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記事公開:2023.6.23

店舗木質化の最新事例|導入効果や補助金の種類を解説

eTREE編集室

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世界規模で産業が発展したことにより、CO2排出量の増加に伴う地球温暖化、気候変動が問題視されています。そしてこの問題を解決する取り組みとして、店舗の木質化が推奨されていることをご存じでしょうか。

本記事では店舗木質化を行いたい方向けに、最新の木質化事例を解説します。また、木質化する効果や利用できる補助金も紹介するので、店舗で実施できる環境対策について詳しく見ていきましょう。

木質化する5つの効果

木質化のほとんどは、環境対策のために実施される取り組みだと思うかもしれません。確かに木質化は、非木質化と比べてCO2排出量を削減するのが特徴です。ですがそのほかにも、次の効果を得られるとご存じでしょうか。

  • 心理的な効果
  • 身体的な効果
  • 衛生的な効果
  • 経済面の効果
  • 企業価値を向上する効果

上記の効果は、人を集めたり過ごしやすさを提供したりと、身体的・精神的に良い効果を生み出します。まずは、それぞれの効果がもつ特徴を見ていきましょう。

心理的な効果

木質化すると、人の心をリラックスさせる心理的な効果があります。

木材は、紫外線を吸収する効果や音の反響を緩和する効果に優れています。林野庁が公開している「木材は人にやさしい」というページでは、建築物に使用されるコンクリートに比べて紫外線吸収効果、音の反響に対する効果が高いことが分かっています。

出典:木材は人にやさしい|林野庁

また、自然由来の材料には、温かみや安らぎといったリラックス効果があり、空間を木質化することでストレスを軽減する効果が得られるでしょう。

身体的な効果

木質化すると、身体をリフレッシュさせる身体的な効果があります。木材を使用した施設における入居者調査によると、木材を多く使用している施設であるほど、病気やケガといったリスクが少ないことが判明しています。

対入居定員比(%)
入居者の心身不調の内容木材使用の多い施設木材使用の少ない施設
インフルエンザ罹患者16.221.4
ダニ等でかゆみを訴えた入居者4.45.4
転倒により骨折等をした入居者8.012.1
不眠を訴えている入居者2.45.3

出典:木材は人にやさしい|林野庁

また、木材の香りは脳の活動や自律神経の乱れを整える効果があります。木質化された空間にいるだけで心地よく過ごせることはもちろん、病気・ケガを防止にもつながるので、年齢を問わず過ごしやすい空間を提供できるのが魅力です。

出典:木材は人にやさしい|林野庁

衛生的な効果

木質化することには、建物内を綺麗に保つ衛生的な効果があります。例えば木材は、周辺環境を綺麗に保つ次のような効果をもっています。

  • 湿度調整効果
  • 消臭・抗菌効果
  • ダニの防除効果

出典:木材は人にやさしい|林野庁

木材には湿度を調節する機能があり、湿度が高い環境下では木材が空気中の水分を吸収し、乾燥しているときは木材内の水分を放出します。また、木材成分を使った消臭剤や抗菌剤が市販されているように、木材自体にも消臭・抗菌効果があります。既往の研究では、木材成分には約半年~1年の間、ダニの動きを抑制する効果があることが明らかになっています。

経済面の効果

木質化には、建物の滞在時間を延長、来訪者の増加といった経済面の効果があります。人々にリラックスできる環境で過ごしてもらうことによって、自然と店舗や施設の利用を増やせるのが特徴です。また、木質化という話題性があることから、SNSなどを通じて来訪者を増やせるでしょう。

企業価値を向上する効果

木質化には、環境対策やPR活動といった企業価値を向上する効果があります。サスティナブルな材料として木材の利用推進が図られるなか、木質化に積極的に取り組む企業への評価は高まりをみせています。ESG投資やJクレジットなどCO2削減に向けた投資や制度が策定されたことで、環境対策に取り組む企業価値はますます向上していきます。

