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記事公開:2024.10.22

森林組合の仕事とは? | 森林所有者を支えて地域の森を守る

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日本の森林を守り、育て、活用するために大きな役割を担っているのが森林組合です。森林所有者にとっては管理や活用の相談に乗ってもらえる心強い味方であり、林業を志す人にとっては就職先の候補として頭に浮かぶ組織でしょう。

今回は、森林組合とはどのような組織であるかを解説します。合わせて森林組合で働きたい方にとってどのような魅力があるのかも解説します。

森林組合とは

森林組合は、森林組合法によって設立された協同組合です。協同組合に加入している森林所有者を森林組合員といい、この組合員の集まりによって森林組合が成り立っています。組合員の経済的社会的地位の向上を図ることを目的に作られました。主な仕事は「組合員が所有する森林(民有林)を整備すること」です。森林の機能を十分に発揮するため、また森林資源の循環利用をするために森林の適切な手入れを行っています。地域の林業のリーダー的存在として、高い技術を持ったスタッフが組合員の要望に応えています。

参考:全国森林組合連合会 | 森林組合とは
参考:『山で働く人の本 見る・読む・林業の仕事』,全国林業改良普及協会,2005,P.76

林業会社との違い

森林組合と林業会社は、どちらも市民からの依頼を受けて森林を整備したり、木材を加工・販売したりします。そのため、それぞれの違いがわからない方もいるかもしれません。2つの組織で異なる面は下記の通りです。

  • 森林組合の方が仕事の幅が広い
  • 林業会社の方が会社ごとの特色が出やすい

仕事の幅

森林組合は、森林に関する全般的な活動を行っている協同組織です。営利目的の組織ではありません。地域の林業者や森林所有者が加入しているため、林業会社よりも仕事の幅が広いことが多いです。木材の生産や加工だけでなく、森林保護のための啓発活動や、技術や知識向上のための研修、林業の助成金の交付なども担います。

会社による特色

森林に関するビジネスを行う企業です。木材の生産や加工、販売などを通して収益を出しています。会社によって特色があります。例えば、千葉県鴨川市の株式会社こだまは、特殊伐採に力を入れている会社です。和歌山県田辺市の株式会社中川では「木を切らない」をテーマに、育林や教育、コンサルティング事業を中心に活動しています。森林組合と比べると、経営者の想いや強みが反映されています。

参考:株式会社こだま公式ホームページ
参考:株式会社中川公式ホームページ

森林組合の仕事内容

森林組合の仕事内容は多岐に渡り、現場作業だけでなく、事務作業も行っているのです。森林組合内の、森林整備部門、販売部門、指導部門に分けて解説します。

森林整備部門

森林整備部門は、文字通り森林を整備する業務です。「林業」の言葉から連想されるような仕事が森林整備部門にあたるでしょう。具体的には下記のような仕事です。

  • 森林の調査
  • 測量設計
  • 立木評価
  • 森林の伐採
  • 造林・管理(経営計画)
  • 草刈
  • 支障木の処理 など

長期的な計画を立てるところから実際に木を伐採するまで、幅広い業務があります。測量や調査、災害で崩れてしまった部分の補修なども森林整備の仕事です。補助金を活用し、森林所有者の負担が軽減されるよう工夫しながら業務を行っています。全国における植林、下刈等、間伐の受託面積のうち、森林組合が担う割合は約5割。日本の森林整備にとって、森林組合が大きな役割を果たしていることが分かります。

参考:森林組合の現状

販売部門

人工林資源が充実してきたことで、森林組合による素材生産・木材販売の取扱量は増加傾向です。

丸太や木材の加工販売のほか、しいたけの原木や木炭の販売なども行います。森林から運び出された木材はランクごとに仕分けた後、用途別に販売します。各種製材品や林産品の販売もするため、無垢の床材などを制作することも業務の一環です。千葉県で伐採された木は、住宅や体育館の建材のほか、子供のおもちゃとしても有効活用されています。

参考:森林組合の現状
参考:千葉県森林組合 | 県材活用事例

指導部門

組合員に対する森林経営指導や広報誌の発行、補助金の手続きサポートなどを行います。林業作業に必要なチェーンソーや刈払い機の安全教育講習や資格取得の場を提供することも森林組合の仕事です。千葉県の場合は、県産木材等の普及啓発も行っています。県内の木材関連の業者と連携しながら、木材を有効活用してもらえるように働きかけています。子供たちに向けた森林教室や木育活動も仕事の一つです。

参考:森林組合の現状
参考:千葉県森林組合 | SERVICE

森林の所有者にとっての森林組合

日本の森林は約7割が民有林。個人や自治体の所有する森林面積が大きいことが特徴です。「組合に加入しているけど、何ができるのか分かっていない」「親族から森林を相続するかもしれない」という方に向けて、森林組合の活用方法を解説します。

