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2024.5.14
「育林」という言葉が樹木を育てることや森林管理に関わる言葉であることは、多くの方が想像できることでしょう。
ですが、明確な定義となると分からない方もいるかもしれません。
そこで本記事では、
を解説します。また、合わせて育林に関する国や企業の取り組みも紹介します。
目次
育林とは、樹木の生育と管理に関わるすべての行動のことを指します。
言い換えれば、一定の土地に植栽された樹木についての生育と管理を行うことです。
「生育」と「管理」には次の内容が含まれます。
つまり、森林管理における一連の流れの中で、特に樹木の育成に関わる部分が「育林」と言えます。
一般的には育林と造林は、ほとんど同じ意味で使われています。
「育林」が樹木の生育・保護の面を強調するときに使うのに対し、造林は植栽から生育、管理まで全てを含めたもののことを指します。
植栽とは、木を伐採した後に、土壌を整えて改めて苗木を植えることです。
つまり、造林とは木を植え、植えた木を育てて管理すること全般を指している、と言い換えられます。
育林では人間にとって有益な種類の樹木を育て、さまざまな恩恵を得ています。
育林によって得られる恩恵は多岐にわたり、その代表的なものは次の通りです。
それぞれの内容を理解することで、育林の目的が明確になるでしょう。
ここでは、育林が持つ意義について解説します。
育林による最終的な目的は、木材生産であることがほとんどです。
質の良い木材生産のためには、森林の健全性を確保しながら植栽や生育、間伐などの森林整備をする必要があります。
育林の過程に含まれるのは、資源としての木材の価値を高める行動です。
節となる枝を取り除くための枝打ちや間伐など、木材資源を十分に活用するために重要な意義があると言えます。
健全な樹木が育ち、その結果、土壌保全や土壌の保水力回復に効果が出ることも育林の意義です。
育林によって樹木がしっかりと地面に根を張ることで、地滑りや崖崩れなどの土砂災害を防ぎ、土壌保全の役割を担います。
また、落ち葉や枝などの堆積物が栄養豊富な腐葉土となり、土壌の保水力を回復させる効果も期待できます。
育林によって保水力を回復した豊かな土壌は、降水時に雨水をたっぷりと含みます。
その後、土壌に含まれる水はゆっくりと濾過されていき、やがて水源となります。
育林で作られた健全な森林は、土壌に水資源を蓄え、はぐくみ、守りながら美味しい水を生み出す源になっているのです。
育林で作られた健全な森林は、多様な生物のすみかとなります。
森林に野生動物が生息しやすい理由は、主に次の通りです。
これらの要素は育林によってもたらされるものです。
育林によって森林を健全な状態を維持できれば、生態系の保全機能を保つことが可能となります。
世界中で二酸化炭素による温室効果ガスが増えることによる温暖化が問題になっています。
森林には、二酸化炭素を吸収する力があることから、地球温暖化を抑える効果も期待されています。
育林によって森林を作ることは、地球環境保全にも大きな意義があると言えるでしょう。
育林には多くの意義がある一方で、課題もあります。
育林業における、現在の課題は次の通りです。
ここでは、それぞれの課題について、もう少し詳しく解説します。
育林における一番の課題は、担い手不足です。
総務省の国勢調査によると、林業従事者は長期的に減少傾向にあるというデータが出ています。
さらに高齢化率は2020年の段階で25%と、他の産業と比較しても高く、若い世代の林業離れが顕著になっています。
若い世代の林業離れの要因の一つが、林業が危険を伴う重労働であることです。
林業に従事する、特に若い人材を増やすためには、最新の機材やIT機器を取り入れたスマート林業を取り入れる必要があります
安全で負担の少ない林業が、担い手不足解消のための鍵となるでしょう。
参考:林業労働力の動向|林野庁
樹木が成長するまでに時間がかかり、育林計画が立てにくいことも、育林の課題の一つです。
樹木の成長には数十年という歳月がかかります。
そのため、植栽してから木材として生産ができるようになるまでには、長期的な視野にたった育林計画が必要です。
一方で、社会情勢は数年の間に高い確率で変化します。
輸入木材の動向で価格が変動しやすいことに加え、社会情勢の変化で需給バランスが崩れやすいことから、安定した運営の計画が立てにくいことが、育林の大きな課題です。
育林に伴う森林整備にかかるコストを回収できるまでに時間がかかることも、課題の1つです。
生育・間伐・路網整備などの森林整備には、継続的に費用が発生します。
一方で、成長した木材を販売して、コストを回収するまでには、30~50年かかります。
