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記事公開:2024.12.13

低炭素建築とは?|認定制度の基準やメリット、デメリットを解説

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近年、地球温暖化への問題意識が高まる中、さまざまな分野で二酸化炭素(CO2)排出量削減に向けた対策が進められてきました。まちづくりにおいても、環境にやさしい建築物として「低炭素建築」が注目されています。
 低炭素建築は、CO2排出量の抑制に貢献するだけでなく、認定を受けることで、税制優遇などのさまざまなメリットがあります。
 本記事では、低炭素建築物の認定基準のほか、メリット、デメリットを解説します。

低炭素建築とは「二酸化炭素の排出抑制に貢献する建築物」

「低炭素建築」とは、生活や活動に伴って発生する二酸化炭素を抑制するため、低炭素化に貢献する措置が講じられた建築物のことです。低炭素建築物は、『都市の低炭素化の促進に関する法律(エコまち法)』によって定められます。

 本法律に基づいて「低炭素建築物認定制度」が創設され、所管行政庁(都道府県、市または区)が低炭素建築物の認定を行っています。

参考:『エコまち法に基づく低炭素建築物の認定制度の概要』|国土交通省

エコまち法と低炭素建築物認定制度

「エコまち法」は、都市機能の集約や、建築物の低炭素化などに取り組むことで、地域での成功事例を蓄積し、その普及を図ることを目的として、2012年12月に施行されました。
ここでは、エコまち法と低炭素建築物認定制度について、3つのポイントから解説します。

  • エコまち法制定の背景と概要
  • 低炭素建築物認定の対象
  • 直近の認定実績

エコまち法制定の背景と概要

エコまち法は、政府が2050年カーボンニュートラルを目指す宣言をしたことなどを背景に、低炭素建築物認定基準をより高い水準に引き上げるため、2022年10月に改正されました。

人口が集中する都市部は、建築物や自動車などに由来して、多くの二酸化炭素が排出される地域です。そのため、都市における低炭素化に向けた取り組みが急務となっています。
このような背景から、エコまち法は以下の2つの基本方針が定められています。

  • 低炭素建築物の認定(所管行政庁)
  • 低炭素まちづくり計画の策定(市町村)

参考:『エコまち法に基づく低炭素建築物の認定制度の概要』|国土交通省

低炭素建築物認定の対象

低炭素化建築物の認定の対象となるのは、市街化区域内等で、以下の4つのうちいずれかに該当する建築物です。

  1. 建築物の低炭素化に資する建築物の新築
  2. 低炭素化のための建築物の増築、改築、修繕若しくは模様替え
  3. 低炭素化のための建築物への空気調和設備、その他の政令で定める建築設備の設置
  4. 建築物に設けた空気調和設備等の改修

直近の認定実績

国土交通省の直近の発表によると、低炭素建築物の2022年度の認定総数は20,676件でした。内訳としては、「一戸建ての住宅」が12,943件と全体の約60%を占めます。

低炭素建築物の認定件数一戸建ての住宅共同住宅等の住宅又は住棟複合建築物非住宅建築物総件数
2022年度実績12,943件7,669件70件3件20,676件

制度運用が開始された2012年12月からの認定累計総数は95,020件となり、認定件数は年々増加傾向にあります。

参考:低炭素建築物新築等計画の認定実績(令和5年3月末時点)|国土交通省

低炭素建築物の認定基準

低炭素建築物の認定を受けるためには、次の3つの基準を全て満たす必要があります。

  1. 省エネ基準を超える省エネ性能を持つこと。かつ低炭素化に資する措置を講じていること
  2. 都市の低炭素化の促進に関する基本的な方針に照らし合わせて適切であること
  3. 資金計画が適切なものであること

1の基準を掘り下げると、さらに次の2つの認定基準に分けられます。具体的な内容について見ていきましょう。

  • ZEH・ZER水準の省エネ性能
  • その他講ずべき措置

参考:『エコまち法に基づく低炭素建築物の認定制度の概要』|国土交通省 

ZEH・ZEB水準の省エネ性能(必須項目)

 省エネルギー性能は、「外皮性能」および「一次エネルギー消費性能」を住宅、非住宅ごとに定められた誘導基準に適合させる必要があります。低炭素建築物の認定を受けるためには、この2つの基準を満たすことが必須です。

 外皮とは、建物の内部と外部の境界面のことで、屋根や外壁、床、天井、窓などを指します。外皮は熱の影響を受けやすく、外皮性能とは、こういった外皮の断熱性能のことです。

 一次エネルギー消費量とは、建築物で使われている設備機器の消費エネルギーを熱量に換算した値のことです。認定の基準となる一次エネルギー消費性能としては、住宅では省エネ基準から20%削減、非住宅では省エネ基準から用途に応じて30〜40%削減することが求められます。