活用方法

森林組合は、所有林のことで困った時に多面的にサポートしてくれる組織です。

  • 林業経営の相談や指導
  • 森林管理のための受託作業
  • 資材の共同購入
  • 林産物の協同販売
  • 資金の融資や林地の斡旋

所有林をどのように管理すればいいか分からない時や、作業を委託したい時、管理のための資金が必要になった時などに幅広くサポートしてもらえます。所有林から切り出された木が市場で取引された場合、森林組合の作業費を差し引いた分の収益を得ることも可能です。ただし全ての木を買い取ってもらえるとは限りません。規格に当てはまる場合は買い取ってもらえますが、規格外の場合は買い取ってもらえないことがあります。

参考:森林組合の現状
参考:『図解 知識ゼロからの林業入門』,関岡 東生,家の光協会,2023年,P.26

加入の条件

基本的には森林を所有していることや林業従事者であることが加入の条件です。組合員には2種類あり、「正組合員」と「准組合員」に分けられます。森林を所有している場合、林業で収入を得ずとも正組合員になれます。逆に林業で収入を得ていても、森林を所有していない場合は正組合員にはなれません。条件は森林組合によって異なりますので、お住まいの地域の森林組合で確認しましょう。

正組合員

正組合員は、森林所有者や法人が中心です。

①地区内にある森林を所有している人、生産森林組合またはその他の法人。
②地区内に隣接する市町村にある森林を所有する人、生産森林組合またはそのほかの法人であり、組合の地区内に住所を有するもの。

准組合員

准組合員は、森林の所有者や法人ではなくとも、林業に従事している人であれば加入できることがあります。地区内で林業を行う者、またはこれに従事する者で、組合の事業を利用することが適当であると認められるもの。

※准組合員は、森林組合の運営(総代会の議決権や役員選挙など)には関与できません。

参考:松本広域森林組合
参考:烏川流域森林組合 | 組合員になるには

加入の方法

基本的には申込書に必要書類を添えて、地域の森林組合へ提出します。申込書には、山林面積や出資金、住所や氏名などを記入します。所有している山林を証明できる書類を添付する必要がありますので、固定資産税課税明細書や登記簿謄本などを用意しておきましょう。森林組合のルールは地域ごとに異なります。管轄の森林組合に相談しましょう。

参考:組合員になるには | 鳥川流域森林組合 

加入のメリット

金銭面、情報面、技術面の3つの面でメリットがあります。金銭面では、組合員ではない人よりも安い料金で森林整備を依頼できる場合があります。また複雑な補助金申請の手続きをサポートしてくれますので、個人では整備作業をできない人や事務作業が苦手な人にとっては加入のメリットが大きいです。情報面では、森林経営に関する相談をしたり、情報提供をしたりしてもらえます。広報誌も届くため、地域の森林に関する情報をキャッチしやすいです。技術面では、森林整備のための技術講習会などに参加できます。自身でも山の整備をする場合は、森林組合が心強い味方となるでしょう。

参考:組合員になるには | 鳥川流域森林組合 

加入のデメリット

入会費や年会費がかかります。費用は組合によって異なりますが、一律ではなく面積に応じて決められることが多いです。入会費については、退会時に返還されます。詳しくは地域の森林組合に確認しましょう。

働きたい人にとっての森林組合

民間の林業会社に就職した場合でも、もちろん林業に携わることが可能です。一方で、森林組合ならではの魅力的な業務もあります。

森林組合の仕事の特徴

民間の林業会社との違いは下記の通りです。

地域に対する関心と責任が求められる

森林組合では、地域に対する関心や責任が求められます。市町村・郡の森林所有者とコミュニケーションを取りながら、数十年、数百年先を見据えた仕事をすることが多いためです。幅広いところに目を配りながら、地域に貢献する姿勢が求められます。地域の森林への関わり方のひとつとして「地域林政アドバイザー制度」があります。市町村や都道府県が、森林・林業に関して知識や経験を有する者を雇用し、市町村の森林・林業行政の体制支援を図るものです。ここでも森林組合の職員が活躍しています。森林組合が法人として委託されたり、森林組合の元職員が個人として委託されていたりします。地域の林業において、森林組合が重要な役割を果たしているのです。