店舗木質化の導入事例10選

国内では、数多くの店舗が木質化に取り組んでいます。木質化を取り入れたいけどイメージが湧かないとお悩みなら、ぜひ各事例を参考にしてみてください。

事例①レストラン イーストゲート サガエ

「レストラン イーストゲート サガエ」は、山形県寒河江市で運営されているレストランです。白を基調とした現代風の建物であり、緑あふれる広い庭では、バーベキューやパーティーを楽しめます。

店舗内には、県産木材を用いた構造梁、パーテーションが設置されており、リラックスしやすい空間がつくり出されています。また、屋外においても店舗入り口、ウッドデッキ、木柵などが木質化されており、外観からもお客様が訪問したくなるような雰囲気が魅力です。

事例②焼肉名匠 山牛 山形店

「焼肉名匠 山牛 山形店」は、山形県寒河江市で運営されている地元原産の山形牛を使用した焼肉店です。建物全体に木材が使用されており、落ち着いた和の雰囲気が高級感を演出します。

当店舗では、室内の梁や柱などに木材が使用されています。温かみのある雰囲気を生み出せていることはもちろん、店内インテリアや建具もすべて木材にこだわることによって、日本らしさを感じるよう空間設計されています。

事例③音ノ葉グリーンカフェ

「音ノ葉グリーンカフェ」は、東京都文京区で運営されているアンテナショップ兼レストランです。耐火集成材(100%国産杉)が使用された国内初の建築物であり、建物全体が木質化されています。

壁材を除き、建物のほとんどが木質建材によって造られています。レストランとして人の目を引く雰囲気があることはもちろん、耐火性や安全性も兼ね備えた建築物として人々に利用されています。

事例④ブルーボトルコーヒー北谷公園

「ブルーボトルコーヒー 北谷公園」は、東京都渋谷区にある西海岸風のカフェです。建物の外装が木質化されており、公園らしい自然豊かな空間としてお店が運営されています。

当店舗は、コンクリート造の外壁に、多摩産材の外装ルーバーを使用しているのが特徴です。緑あふれる北谷公園の雰囲気とマッチすることはもちろん、環境対策としてCO2削減や温室効果ガス削減の効果を生み出しています。

事例⑤ローソン 海老名市店

「ローソン 海老名市店」は、神奈川県海老名市で運営されているコンビニエンスストアです。一般的なローソンの店舗とは外観が異なり、都市開発計画土地の先駆けとして三井住友建設と住友林業がコラボし、木造建築によるデザインが取り入れられました。

店舗の柱や屋根材には、耐火集成材が使用されています。耐火としての効果はもちろん、木の美しさを活かすことによって、安らぎを感じる「木の家」としての雰囲気が生み出されています。

事例⑥タリーズコーヒー 伊丹店

]「タリーズコーヒー 伊丹店」は、兵庫県伊丹市で運営されているカフェです。建築された伊丹酒蔵通りは景観地区に指定されており、周囲に溶け込む店舗として、木質化が図られています。

当店舗は、周囲の伝統的な町並みと調和することを目的として、屋根材や梁などに木造在来工法が用いられています。モダンな空間を木質化することにより、古さを感じさせないおしゃれなカフェとして、人々の興味を引く空間がつくり出されています。

事例⑦東松島道の駅

「東松島道の駅」は、宮城県東松島で運営されている物品販売店舗です。地元の暮らしを支える店舗として、地場産品が提供されています。また、居心地の良いぬくもりのある空間を生み出すため、店内を中心に木質化されているのが特徴です。

当店舗は、白壁を基調とし、梁そして建具を木質化しています。また、圧迫感がないよう天井の木組みを「あらわし」にしているのが特徴です。食材を販売することもあり、清潔感だけでなく、明るい空間になるよう工夫された設計になっています。

事例⑧CAFE&SPACE L.D.K

「CAFE&SPACE L.D.K」は、旧事務所空間を改装・木質化し、コミュニティカフェとして利用されている店舗です。人々が集まりやすい空間を生み出すため、店内がポイントごとに木質化されています。

当店舗で木質化されているのは、床材や建具といった手の届く箇所です。木のぬくもりを肌で感じてもらえることはもちろん、目線の先に木材があることで、親しみやすい憩いの空間を育むことができます。