育林期間全体で考えれば、コストを回収できるのは後半の一時期のみです。
木材販売時の需給状況によっては、かかった整備費用を回収するのが困難になる可能性もあります。
育林における課題を解決するために、国が主導で行っている取り組みがあります。
ここでは、課題解決の糸口になる可能性がある「分収育林」の取り組みについて解説します。
昭和59年(1984年)に、林野庁主導のもとに「分収育林(緑のオーナー)制度」が始まりました。
緑のオーナー制度は、生育途中の若い森林において、1口25万円か50万円を負担するオーナーを募り、国とオーナーで立木を共有する制度です。
契約満了時に立木を伐採、販売して利益を口数に応じて分ける仕組みでした。
ところが、昭和59年に始まったこの制度が満了時を迎えるころには、国産木材の価格が1980年代の1/5まで下落。
そのため、対象地の9割で元本割れという結果を残し、1999年に公募を中止しています。
現在国有林は、環境保全を重視した管理に方針転換しているため、同じ仕組みでの取り組みは難しいと考えられます。
オーナーを募り、国民参加による森林づくりの仕組みを復活させるには「林業への投資は儲からない」というイメージを払拭できるかどうかがポイントになるでしょう。
参考:分収育林制度及び分収時の具体的な手続等について|林野庁
「法人の森林」制度は、企業と国と共に、国有林における育林・造林の管理費用を負担し、伐採後の収益を一定の割合で分け合うという分収林制度です。
法人の森林制度で管理する森林の種類は2つあります。
企業にとっては、伐採後の収益を一定の割合で分け合うことよりも、環境保全活動に積極的であるという企業イメージをアピールできることの方が大きなメリットとなるでしょう。
国が育林に関する取り組みを模索する一方で、多くの事業体が、独自に育林に関する取り組みを始めています。
ここからは、持続可能な育林を目指す事業体の取り組みについて紹介します。
育林材プロジェクトは大手飲料メーカー「サントリー」による取り組みです。
サントリーでは、循環型の里山管理を取り戻すために「森林整備」に取り組み中。
その中で、サントリーが管理する「天然水の森」での育林活動を通じて伐採した木を「育林材」と名付けて有効活用しています。
例えば、東京農業大学の研究棟では、天然水の森から搬出されたスギ材をふんだんに活用し、エントランスの化粧材や大階段の床材として活用されています。
その他、都内のカフェではテーブルの天板として、また、寄せ木細工の材料としてなど、幅広い用途で使われる木材です。
大分県で伐採後の再造林率100%を達成し続けるのは、佐伯広域森林組合です。
自ら伐採を手がけた土地すべてを再造林していることに特徴があります。
造林後、5年間の育林作業も請け負っています。
さらに佐伯広域森林組合では、佐伯市をはじめ建築業、流通業に関わる企業と「再造林型木材取引協定」を締結しました。
費用から換算した木材価格と年間取引量を定め、再造林に関わる費用や負担を透明化。
責任範囲に応じた費用を取引関係者で相互負担する仕組み作りをすることで、再造林を促進しています。
参考:<再造林率100%>佐伯広域森林組合が実現できるその鍵とは
株式会社GREEN FORESTERSでは、造林と育林に特化した事業を展開しています。
伐採後の造林・育林は全国的な林業の担い手不足により、思うように進んでいないのが現状です。
株式会社GREEN FORESTERSは、森林面積が減少していく中、あえて難しい植林・育林に専門特化し、全国で事業を展開しています。
近年、森林管理のコンサルティング業務や買取りサービスも手がけ、伐採後に再造林されず、放置された山や森林を回復させるような取り組みを続けています。
株式会社GREEN FORESTERSの特徴は、勤務形態や現場での裁量、給与体系などを見直すことで、働き手が「働きがい」をもって取り組める仕組み作りをしていることです。
担い手不足解消のための新しい取り組みと言えるでしょう。
参考:未来の森を今つくる|株式会社GREEN FORESTERS
育林とは、植栽された樹木の生育と管理に関するすべての作業のことをさします。
育林は木材生産という点だけでなく、その土地の土壌や保水力、水源などの保全、そして地球環境保全に対しても意義のあることです。
一方で、担い手不足や管理費用負担の問題、そして育林サイクルが長いことで予測が立てにくいといった課題があります。
ただし、課題の解決に向け、国や地方行政、企業がそれぞれの取り組みを始めています。
安全で負担の少ない作業を実現するためのスマート林業の導入や、分収育林などコスト負担を分散する仕組み作りが育林を促進させるポイントとなるでしょう。
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