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記事公開:2023.8.29

ESG投資とは何かわかりやすく解説!普及の背景や注目される理由は?個人で投資する方法も紹介

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ESG投資とは、昨今スタンダードになりつつある投資の一つです。一方で、「環境に良さそう」とか「社会貢献みたいなもの」など、その意味をあいまいに捉えている人も少なくないでしょう。

この記事では、ESG投資の意味や注目される理由、個人で実践する方法などをわかりやすく解説します。今後ますます浸透していくと考えられるESG投資の概要を、この機会に正しく理解しておきましょう。

持続的な経済発展に必要とされるESG

ESGとは、企業経営において、近年重視されつつある3つの観点、「環境」「社会」「ガバナンス(企業統治)」の頭文字を並べたものです。

  • Environment:環境
  • Social:社会
  • Governance:ガバナンス

これら3つの要素は、企業の経済成長に加えて、持続可能な社会の実現のために、欠かせないものだとされています。それぞれ、どのようなことを指すのか、具体的にみていきましょう。

Environment(環境)とは

「環境」とは、一般的に環境問題と呼ばれる課題を指し、気候変動・森林破壊・大気汚染・海洋汚染などが挙げられます。過去には、利益を優先し、自然環境をないがしろにした企業活動が少なくありませんでした。水俣病やイタイイタイ病など、高度経済成長期の公害問題は、その際たるものでしょう。

近年であれば、世界中で放棄されたプラスチックが、海洋プラスチック汚染を引き起こしていますし、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出抑制は、喫緊の課題です。環境への悪影響を無視した経済活動は、成り立たなくなってきているのです。

Social(社会)とは

「社会」とは、社会全体で解決するべき幅広い問題を指し、強制労働・児童労働・ジェンダー問題など、多岐にわたります。

世界的には、非倫理的な問題を内包したサプライチェーンに、多くの人が疑問を持ち始めています。過去には、大手アパレルメーカーの縫製を担う多くの労働者の命を奪った、バングラデッシュのラナプラザ倒壊事故をきっかけに、製品の不買運動が起こりました。企業には、これらの社会問題解決に取り組む、不断の努力が必要とされているのです。

参考:CSOネットワーク 提言&コラム|一般財団法人 CSOネットワーク

Governance(ガバナンス)とは

「ガバナンス」とは「コーポレート・ガバナンス」のことで、企業統治という意味です。

ガバナンスが効いてない組織では、不祥事が起こるリスクが高まります。ひとたび不祥事を起こすと、社会的信用の失墜は免れず、経営に大きなダメージを受けるでしょう。また、問題によっては、行政処分を受けることもあり得ます。

不祥事や不正を起こさない、正しい行いをするために、長期的な視点に立った企業統治が求められているのです。

SDGsとの違い

ESGと「SDGs(持続可能な開発目標)」は、異なった概念です。

SDGsは、持続可能な社会の実現のために、2030年までに全世界が達成するべきと、国連が定めた17の「目標」を指します。

一方、ESGは、企業活動において、持続可能な社会と経済発展の両立を目指すために欠かせない、3つの「観点」です。

SDGsとESGの概念は異なりますが、目指すべき社会のあり方は共通しており、お互いに影響し合っています。企業がESGに配慮して活動すれば、結果的にSDGsの達成に貢献しますし、ESGを実践する際に、SDGsが具体的な行動のヒントになり得るのです。

参考:国際連合広報センター|持続可能な開発目標

投資の主流になりつつあるESG投資

ESGを実践する企業への投資をESG投資といい、投資の主流になりつつあります。2006年、国連が責任投資原則(PRI)を提唱し、機関投資家にESG重視の投資先選定を求めたことで、ESG投資が注目されるようになりました。

ESG投資の普及を目指し、世界のESG投資額の統計を集計している国際団体、世界持続可能投資連合(GSIA)のレポートによると、世界のESG投資残高は、2016年の約23兆ドルから、2020年には、1.5倍の約35兆ドルに達しています。

大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とした企業活動が、環境や社会にひずみを生んだ時代を経て、持続可能な社会を目指す現代では、投資においてESGを無視することはできなくなっています。

参考:GSIA|GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT REVIEW(GSIR)2020

ESG投資が従来の投資と違う点

従来の投資は、財務情報を元に投資先を選定してきましたが、ESG投資は、財務情報に加えて非財務情報を重視する点が異なります。

財務情報とは、売上や利益など財務諸表で示される情報です。

一方、非財務情報とは、財務情報以外の情報を指し、企業のESGへの取り組みや、中長期の経営戦略などが含まれます。明確な定義はありませんが、想定されるのは、二酸化炭素排出量や女性役員比率、男性育休取得率などです。非財務情報に表される取り組みは、企業の長期的な成長に欠かせません。

ESG投資の普及は、企業が短期的利益より長期的利益を追求するインセンティブになり、ひいては、持続的な社会の実現に貢献すると考えられています。

ESGに関わる日本の動き

国内においては、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、PRIへ署名した2015年以降、ESG投資が広がり始めました。巨額の投資を行うGPIFが、積極的なESG投資を表明したことで、注目が集まるようになったのです。

