関東の木材市場とは?原木・製品市場をそれぞれ紹介!地域を代表するブランド材の情報も

eTREE編集室

人口が集中する関東一円には、複数の木材市場が存在します。丸太や製材品の取引が行われ、木材流通には欠かせない市場ですが、一般消費者にはそれほど馴染みがないかもしれません。
この記事では、関東地方の林産地やブランド材に加えて、それらを取り扱う地域内の原木市場・製品市場を紹介します。地元で木材を調達したい人、関東一円で木材市場がどこにあるか知りたい人は、ぜひ参考にしてください。

関東の主な地域材・ブランド材

最初に、関東地方で有名な下記の地域材やブランド材を紹介します。
なお、関東とは、栃木県・群馬県・茨城県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県​​の1都6県とします。

  • 八溝杉(栃木・茨城)
  • 日光杉(栃木)
  • 西川材(埼玉)
  • サンブスギ(千葉)
  • 多摩産材(東京)

八溝杉(栃木・茨城)

八溝杉(ヤミゾスギ)は、栃木県・茨城県・福島県に渡る八溝山系で育ち、伐採された国産杉のことです。
この地域の造林の歴史は、江戸時代にまで遡ります。

積雪・風水害・虫害が少ない恵まれた環境で育つ八溝杉は、目が詰まって強度性能が高く、木目も美しい上に価格も手頃な、関東を代表する良材です。
特に、赤身の色の美しさゆえに、内装材としても人気があります。

参考:茨城木材相互市場|茨城県を代表する木材ブランド”八溝材”​​

日光杉(栃木)

国内でも有数の林産地である栃木県は、先述の八溝杉のほかに、日光杉も産出しています。
日光杉とは、栃木県は日光・鹿沼地方の林業地で伐採される杉材です。
素性や目合いに優れていて、八溝杉と並ぶ良材として首都圏では最も人気のある製品の一つとされています。

なお、日光は、日光東照宮に続く街道に整備された日光杉並木も有名です。この杉並木は、国の特別史跡および特別天然記念物の指定を受けており、木材として市場に出回ることはほぼありません。

参考:いやし健康増進住宅研究会|日光杉の魅力

西川材(埼玉)

埼玉県の南西部に位置し、東は武蔵野平野に接する「西川林業地」の材を「西川材」といい、地域ブランド材として商標登録​​もされています。
江戸時代、この地域の木材を筏で江戸(東京)まで流送していた歴史があり、「江戸の西からくる木材」というのが、名前の由来だそうです。

地質・気候ともにスギ・ヒノキの生育に適していることに加え、丁寧な育林作業を積み重ねてきた結果、優れた色艶・緻密な年輪・節の少なさを兼ね備えた優良材として認められています。

参考:飯野市|西川材とは

サンブスギ(千葉)

房総半島中部の東側に位置する山武林業地において、古くから、挿し木造林の技術とともに、クローンの挿し木スギが継承されてきました。

このスギを「サンブスギ」とカタカナで表します。
山武地方の杉林のうち87%を占めるのが、サンブスギです。

サンブスギは、まっすぐで先細りが少なく、断面は正円に近い形状で成長します。また、杉の中では硬く、油を多く含むため艶がよく、赤身の強い色味が美しい材です。

雄花をほとんどつけないことから、「花粉の少ないスギ優良品種」の一つに選出されています。

参考:千葉県 農林総合研究センター|サンブスギ

多摩産材(東京)

都会だと思われがちな東京ですが、都の面積の実に4分の3は森林が占めています。そして、森林の7割が偏在するのが、東京西部の多摩地域です。

多摩地域で昭和30年代に植林されたスギ・ヒノキは、現在本格的な利用期に入っており、都は利用を拡大しようとしています。
「多摩産材」は、産地認証制度によって産地が証明された木材で「多摩産材情報センター​​」が窓口となって調達方法や製品情報などの情報提供を行っています。

参考:東京産業労働局|東京の木多摩産材​​

関東の主な原木市場

木材の取引を行う木材市場には、原木市場と木材製品市場の2種類が存在し、それぞれ役割が異なります。
原木市場は丸太のセリ売りを行う市場、木材製品市場は丸太から作った製材・建材などの製品をセリ売りする市場です。

どちらも登録した「買い方」しか入場が認められないのが通常で、一般の人が買い付けを行うことはほぼできません。

まずは、関東にどんな原木市場があるのかみていきましょう。

多摩木材センター(東京)

西多摩郡日の出町にある「多摩木材センター」は、東京唯一の原木センターです。

東京都が利用拡大を図る多摩産材は、多摩地域の森林で伐出された後、多摩木材センターで市売りされ、製材所を経て工務店や材木店に渡り、住宅などに利用されているのです。

毎月、10日と25日に市が開かれており、市売りの結果もHPで公表されています。

参考:多摩産材情報センター|多摩木材センター市売り情報​​

吾野原木センター(埼玉)

埼玉県飯能市にある「吾野(あがの)原木センター」は、地元の西川材を中心に、関東全域や東北・関西地方の材も取り扱う原木市場です。

スギ・ヒノキを中心にサワラなども取引する針葉樹市を、毎月5日と20日に、 ケヤキを中心にカシ・クリなども扱う広葉樹の銘木市を、毎月23日に開催しています。

参考:吾野原木センター

鹿沼原木市場(栃木)