参考:地域林政アドバイザー制度 | 林野庁

取りまとめる業務が多い

森林所有者だけでなく、林業会社や林業従事者と関わることもあります。地域の林業のリーダー的役割を求められます。自治体のフォレスターとして活動してきた鈴木春彦さんは、北海道標津町で林業専門職として働いていましたが、途中からは森林組合の職員と兼務しながら働きました。林業の専門家は多くありませんので、限られたスタッフが兼務しながら地域の林業のリーダー的役割を担います。「指導事業」も大切な業務です。林業従事者や森林所有者、一般市民に向けたチェーンソーの講習会などを開くこともあります。将来的に「教える人」として活動したい人や多くの人と触れ合いたい人にとっては、森林組合での仕事は魅力的でしょう。

参考:『森林未来会議 森を活かす仕組みをつくる』,熊崎実,速水亨, 石崎涼子,築地書館,2019年,P.178

配属先が希望通りになるかは分からない

森林組合は県が管轄していることが多く、希望の地域に配属されるとは限りません。千葉県の場合は、県が管轄する千葉県森林組合と千葉市が管轄する千葉市森林組合があります。県が管轄する千葉県森林組合は、実際の勤務場所は7箇所に分かれているのです。必ずしも希望の地域に配属されるとは限りません。

参考:千葉県森林組合 | 組織概要

森林組合で就業するまでの流れ

森林組合への就職は、一般的な就職と同様の流れです。求人情報を確認してから応募し、採用される必要があります。まずはガイダンスなどに参加して、林業と自分の相性についてじっくり考えてみましょう。「緑の雇用」のサイトでは、下記の流れを勧めています。

  • 森林の仕事ガイダンス/エリアガイダンスなどに参加
  • 林業に関するボランティア活動アルバイト経験
  • 林業体験・林業講習会(各都道府県の林業労働力確保支援センター等が実施する林業就業の基礎知識・実地講習)
  • 就職活動(ハローワーク・ 林業労働力確保支援センター)
  • 森林組合、林業経営体などに就業
  • 「緑の雇用」事業にて研修を受ける

参考:緑の雇用 | 初めて林業を検討される人へ

林業に関わる仕事に就職するためのサポート

林業は人手不足や高齢化が深刻な業界ということもあり、若者の就業や新規就業の面ではサポートが手厚いです。林業の仕事について一通り学びたい場合は林業大学校、就職先を探す場合は林業労働力確保支援センターやハローワーク、就職してから研修を受ける場合は緑の雇用が役に立ちます。

それぞれの機関について解説します。

林業大学校

就業前の人が1〜2年かけて林業の知識や技術を学ぶ場所です。実践的な学びが多く、卒業後は即戦力としての活躍が期待されます。令和5年4月時点で、全国に24校にまで増えました。例えば、秋田県林業トップランナー養成研修(通称:秋田林業大学校)では、県内の林業関連の18の企業や団体が「研修サポートチーム」を組み、講師や研修場所の提供、インターンシップの受け入れなどをしています。実践的な知識や技術を学びたい場合は検討してみましょう。

参考:林業大学で学ぼう
参考:森林・林業に関する学科・コース設置校一覧表(林業大学校等)

林業労働力確保支援センター

各都道府県に林業労働力確保支援センターが設置されています。林業従事者の減少に対応するために作られたものです。合同説明会や林業関連の研修、求人情報の提供などを行っています。実際には「林業労働力確保支援センター」という独立した施設があるのではなく、公益法人等が業務の一環として担当していることが多いです。お住まいの都道府県の情報を確認しましょう。

参考:林業労働力確保支援センター一覧 | 林野庁

「緑の雇用」事業

「緑の雇用」は、未経験から林業に従事することが決まった人に対して研修を行う制度です。これから就職を希望する人ではなく、すでに採用が決まった人向けです。「緑の雇用」という研修制度ができた平成15年以降、林業の新規就業者は増加傾向にあります。制度ができる以前の平成14年度の新規就業者は2,211人でしたが、平成15年は3,513人、令和4年は3,119人まで増えました。着実にスキルアップするための、信頼できる制度です。

参考:緑の雇用 | 「緑の雇用」Q&A
参考:緑の雇用 | 緑の雇用とは

まとめ

国土の7割を森林が占める日本にとって、森林組合は欠かせない存在です。所有している森林を活用できていない方は、利益のためにも、環境を保全するためにも、森林組合に相談に行ってみましょう。森林組合で働きたい方は、まずは森林の仕事ガイダンスやエリアガイダンスなどに参加してみることがおすすめです。

林業従事者の需要は高く、国のサポートも手厚いです。とはいえ体力と精神力を必要とする仕事のため、ご自身との相性をじっくり考えてみるところから始めましょう。森林を適切に管理するには、森林の所有者と林業経営体の協力が欠かせません。情報のやり取りをし、人手の足りない部分は互いに補いながら、日本の森林を守っていきましょう。

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