その影響は、数字にも顕著に表れています。「日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)」のアンケート調査によると、国内主要機関投資家の運用資産残高に占めるサステナブル投資残高の割合は、2015年の11.4%から、2022年3月末時点の61.9%まで増加しました。ESG投資において欧米に遅れをとっている日本ですが、近年、急速に普及している様子が伺えます。

ESG投資が求められる理由と注意点

世界的にESG投資が急増している理由は、社会全体に好循環をもたらすと認識されているからでしょう。ESG投資は、企業の持続的な経済成長を促し、ひいては、投資家への長期的なリターンを増大させると考えられています。さらに、近年の消費者の価値観の変化も、ESG投資を後押しする一因です。

ESG投資が、なぜ企業の成長を促すのか、消費者のどのような変化に対応しているのか、さらに、ESG投資の注意点について説明します。

企業の持続的な経済成長を促進

ESGを考慮した経営は、企業の利益を縮小させるという意見も一部にはありますが、持続的な経済成長を促すという考え方が主流です。

環境問題・社会問題を何とか解決しようとする姿勢は、企業の新たな事業やイノベーションを生む土壌となり、長期的な成長を促します。さらに、ESGへの積極的な取り組みは、投資家や消費者からの高い評価につながり、資金流入や売上拡大も期待できるでしょう。同時に、従業員の満足度向上や、優秀な人材の獲得にもつながります。

ESG投資は、企業に積極的なESG経営を促し、結果的に長期的な経済発展を実現できるのです。

消費者の価値観の変化に対応

ESG課題に配慮した「エシカル消費」が、欧州や若い世代を起点に年々広がりつつあり、「安ければ何でもいい」という価値観は、今後縮小していくでしょう。このような価値観の変化もまた、ESG投資を加速させる要因の一つです。

非倫理的な商品・サービスは、消費者離れや不買運動を招くリスクが高く、将来にわたって企業が存続するために、ESG経営は必須といえます。消費者が、ESGを実践する企業を好意的に捉える流れは今後も加速すると考えられ、ESG投資はますます拡大していくでしょう。

グリーンウォッシュの問題

企業が、実態を伴わないにも関わらず、ESG課題への取り組みを開示する「グリーンウォッシュ」は、ESG投資本来の意味をないがしろにする問題です。

「ナチュラル」「グリーン」など、明確な意味がなく、なんとなく環境に良いと連想させる言葉をアピールしたり、独自で作った「ラベル」を、第三者機関の認証を受けているかのように見せたりする行為が挙げられます。

グリーンウォッシュとみなされると、ステークホルダーからも消費者からも信用を失います。企業には、ESGに関する誠実な情報開示が求められているのです。

個人で始めるESG投資

近年、機関投資家だけでなく、個人のESG投資も拡大傾向にあり、2020年を境に大幅に増加しています。JSIFによると、2019年12月末に約0.9兆円だった個人向けのESG関連投資信託・債券の投資残高は、2022年12月末には約3.8兆円に達しました。

個人でESG投資を始めるなら、主に次の3つに投資することになります。

  • 投資信託
  • 債券
  • 株式

それぞれの特徴をみていきましょう。

投資信託

初心者でも始めやすいのは、ESG活動への評価が高い企業で構成された投資信託への投資です。運用のプロが、投資信託ごとの運用方針に基づいて選別した、株式や債券などさまざまな銘柄に投資します。分散投資になるため比較的リスクが低く、企業分析や選別・運用をプロに任せられるため、初心者でも挑戦しやすいといえるでしょう。

「女性活躍」「働き方改革」「環境」など、テーマごとのファンドが販売されているので、自分の興味関心に合わせて選べます。

債券

調達した資金を、環境問題・社会問題などを解決するための事業に使う債券を、「ESG債」と呼びます。ESG債への投資も、個人でESG投資を行う選択肢の一つです。

資金の使途が限定されたり、投資家への情報開示やレポーティングが推奨されているため、ESG債への投資は、自身の投資が社会貢献につながっていると実感しやすいといえます。

調達資金の使い道によって「グリーンボンド」や「ソーシャルボンド」などに分けられます。

株式

ESG実践への評価が高い企業の、個別株へ投資するという手段もあります。銘柄選定に際して、個人で企業のESG評価を行う必要があるため、ハードルは高めです。専門知識がない場合には、あまり現実的ではないかもしれません。

まとめ

ESG投資は、社会貢献と長期的な利益の両立を期待できる投資として、急速に普及しています。短期的な利益を追求するあまり、環境や社会に悪影響を及ぼす企業が淘汰される流れは、今後も止まらないでしょう。

国連の提唱をきっかけに注目されるようになり、巨額な資金を運用する世界の機関投資家も重視するESG投資は、近年個人投資家にも波及しています。投資信託や債券には、初心者でも投資しやすい金融商品が揃っているので、挑戦してみてはいかがでしょう。

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