商品紹介
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2024.4.2
◾️導入
近畿地方は、古来から続く国内有数の林産地やそこから産出されるブランド材を複数有する地域です。
本記事では、近畿地方において、全国的に評価される高級材や、各府県が利用拡大を推進する地域産材、特徴のある林業地域などを紹介します。
近畿産の木材を具体的に知りたい人、産地を限定した木材を使いたい人に役立つ情報です。
目次
歴史ある林業地帯を有する近畿地方には、全国的に名の知れた以下のブランド材が存在します。
時代を超えて重宝されるものが多い、近畿地方ならではの有名な木材をみていきましょう。
奈良県中南部の川上村、東吉野村、黒滝村を中心とする吉野林業地帯で産出されるのが、吉野杉(よしのすぎ)と吉野桧(よしのひのき)です。
これら吉野材は、年輪の幅が狭く均一で、幹は真っ直ぐで上部と下部で太さのさが少なく、節はほとんど見られず、色ツヤに優れています。
吉野杉は美しい淡紅色の木肌と爽やかな香りを持っています。
また、吉野桧は光沢に富み、上品で清々しい香りを放ちます。
これらの特徴を生み出すのは、「密植・多間伐・長伐期」という吉野特有の林業です。
三重県南部の尾鷲(おわせ)市と紀北町にまたがる尾鷲林業地域で育つのが「尾鷲ヒノキ」です。
この地域は、急峻な地形と日本有数の多雨のため土地が痩せており、樹木の成長に時間がかかります。
ただ、ゆっくりとした成長のおかげで年輪が細やかで美しく、油分が豊富で光沢があり、硬く強度が高いという尾鷲ヒノキの優れた性質を実現するのです。
関東大震災で尾鷲ヒノキの柱をもつ家屋は倒壊が少なかったことから、その品質の高さが知られるようになったともいわれています。
京都市北西部、北区中川を中心とした地域で産出される杉を「北山杉」と呼び、その歴史は室町時代まで遡ります。
北山杉は、茶の湯文化や数寄屋建築の発展とともに生産されてきた、北山丸太の材料として有名です。
独特の光沢や模様が特徴である北山丸太は、数寄屋建築や床の間の床柱などに使われ、その意匠性が重宝されてきました。
北山丸太を使用した代表的な建物には、桂離宮や修学院離宮、金閣寺などの歴史的な建造物があります。
「紀州杉」と「紀州桧」は、和歌山県を中心とする旧紀州藩領の紀伊半島南部と、熊野川流域の奈良県南部から出材される国産材です。
紀州産の杉・桧は、色ツヤがよい、木目が整っている、狂いが少ない、強度・耐久性に優れてるといった特徴があります。
特に強度の高さについては、和歌山県林業試験場で測定された「ヤング係数」をはじめとする強度値にも裏付けされています。
ヤング係数とは、材料の変形しやすさを表した値です。
平地が少なく大部分を山地が占める兵庫県の中西部の宍粟()市で育つ杉は「宍粟杉(しそうすぎ)」と呼ばれています。
高級ブランド産地のように、節の少ない大径木が大量揃うわけではありませんが、豊富な森林資源を生かした木材、木工製品、家具などの生産が地場産業として古くから発展してきました。
有名なブランド材ではなくても、全国の他の自治体と同様に、近畿地方の各府県はそれぞれの地域産材を誇ります。
産地を限定した木材を調達したい場合は、木材の産地認証制度をチェックするといいでしょう。
大阪府は、木材の地産地消や持続的な森林経営を営んでいると認められた「林業活動促進地区」内で、合法的に伐採・生産された木材を「おおさか材」として認証しています。
中でも、差別化を図るため、呼び名に産地名を付けてブランド化しているのが、河内長野(かわちながの)市や千早赤阪村を中心とした河内林業地の木材「おおさか河内材」と、和泉市産の木材「いずもく」です。
「おおさか材」を証明するのは登録された認定事業者で、その一覧が府のHPで公開されています。
京都府には、府内産であることがわかる「京都の木証明材」と、産地に加えて木材輸送時のCO2削減量がわかる「ウッドマイレージCO2認証材」と、2種類の認証材があります。
府に加えて京都市も木材認証制度を実施しており、市内の森林で合法的に伐採・生産された原木を原料とした製材品や加工品を「みやこ杣木(そまぎ)」として認証しています。
これらの認証木材は、京都府産木材利用推進協議会が運営するサイトで、取扱事業者や在庫をもつ事業者を検索可能です。
参考:みやこ杣木(そまぎ)とは|京都市域産材供給協会
兵庫県は、原料とする丸太の産地と製品加工地がともに県内であるものを、「兵庫県産木材」としています。
兵庫県産木材は、県産材の円滑な供給を担う「兵庫県木連県産木材供給部会」の会員から、購入可能です。