事例⑨りくカフェ

「りくカフェ」は、岩手県陸前高田市にある地元住民が運営するコミュニティカフェです。お店のほとんどが木材で作られたコンパクトなカフェで、温かみのある店内でおいしい食事を楽しめます。

当店舗は2011年の大震災後に建てられ、地元住民が訪れやすい憩いの場として仮設されました。ただ、仮設で終わらせるのではなく、復興に合わせてそのままカフェとして移行することを目的に建築されたため、現在もカフェとして地元住民で賑わっています。環境にやさしいカフェというだけでなく、地域に貢献する店舗としてSNSなどで話題になっています。

事例⑩スターバックスコーヒー 太宰府天満宮表参道店

「スターバックスコーヒー 太宰府天満宮表参道店」は、福岡県太宰府市で運営されている木組みが特徴的なカフェです。通常の店舗と異なり、当店舗は参道の雰囲気を壊さないように自然素材を使ったおしゃれなデザインが採用されています。

また、当店舗は東京オリンピック会場をデザインした建築家の隈研吾氏によってデザインされたカフェです。コンクリート造の店内全体に木組みを設置することにより、温かみ、そして近代芸術的な美しさをつくり出し、参道を歩く人々の目を引く店舗として賑わっています。

店舗木質化に利用できる補助金一覧

店舗の木質化を行えば、環境対策として役立つことはもちろん、身体的・精神的にプラスの効果を生み出せます。また、木質化がPR効果につながり、さらに地域材を利用することによって、地域に貢献できるのが魅力です。

そして、実際に店舗を木質化したいと検討している方もいるでしょう。それならぜひ、店舗木質化の補助金を活用することをおすすめします。例えば、対象を店舗などに限定すると、令和5年時点で次のような補助金を利用できます。

補助金の名称概要所管省庁
【中小企業事業・国民生活事業】新企業育成貸付、企業活力強化貸付、環境・エネルギー対策貸付、セーフティネット貸付、一般貸付ほか中小企業・小規模事業者の施設・設備の導入を行うための資金を貸付日本政策金融公庫
森林を活かす都市の木造化等促進総合対策事業のうち都市における木材需要の拡大都市部における木材利用の強化等を図るため、建築用木材の利用実証の取組を支援農林水産省(林野庁)
森林を活かす都市の木造化等促進総合対策事業のうち強度又は耐火性に優れた建築用木材の製造に係る技術開発・普及建築物における実証を通じて、高い普及性が見込まれる新たな技術等の開発や再検証・改善を行う事業を支援農林水産省(林野庁)
CLT・LVL等の建築物への利用環境整備事業のうちCLTを活用した先駆的な建築物の建設等支援協議会方式によるCLT建築物の設計・建築実証の取組を支援農林水産省(林野庁)
国内森林資源活用・木材産業国際競争力強化対策のうち木材製品の消費拡大対策のうちCLT建築実証支援事業のうちCLT建築実証事業協議会方式によるCLT建築物の設計・建築実証の取組を支援農林水産省(林野庁)
国内森林資源活用・木材産業国際競争力強化対策のうち木材製品の消費拡大対策のうちJAS構造材実証支援事業JAS構造材を活用した建築実証を支援農林水産省(林野庁)

出典:建築物の木造化・木質化に活用可能な補助事業・制度等一覧(令和5年度予算・令和4年度補正予算) 

まとめ

世界中で問題視されている地球温暖化や気候変動の対策には、国だけでなく各個人が環境に配慮した行動を求められます。そのうち、店舗が実施できる環境対策として「店舗木質化」があります。

店舗の木質化には、話題性があることはもちろん、衛生面でも優れた効果を発揮します。また、木質化を推進する補助金も活用できるので、この機会に店舗木質化を検討してみてはいかがでしょうか。

森未来は木材情報を集約したプラットフォーム「eTREE」を展開しています。プロの木材コーディネーターが、あらゆる木材の調達や加工をサポートします。木材の調達・加工にお困りであればぜひご相談ください。

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