈琲」の店舗の一つである「美しが丘店」は、住宅街に隣接するコーヒーショップです。木の優れた使用方法が、利用客の心地良い滞在につながっています。
例えば、床や天井などのあらゆる場所に木材が使用されており、店に訪れた瞬間に木の温もりが目に入ってくるデザインです。温もりあふれた空間でコーヒーや食事を楽しむからこそ、利用客の満足度は高まるでしょう。木材を多用することで非日常的な空間を作り出し、繰り返し訪れたくなるような効果を生んでいます。
参考:ウッドデザイン賞受賞作品データベース|一般社団法人日本ウッドデザイン協会
「浜松料理 娯座樓」は、静岡県浜松市の地元食材を提供する飲食店。
娯座樓(ござろう)の店舗作りは、木材の生産から建築まで全て浜松市で完結しているのが大きな特徴です。内装には、適切に管理された森林の木材に与えられる「FSC認証」の地元材(天竜材)を用いており、木の美しさを存分に引き出したデザインとなっています。
娯座樓を経営する「じねんグループ」は、地産地消に努めており、土地でとれた食材を大切にしています。店舗作りにおいても、地元材の使用を重視しているからこそ、浜松の魅力を多くの人に届けやすいのではないでしょうか。
次に、飲食店が木造木質化する7つのメリットを紹介していきます。
飲食店が木造木質化すべき理由は、以下の通りです。
それぞれ詳しく解説していきます。
木材を使用した店舗作りは、木の温もりや香りを感じられるため、居心地の良い空間作りにつながります。来客の増加効果も期待できるでしょう。さらに、従業員も気持ち良く働きやすいため、コミュニケーションがとりやすい職場作りも目指せます。
飲食業界は離職率の高い業界なので、人材確保が課題となっています。だからこそ、従業員の「働きやすさ」を重視する対策が強く求められるのではないでしょうか。
無垢材を内装に使用した部屋では、集中力が高く保たれることが報告されています。そのため、飲食店に木材を使用すれば、利用客と従業員の集中力が高まる効果が期待できるでしょう。
例えば、テレワークで働く人が多く訪れるカフェであれば、「このカフェで仕事をすると、作業がはかどる」と利用客に思ってもらえれば、リピーターの獲得につながります。
もちろん、従業員の集中力も高まるため、作業効率の向上も見こめます。スピード感のある対応が求められる飲食店だからこそ、集中して働ける職場環境は大きな武器となるはずです。
参考:建ててみましょう!木造で|公益財団法人日本住宅・木材技術センター
木造の店舗にすることで、断熱性を高める工夫ができるため、光熱費の削減を目指せるでしょう。木造の建物は、外壁の内部空間を活用して厚みのある断熱材を入れることが可能です。
また、木材はコンクリートや土壁といった他の建材と比較すると、断熱性が高い傾向があります。高い断熱性は、建物内外の熱の移動を防ぎ、屋内の温度変化を少なくするため、冷房や暖房といった光熱費が節約できます。
参考:建ててみましょう!木造で|公益財団法人日本住宅・木材技術センター
木材を店舗に活用することで、衛生面が向上し、屋内環境が改善されます。なぜなら、木材には以下の効果があるからです。
清潔感や衛生環境を重視する飲食店において、上記の効果があるのは大きなメリットではないでしょうか。
参考:建ててみましょう!木造で|公益財団法人日本住宅・木材技術センター
木材の活用は、国や地方自治体で推進されているため、飲食店で木造・木質化を行う際は、補助金を活用できる可能性があります。
例えば、東京都港区では「港区テナント店舗等の木質化モデル創生事業」を実施しており、内装や外装といった目に見える場所に木材を使用した場合、経費の助成を受けられます。
助成金の上限額は250万円にものぼり、手厚い支援を受けることが可能です。経費の面で木造・木質化をためらっているのであれば、まずは店舗がある地域の補助金情報を収集してみるのがおすすめです。
森未来では補助金を活用した提案も可能です。ぜひご気軽にご相談ください。
参考:テナント店舗等の内外装や家具等で目に見える場所に木材を使用した際の経費を助成します|東京都港区
木造は、鉄筋コンクリート造や鉄骨造といった他の構造と比較して、工事の期間が短いです。
「営業日を増やすために、すぐにでも飲食店をオープンさせたい」という場合、木造を選択すると良いでしょう。また、工事期間が短いので、工事全体の経費削減にもつながります。
参考:建ててみましょう!木造で|公益財団法人日本住宅・木材技術センター
木造木質化した飲食店を作ることは、社会貢献にもつながります。なぜなら木材を活用することによって、森林の持続的な管理や、環境負荷の低減に貢献できるからです。
地元の木材を使用することによって、地域の林業や木材関連事業の活性化の一助にもなるでしょう。環境や地元産業への貢献をアピールすることで、取り組みに共感した人が利用客となるかもしれません。
参考:建ててみましょう!木造で|公益財団法人日本住宅・木材技術センター
飲食店の木造木質化における例で、多かったのは「地産地消」などのコンセプトを持つ飲食店が地元産の木材を使用するケースです。
木造木質化は、コンセプトのアピールにつながります。
弊社では木材情報を集約したプラットフォーム「eTREE」を展開しています。
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