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記事公開:2024.10.15

炭素固定量とは?炭素固定の概要から企業の取組についても解説!

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地球温暖化の取り組みとして注目されている「カーボンニュートラル」。温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡にして、全体としての排出をゼロにするというものです。実はその取組みの1つとして「炭素固定量」が注目されているのを知っているでしょうか。

本記事では、炭素固定を行うための方法や課題と背景、企業の取組みについて解説します。

炭素固定量とは「物質に固定された二酸化炭素の量のこと」

まず「炭素固定」とは、大気中の二酸化炭素が植物や海面、人工物などに固定されることです。固定した二酸化炭素の量のことを「炭素固定量」と言います。二酸化炭素が有機物に固定され続けることは、地球温暖化を食い止める1つの方法です。例えば、枯れた樹木を燃やした場合、固定されていた二酸化炭素が放出されてしまいます。しかし、木材を家具や住宅に利用すると、炭素が長期間固定され続けたままです。炭素固定や炭素固定量を増加させることは、地球環境保護に重要なポイントといえます。

炭素を固定する3つの方法

炭素を固定する代表的な方法として下記3つが挙げられます。

  • 植物や森林による炭素固定
  • 海による炭素固定|ブルーカーボンの役割
  • 人工的な炭素固定

植物や森林による炭素固定

植物は、光合成により大気中の二酸化炭素を吸収し、炭素を固定します。特にアマゾンの熱帯雨林は多くの二酸化炭素を貯蔵することから「地球の肺」ともいわれるほどです。しかし現在、森林破壊や土地利用の変化によって、全体的な機能が危機に瀕しています。そのため、持続可能な森林管理や積極的な植林活動が重要となっています。

海による炭素固定|ブルーカーボンの役割

海洋生態系、特に海洋藻場やマングローブ林などの沿岸部の植生は「ブルーカーボン」と呼ばれる炭素固定能力を持っています。単位面積当たりの炭素固定量は、地上の植物に匹敵するほどです。また、海中の植物プランクトンも光合成により炭素を固定し、海底に沈めます。沿岸生態系の保護は、植物同様気候変動を緩和する効果的な方法として重要視されています。

参考:藻場・干潟の二酸化炭素吸収・固定のしくみ|水産庁

人工的な炭素固定 

化学の発展により、人工的に炭素固定ができる技術が開発されました。人工的に炭素を固定する方法として、主に下記3つが挙げられます。

下記3つがあります。

  • 化学吸収法:化学反応を用いて二酸化炭素を化学液に吸収させる方法
  • 物理吸収法:高圧・低温下で二酸化炭素を物質にに吸収させる方法
  • 炭化:木や竹などの有機物を炭になるまで燃焼させて炭素を固定させる方法

これらの技術は気候変動対策の新たな選択肢として注目されています。

参考:【環境省】国内外の技術動向
参考:【日本下水道事業団】いまさら聞けない下水道講座

 炭素固定量の計算について

炭素固定量の計算方法は、素材によって異なります。今回は例として最も身近な木造住宅が固定している炭素固定量を計算します。

下記が計算式です。

炭素貯蔵量(CO2換算)t‐CO2= 木材の材積(㎥)× 密度(t/㎥)×炭素含有率 × 44/12

引用:建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドライン|林野庁

計算例

延床面積 240㎡で材木がスギの場合
 240㎡ × 0.331t/㎥ × 0.50 × 44/12
 = 145.6t‐CO2 
240㎡の木造住宅は薬145トンの二酸化炭素を固定していると推定できます。

炭素固定量の課題と背景 

炭素固定量を増加させるためには、現状下記2点のハードルがあると考えられています。

  • 森林や海洋生態系が急速に失われている
  • 人工的な炭素固定技術は多額の費用と膨大なエネルギーが必要となる

現在、世界の森林は減少を続けており、2000年から2010年までの平均すると毎年520万ヘクタールが減少中です。特に、南アメリカ、アフリカなどの熱帯の森林を中心に面積が減少し続けています。また炭素固定技術は、コストが掛かりすぎるため、1995年〜2018年までに計画された炭素固定に関する事業の内43%が、資金不足等を理由として中止か延期となっています。効果的に進めていくため、課題を克服した戦略の構築が重要です。

参考:世界の森林を守るために|環境省
参考:海の恵みってなんだろう?|環境省
参考:CCS(炭素回収貯留)ってなに?|認定特定非営利活動法人FoE Japan

炭素固定量を増加させるための企業の取り組み

実際に日本にも炭素固定量を増加させるための取り組みを行っている下記2つのような企業が存在します。

  • 経済林の伐採・再植林|住友林業株式会社
  • マングローブの植林|リコージャパン株式会社

経済林の伐採・再植林|住友林業株式会社

住友林業株式会社は、所有または管理する森林で長期的な伐採・再植林の計画を立てて大気中のCO2を増加させないようにしています。2023年度は、国内で約205haの伐採と164haの再植林、海外では約7,469haの伐採、7,326haの再植林を行いました。また、伐採した木も製材・加工を経て住宅や家具など様々な形で使われ炭素を固定したままとなっています。

参考:持続可能な森林経営|住友林業株式会社

マングローブの植林|リコージャパン株式会社

リコージャパン株式会社では、お客様が対象製品の購入やサービスの導入を行った際、実績に応じて、フィリピンとインドネシアでマングローブの植林を行っています。2020年4月からスタートした同取り組みは、2022年3月までに約22万本の植林を行いました。また、マングローブは陸と海の間にあるため、津波や高波の被害を軽減する機能も備えています。炭素の固定だけでなく地元住民の生活にも根付いている取り組みです。

参考:SDGsに貢献するマングローブ|リコージャパン株式会社

バイオ炭コンクリート|清水建設株式会社

清水建設株式会社は、バイオ炭が含まれている「バイオ炭コンクリート」を使用し、建築物の施工を行っています。バイオ炭コンクリートで使用する「バイオ炭」とは、木材を製材する際に出るオガ粉を炭化したものです。通常であれば、燃焼や微生物分解によってオガ粉に含まれる炭素はCO2として空気中に放出されますが、バイオ炭にすることで分解されづらい状態に変化します。バイオ炭コンクリートを使用することで、一般的なコンクリートでの施工よりも全体として炭素を抑える「カーボンネガティブ」を実現しています。

参考:コンクリート内部にCO2を固定してカーボンネガティブを実現する「バイオ炭コンクリート」|清水建設株式会社

まとめ

地球温暖化を食い止めるための方法として注目されている「炭素固定量」。炭素を固定させるための方法も自然由来のものだけでなく、最新技術によって人工的なものも開発されています。しかし、森林破壊やコストの問題など炭素固定量を増加させるためには、まだまだ解決しなければならない課題は山積みです。

カーボンニュートラルや炭素固定について正しい知識を持っておくことは、これからも地球に住む私達にとって必ず知っておかなければならないことです。また、炭素固定量を増加させる取り組みを行う企業も増えて来ています。個人での取り組みが難しい場合は、その企業が発展するように商品購入やサービスの導入などで応援するのも良いでしょう。炭素固定量を増加させ、地球温暖化を食い止めるために何ができるのか、一人ひとりが考え続けることが重要です。

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