参考:『エコまち法に基づく低炭素建築物の認定制度の概要』|国土交通省

参考:建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度|国土交通省

その他講ずべき措置

 省エネ性能以外に認定を受けるために必要な基準は、その他講ずべき措置として、必須項目と選択項目の2つに分けられます。それぞれの項目の詳細について見ていきましょう。

  • 必須項目|再生可能エネルギー利用設備の導入
  • 選択項目|低炭素化に資する措置

必須項目|再生可能エネルギー利用設備の導入

 必須項目としては、再生可能エネルギー利用設備の導入が求められます。太陽光発電設備や太陽熱・地中熱を利用する設備のほか、風力・水力・バイオマス等を利用する発電設備などから、いずれかの設備が必要です。
 また、戸建て住宅の場合は、省エネ量と再エネ利用設備で得られるエネルギー量の合計が、基準一次エネルギー消費量の50%以上であることが求められます。

選択項目|低炭素化に資する措置

 選択項目では、低炭素化に資する措置として、つぎのいずれかの措置を講じる必要があります。

  • 節水対策・・・節水に資する機器の設置など
  • エネルギーマネジメント・・・HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)またはBEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)の設置など
  • ヒートアイランド対策・・・一定のヒートアイランド対策の措置
  • 建築物(躯体)の低炭素化・・・住宅の劣化軽減に向けた措置の実施など
  • V2H充放電設備の設置・・・建築物から電気自動車等に電気を供給する設備の設置など

参考:『エコまち法に基づく低炭素建築物の認定制度の概要』|国土交通省

低炭素建築物のメリット

 低炭素建築物は環境にやさしいだけでなく、認定を受けることでさまざまなメリットがあります。ここでは、次の3つのメリットを紹介します。

  • 住宅ローン控除を利用できる
  • 登録免許税の優遇措置の対象となる
  • 容積率が緩和される

住宅ローン控除を利用できる

 低炭素住宅の認定を受けると、「住宅ローン控除」の対象となります。2025年12月末までに居住を開始した人を対象に、新築または買取再販の住宅の場合、借入限度額が4,500万円まで認められます。(既存住宅の場合、借入限度額は3,000万円)控除期間は13年で、最大控除額は409.5万円です。

 また、低炭素住宅は「フラット35S」の金利Aプランに該当するため、当初10年間は通常よりも借入金利が引き下げられます。

登録免許税の優遇措置の対象となる

 土地や建物を購入、建築した際に、所有権保存登記や移転登記などの手続きを取る必要があります。登録免許税とは、不動産の登記にかかる税金のことです。
 新築で低炭素住宅の認定を受けた場合、登録免許税の税率が一般住宅特例よりも引き下げられます。

一般住宅特例認定低炭素住宅
所有権保存登記0.15%0.1%
所有権移転登記0.3%0.1%

容積率が緩和される

 容積率とは、建物の敷地面積に対する延べ床面積の割合のことです。
 蓄電池や蓄熱槽の設置など、低炭素建築物の認定基準に適合させるための措置によって、通常の建築物の床面積を超える場合、容積率の算定から除外できるという特例があります。低炭素建築物の延べ面積20分の1を限度として利用できます。

低炭素建築物のデメリット

 低炭素建築物の認定にはさまざまなメリットがある反面、いくつかのデメリットもあります。ここでは次の2つのデメリットを紹介します。

  • 建築コストが高くなる
  • 建築可能なエリアが限定される

建築コストが高くなる

 低炭素建築物は認定基準を満たすため、太陽光発電設備などの省エネ設備を導入する必要があり、一般住宅よりも建築コストが高くなります。
 一方で、認定により住宅ローン控除や税制優遇、補助金の支給を受けることができる場合もあるため、あらかじめ長期的な視点でコストを試算しておくことがおすすめです。

建築可能なエリアが限定される

 低炭素建築物は原則的に、市街化区域等内でのみ建築可能です。定められた区域外での認定申請はできないため、認定を念頭においている場合は、土地購入の前に事前に市街化区域内であるかを確認する必要があります。
 エコまち法の目的は、都市における低炭素化です。建築物の新築によって都市の拡散を招く場合、都市全体での低炭素化につながらない懸念があるため、申請対象の区域が限定されています。

低炭素建築物の認定の手続き

低炭素建築物の認定手続きは、以下のフローで進みます。

  1. 審査機関に事前の技術的審査を依頼
  2. 審査機関より適合証の発行
  3. 所管行政庁に適合証を添付した認定申請書を提出
  4. 所管行政庁より認定証の交付

認定申請は、着工前に所管行政庁で行う必要があります。申請に必要となる書類や手数料は、事前に所管行政庁や審査機関に確認しましょう。

参考:『エコまち法に基づく低炭素建築物の認定制度の概要』|国土交通省

まとめ

 低炭素建築物は、都市の低炭素化だけでなく、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた重要な取り組みの一つです。環境にやさしいことはもちろん、税制優遇など制度上でのさまざまなメリットもあり、認定件数も年々増加傾向にあります。
 一方で、導入コストの増加や建築可能なエリアが限定的であるといったデメリットもあるため、認定申請の際は十分に留意しながら、検討する必要があるでしょう。

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