「鹿沼原木市場」は、栃木県鹿沼市に位置する原木市場です。
取り扱いは、スギ・ヒノキが大部分を占めていますが、ケヤキ・モミ・サワラなどの出品も可能です。

通常の市のほかに、年数回開催される特別市には、遠方からも買い手が訪れて賑わいます。

ホームページでは、入荷した原木の写真や、市日のカレンダーが公開されています。

参考:鹿沼原木市場

関東の主な木材製品市場

原木市場に続いて、製材や建材を取引する木材製品市場を紹介します。

東京木材相互市場(関東一円)

昭和27年創立の東京木材相互市場は、セリ売り形式の「市場」と当用買い向けの「センター」を有しています。

市場・センターは、埼玉県鴻巣市の「相互吹上市場」、茨城県つくば市の「相互筑波市場」、および千葉県柏市​​の「相互柏センター​​」、栃木県小山市​​の「相互小山センター」の4県に広がっています。

関東一円をカバーする流通網とサービス、ネットワークが、東京木材相互市場の特徴といえるでしょう。

そのほか、ケヤキの原木が大量に集まる「相互筑波銘木市場」も運営しています。
産直のケヤキは、質・量ともに高い評価を受けており、アクセスの良さも相まって、国内はもとより海外からも買い手が集まる市場です。

参考:株式会社東京木材相互市場

𠮷貞(関東一円)

140年以上木材流通を手がけてきた歴史がある「𠮷貞」は、関東一円の5市町村に営業拠点を持っており、主要な消費地の需要に機敏に対応できる体制を築いています。

埼玉県戸田市・熊谷市、栃木県佐野市​​、群馬県高崎市に位置するそれぞれの木材市場において、国内および世界各地の木材がセリ売りされるのは、月1回の市日です。

𠮷貞は、木材市場に加えて、問屋機能を持ち、プレカット加工も手がけることで、木材の一貫供給​​を可能にしています。

参考:𠮷貞

千葉県木材市場協同組合(千葉)

昭和36年、千葉市祐光町に開設された千葉県木材市場協同組合の木材市場は、その後幕張への移設を経て、現在は千葉県東金市で営業しています。

環境や自然に優しい永続可能な循環型の木材流通を目指しており、市場と同じ敷地内に、一般消費者向け窓口として住宅建築の支援センター「モクイチ」を併設。

サンブスギをはじめとした地域材の住宅への使用を推進しています。

参考:千葉県木材市場協同組合

東京新宿木材市場(埼玉)

昭和26年に渋谷区代々木に解説された複式市場が、東京新宿木材市場の始まりです。​​

現在の運営する「鶴ヶ島売場」は、埼玉県鶴ヶ島市​​に位置する、市売市場と木材センター併営の木材市場です。そのほかに、埼玉県新座市と東京都府中市に木材センターを有しています。

市売市場は、指定の日にセリ売りによって木材を提供するのに対し、木材センターは、小売業者と問屋が相対で売買する点が異なります。

参考:東京新宿木材市場株式会社​​

茨城木材相互市場(茨城)

茨城木材相互市場は、昭和30年、水戸市において木材市場として設立されました。現在も水戸市で市を開催しているほか、茨城県内に3つの営業所を持ちます。

茨城県産材の積極的な活用を促進しており、八溝杉を含む茨城県内や栃木県、福島県にある製材メーカーの製品を、月1回のセリ売りで提供しています。

参考:株式会社茨城木材相互市場

東京木材市場(東京)

江戸時代より木場は、多くの木材業者が集まる「木材の町」として栄えてきました。その木場で、大正8年、入札専業の取引機関としてスタートしたのが東京木材市場です。

その後移転し、現在は新木場に木材市場、埼玉県越谷市​​に木材センターを開設しています。

国産材から外国産材まで、取り扱う商品の品質には信頼があり、参加問屋はHP上でも公開されています。

参考:東京木材市場株式会社​​

安い木材も手に入る関東のホームセンター

ここまでに紹介した木材市場は、通常、登録を済ませた買い方のみが入場できる仕組みで、一般消費者の立ち入りは制限されています。

一般消費者が木材を購入するのに便利なのは、ホームセンターです。

関東地方には、全国展開しているビバホーム・カインズや、関東中心の島忠ホームズなどの店舗があります。

そのほか、茨城・千葉中心のジョイフル本田、茨城密着の山新、栃木メイン​​のカンセキ、群馬​​ローカルのセキチュー、千葉・神奈川メインの​​ユニディなど、地域密着型のホームセンターも存在します。

ほとんどのホームセンターには、手頃な価格の規格材が揃っているので、近くの店舗をチェックしてみてください。

まとめ

森林資源が豊富な日本において、関東地方も例に漏れず複数のブランド材が存在し、それらを取り扱う原木市場や製品市場も、域内で開催されています。

登録を済ませた買い手だけが入場できる木材市場は、一般の人には遠い存在かもしれませんが、木材流通を支える大切な機構です。

一般の人が木材を調達するには、ホームセンターが身近な存在となるでしょう。リーズナブルな商品も探しやすいので、ぜひ店舗を訪れてみてください。

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