eTREEコラム

記事公開:2023.1.11

ALL WOOD PLATFORM  eTREE 構築への課題と戦略

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森未来では「Sustainable Forest 」というミッションを掲げ、

そして、「All wood platform 」つまり、森林・林業・木材のあらゆる情報をテクノロジーの力で集約し、未来を変革する木材流通の確立を目指しています。

森未来のサービスをお話しする前に、まず、現在の木材流通の概説をします。

上の図のように、現在の木材流通の関係者は川上、川中、川下に分類できます。
山の権利所有者である山主、林業家の川上、製材業~材木小売の川中、工務店や設計者の川下です。

浅野は、材木が普及しない原因として、川上、川中、川下間での情報の断絶が原因であると考えました。

木材流通における情報断絶の現状

まず、川上と川中の中間地点である原木市場をみてみましょう。

上の写真はある地域の原木市場の様子です。原木市場とは、林業家などの素材生産者が売る原木を、製材事業者が買い付けに来る市場です。

この原木市場は基本的に材木業界の人しか参加できません。加えて、市場に参加する人はその地域の製材事業者だけで、他の地域の製材事業者が、どんな原木が売られているか知ることのない閉ざされたマーケットになっています。
さらに、その地域製材事業者であっても、どんな原木がどのくらい競りに出されるか当日まで分かりません。
このように、木材流通の初期段階である材木市場で情報の断絶が起こっています。

次に、材木市場を見てみましょう。
材木市場は、製材事業者が、原木を加工し、板状・柱状等にした材木を材木屋に販売する場所です。

そして、原木市場と同じく、市場に出される材木は競り市に参加する地域の事業者にしか共有されません。
もし、川下である設計者が市場の質の良い材木を知ることができたら、購入する可能性もあります。もしかすると、隣の地域では、その材木をほしいと思う材木屋がいるかもしれません。

しかし、材木の情報が川下に共有されることなく、川中内、それも各地域内で情報が完結している現状です。

「設計者の木材利用のハードル」

現状の材木に関する情報アクセスの難しさから、川下である設計者にとって、木材利用のハードルが高くなっています。
浅野が東京都あきる野市の秋川木材協当組合で働いていたころ、東京・多摩産材の在庫や価格についての問い合わせが多くありました。

このような問い合わせがなぜ来るのか不思議に思った浅野は、問い合わせ先の事業者を分析してみました。
そこで、多摩産材についての問い合わせが多いのは、多摩産材についての量や質、価格がインターネットのどこに掲載されていないためであることが分かりました。

さらに、調べを進めると、多くの製材所や材木店では、取り扱う材木の価格をインターネット上に掲載していないことが分かりました。

インターネット上に情報がないと、設計者が材木を仕入れるためには、材木屋さらには製造元に直接在庫を問い合わせる必要があります。

全国の材を一度に確認する手段もないので、設計者は材木業者へ一社ずつ問い合わせなくてはなりません。
さらに、連絡手段は電話やFAXがほとんどのため、材探しだけでも労力は大きいです。

そして、取り扱われている材木の情報を入手しても、製材所によって材木の規格や品質基準(等級)が統一されておらず※、他社との量や価格の比較が難しい問題があります。
また、材木屋の在庫管理が紙媒体のみのアナログ管理であったり、在庫が多すぎて全てを把握しきれていない場合もあります。

このような材木の情報アクセスの煩雑さから、結果的に設計者が木を設計に取り入れるハードルは高くなってしまいます。

以上のように、川中に存在する材木等に関する様々な情報が、川下に届いていない課題について、森未来では、以下の2つの戦略でアプローチしてくことにしました。

※材木は節の量で決まる等級があります。JAS認証の材木は基準が統一されていますが、そうでない材木は地域やメーカーによって基準は異なる場合が多いです。
規格品であっても、価格単位が坪、立米など、統一されていません。

森未来の2つの戦略

全国の膨大な材木の情報をどのような形で川下に提供するか、森未来では2つの戦略でアプローチすることにしました。

戦略の1つ目が木材データベースの構築です。
前述したとおり、材木屋ごとの材の販売単価や等級の基準の相違、価格の問い合わせを電話で複数の製材所・材木屋に行わなければならないなど、
設計者が材木の情報収集にとられる業務量の多さが問題でした。

そこで、森未来は、全国の材木屋が取り扱う材のデータを集約し、販売単位や等級の統一します。さらには、木材情報をインターネットでもアクセスできるように公開します。
そうすることで、木を設計に利用したい設計者に素早く・分かりやすく情報を届けることが可能になります。

2つ目が設計者に対するマーケティングです。
いままで木を使ってこなかった設計者や、上記のような木材利用のデメリットを知る設計者は、
便利な木材データツールが誕生したとしても、材木を自身の設計の中に組み込むとは限りません。
そこで、設計者に対して、材木を今後の設計の選択肢の一つにしてもらうためのマーケティングが必要です。

木材と一言で言っても、柱材、フローリング材、一枚板、ウッドチップなど様々な種類があり、それぞれに複数の用途があります。
柱材やフローリング材は建築家、一枚板はテーブル作製のため家具屋が買うなど、材の種類によってマーケティングの対象が異なります。

浅野は市場分析を行い、
・インテリアデザイナーは自然系マテリアルに注目している
・2~3年で改装する商業施設は、市場がなくなることはなく、東京の商業施設の床面積は増えている。

という情報から、マーケティングのターゲットをディスプレイ業界に絞りました。

さらに、設計士やデザイナーにもヒアリングしました。

・価格が高そう
・材木は使いにくい、メンテナンスが大変そう
・見積もりを取るのに手間がかかる・大変そう
・木を使う発想がなかった

このような設計者ら声から、木材利用のネガティブイメージを払拭する、ユーザーが使いやすい木材プラットフォームの構築を始めました。

今後の展望

森未来では、今まで集約してきた全国の木材店にある材木データをもとに、建築家、工務店等、BtoBに特化した新しい木材プラットフォーム「eTREE」を構築中です。eTREEには、日本全国の木材事業者の製品情報、特徴、価格情報を掲載します。

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