もう一つの認証材「ひょうご県産認証木材製品」は、県産木材の中でもJAS 規格に適合した特定の建築用製材品のことで、兵庫県のJAS認定工場で購入できます。
参考:兵庫県産木材|兵庫県木材業協同組合連合会 兵庫県木連県産木材供給部会
奈良県は、県産材証明制度によって県内で伐採・生産された原木や製材品を証明しており、取扱事業者の一覧が公開されています。
地域認証材は、県産材の中でも含水率や強度性能の品質基準を満たす製材品で、認証センター登録の製造業者などから購入できます。詳細は、奈良県地域材認証センターに問い合わせてみましょう。
和歌山県では、県内の森林で産出された木材を県内で製材加工した場合、紀州材としています。
県が発注する公共事業や住宅支援などの補助事業では、紀州材証明登録者が発行する紀州材証明書が必要です。県のHPに、紀州材証明者登録一覧表が掲載されています。
紀州材証明者一覧
滋賀県は、県内の森林から合法的に伐採された原木を原料とし、県内で加工した製材品などを「びわ湖材」として証明しています。
「びわ湖材」を表示・分別管理し、「びわ湖材証明書」を発行できる認定事業体は、以下のサイトで確認可能です。
県は、公共性の高い建築物における木製品購入や建物整備、住宅の新築・リフォームにびわ湖材を採用する場合に補助金を交付し、県産材の利用拡大に取り組んでいます。
参考:びわ湖材利用促進事業|滋賀県
三重県では、県内の森林で育ち、合法的に伐採された原木を原料とし、寸法や含水率など定められた品質基準を満たした製品を「三重の木」として認証しています。
「三重の木」を製材する工場や、積極的に利用する建築業者・建築事務所・地域ネットワークは認証事業者として登録されており、HP上で検索できます。
参考: 「三重の木」認証制度|三重県
近畿地方は全国的に知られたブランド材を有します。
ブランド木材を生産するのが、下記3つのような特徴的な施業を行う歴史ある林産地です。
伝統的な林業地域を紹介します。
奈良県は吉野川上流域にある川上村・東吉野村・黒滝村を中心とした吉野林業地域は、密植・多間伐・長伐期が特徴です。
一般の2倍以上の密度で苗木を植えて幹の肥大を抑え、成長に伴って弱度の間伐を何度も繰り返し、優良木のみを丁寧に育てます。
結果、年輪が緻密で真っ直ぐな材となります。
また、100年以上と長期の伐期は多数の大径木を育み、吉野林業地域が全国でも有数の林産地とされる理由です。
独自の管理システム「山守制度」も吉野林業の特徴です。
山守は山主に代わって木を育て、山主は山守に報酬を払います。代々培われた両者の信頼関係が、吉野の良質な木材を生み出すのです。
三重県南部、熊野灘に面した尾鷲市と紀北町にまたがる尾鷲(おわせ)林業地域は、地形が急峻で耕作に向かないため、古くから林業が栄えてきた桧の一大産地です。
海上交通の利便性を活かし、古くから京都・大阪・江戸との取引が行われてきました。
尾鷲林業地域では、非常に急な山地斜面と痩せた土壌という、木の成長を遅くする不利な環境要因が、かえって材質面にいい影響を及ぼしています。
年輪が緻密で強度や耐久性に優れた尾鷲ヒノキの材質は、ゆっくりと成長することで育まれるのです。
自然条件に加えて、苗木を密植して間伐を繰り返す特徴的な施業もまた、優れた材質を生み出す源です。
三重県南部、熊野灘に面した尾鷲市と紀北町にまたがる尾鷲(おわせ)林業地域は、地形が急峻で耕作に向かないため、古くから林業が栄えてきた桧の一大産地です。
海上交通の利便性を活かし、古くから京都・大阪・江戸との取引が行われてきました。
尾鷲林業地域では、非常に急な山地斜面と痩せた土壌という、木の成長を遅くする不利な環境要因が、かえって材質面にいい影響を及ぼしています。
年輪が緻密で強度や耐久性に優れた尾鷲ヒノキの材質は、ゆっくりと成長することで育まれるのです。
自然条件に加えて、苗木を密植して間伐を繰り返す特徴的な施業もまた、優れた材質を生み出す源です。
参考:北山林業(北山杉,北山丸太)について|京都市情報館
近畿地方は、全国に知られたブランド材を複数かかえており、それらを生み出す歴史ある林業地帯も独自の技術や管理体系、文化を発展させています。
それらの高級材とは別に、日常的に広く使われる地域産材も自治体それぞれが認証制度や補助事業を設けて、利用拡大に努めています。
産地を限定した木材を使いたいなら、各認証期間や自治体の担当窓口に問い合わせてみましょう。
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