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伐倒直後の木材は水分を多く含むので、基本的に乾燥させてから様々な用途で使われます。この記事では、木材乾燥が必要な理由やその効果、乾燥方法の種類や特徴、使われる乾燥機などについて解説します。木材乾燥の基本を知りたい人には役立つ情報なので、ぜひ最後まで読んでください。
目次
木材を建築や家具の材料として使う場合、乾燥は必須工程といっても過言ではありません。木材は樹種や季節などにもよりますが、立木の含水率(木の乾燥重量に対する水分重量の割合)が100%を超えることも珍しくなく、伐採と同時に乾燥していきます。
乾燥過程で木材は収縮し強度を高めていくため、乾燥前と乾燥後の木材では材質が異なります。つまり、寸法変化が少ないかつ高強度な木材にするには基準となる含水率まで乾燥させる必要があるのです。
木材乾燥で得られる主要な効果は、次の3つです。
他にも、軽くなるので運びやすい、接着剤や塗装がのりやすい、などの効果もありますが、ここでは主要な3点について、詳しく説明していきます。
木材は水分が蒸発して乾燥が進むと、徐々に収縮していきます。さらに、その収縮率は繊維の方向によって異なり、「板目方向 > 柾目方向 > 繊維方向」の順に小さくなるという収縮異方性の特徴をもちます。この性質によって、木材に割れや狂いが発生するのです。したがって、木材を適切に乾燥し、収縮がほぼ起こらない状態までうまく含水率を下げることで、後々の狂いや割れを防げるのです。
木材乾燥には、木材が腐るのを防止する効果もあります。「腐る」というのは、腐朽菌が木材の主成分を分解し、性質が化学的・物理的に変わることを意味します。腐った木材はバラバラになったり細かい穴が無数に空いたりするので、強度低下につながります。
一般的に乾燥によって木材の含水率を20%以下にすれば、腐朽菌は繁殖できないといわれています。また、既存の研究では、これまで「一定の含水率以上に保たれ、ある一定温度以上になると経過時間に関係なく腐朽が進行する可能性が高い」あるいは「一定の含水率以下では経過時間に関係なく腐朽しない可能性が高い」という2極論で議論されていたところを、実際はグラデーションのような関係である可能性であることも示唆されています。
木材を乾燥させると収縮し、強度が高まります。木材中に存在する水分は、細胞内や細胞どうしの間に存在する「自由水」と、細胞壁の木材繊維と化学的に結合している「結合水」の2種類です。
木材が乾燥する際は、先に自由水、次に結合水が抜けていきます。自由水は木材の性質にほとんど影響しませんが、結合水は乾燥する過程で、木材繊維同士の結合を強固にするため、強度が増すと考えられています。
木材乾燥の方法は、「天然乾燥」と「人工乾燥」に大別されます。それぞれのメリット・デメリットを考慮して、使い分けたり組み合わせたりすることもあります。
天然乾燥は、桟積みにした木材を屋外で乾燥させる方法で、木材本来の色つやを残しながら費用をかけずに乾燥できることがメリットとなります。一方のデメリットは、一定の含水率にするのに非常に時間がかかることです。そのため、納期に余裕がない場合には不向きな乾燥方法といえるでしょう。
人工乾燥は、木材乾燥機を使って温度と湿度をコントロールしながら乾燥させる方法です。短時間でしっかりと乾燥できることが最大のメリットですが、設備費やランニングコストの負担がデメリットと言えます。また、天然乾燥に比べて急激に乾燥させるので、木材にかかる負荷が大きく、色つやを損ねる傾向もあります。
人工乾燥には何種類もの方式があり、使用する乾燥装置も多岐にわたりますが、主要なものは次の表の3つです。
種類 | 容量 | 施設費用 |
---|---|---|
蒸気式乾燥室 | 30㎥(15㎥×2) | 乾燥室 1,400万円 ボイラ(木屑だき500kg/h)700万円 (重油だき500kg/h)400万円 |
除湿式乾燥室 | 15㎥ | 800万円 |
高周波加熱・真空乾燥装置 | 15㎥ | 4,000万円 |
蒸気式乾燥は、蒸気を熱源として温めた空気で、木材を加熱して乾燥させる方式です。乾燥室内の温度・湿度・風速を調節しながら乾燥を進め、最終的に均一な含水率を目指します。幅広い樹種や材種に対応でき、現在最も普及している乾燥方式なのでノウハウが蓄積されています。
設備費は、2,000万円前後となります。
室内を除湿することで木材を乾燥させるのが、除湿式乾燥です。ボイラーなどの熱源を使わず低温で乾燥させるので、操作が容易で、木材の変色も抑えられますが、蒸気式に比べると乾燥時間は長くなります。設備費は比較的安価で、800万円程度。消費電力もそれほど大きくなく、ランニングコストも抑えられるでしょう。
装置内を減圧・加熱して、乾燥する方法を減圧(真空)乾燥と呼びます。その中でも、高周波で加熱を行うものが、高周波加熱減圧(真空)乾燥です。大気圧より低い圧力下のため沸点は100℃以下となり、比較的低温で水分を蒸発させることができます。短時間で、変色・変形の少ない材が得られますが、設備費は4,000万円程度と高額です。
参考:一般財団法人 日本木材総合情報センター「木材利用相談Q&A 100」
安定した品質の乾燥材が求められる中、木材乾燥機の性能も時代とともに進化しています。それを支える、国内の主要な木材乾燥機メーカーのうち、2社を紹介します。
ヒルデブランドは、長野県安曇野市にある、木材乾燥機の総合メーカーです。昭和30年創業の歴史あるメーカーで、国内においては木材乾燥機の先駆者といえるでしょう。時代の流れや多様なニーズに応えるために、製造業・販売する木材乾燥機の種類は、圧力式・蒸気式・温水式など多岐にわたります。
参考:ヒルデブランド株式会社
山本ビニターは、大阪市にある高周波加熱技術を専門とするメーカーで、高周波加熱と蒸気加熱のハイブリッド式木材乾燥機の製造・販売を手掛けています。高周波で木材の内部から、蒸気で木材の外部から加熱することで、短時間で均一な乾燥を実現しました。木材乾燥機以外にも、高周波加熱の技術を用いたプラスチック加工機、食品加工機などを幅広く製造しています。
参考:山本ビニタ−株式会社
新柴設備は、北海道旭川市にある木材乾燥機と関連設備のメーカーです。設計から製造までを自社内で一貫して手掛けており、顧客それぞれの要望に応じた受注生産に対応しています。主力商品の「SK式全自動木材乾燥機」には、室内換気時の排気熱を利用できる熱交換装置が標準装備されており、ランニングコストを抑えた運転が可能です。
参考:株式会社新柴設備
現代では、生物材料である木材に対しても一定の品質が求められ、木材乾燥はこの需要に応えるために欠かせない技術です。乾燥方法の主流は、効率的に進められる人工乾燥ですが、木本来の香りや色つやを優先して天然乾燥を選択することもあるでしょう。用途やニーズに応じて、最適な乾燥方法を選ぶことが大切といえます。
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