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一般社団法人持続可能な森林フォーラム 代表 藤原敬
目次
持続可能な森林フォーラムが作成している「持続可能な森林経営のための勉強部屋」とうサイトで、森未来さんと連携して連続セミナーを開催していますが、今年度第2回を9月3日開催しました。
ゲストにバイオマス産業ネットワーク理事長、泊みゆきさんを迎え前回に引き続いて、木質バイオマス問題をテーマに、「木質バイオマスエネルギー利用の抱える課題と展望~輸入ペレットの問題と日本のバイオマス事業の展望を中心に」という話を伺い、議論をしました。
前回記事はこちら→「木質バイオマスエネルギー利用の懐疑論をめぐって」
泊さんのプレゼンは、FIT(再生可能エネルギー電力の固定価格買取制度)のバイオマス発電の認定稼動状況からはじまりました。
上の図に示すように、FITバイオマス発電所は、稼動が少しずつ増えているが(図4:左半分)、認定された発電所は(現在稼働されていないものも含めて)3倍ほどの発電能力ある(図4:右半分)。
未稼働のものが稼動すると大量の輸入バイオマスが必要になります。
下の図は、輸入が急増するバイオマス燃料の輸入状況。大半が、PKS(パーム椰子殻)(右)と木質ペレット(圧縮成形された燃料)(左)。
今後PKSは調達の制約があり、北米から木質ペレットの輸入量が増える見込みなんだそうです。
木質輸入燃料の1つの問題点は、調達過程のGHG(温室効果ガス)排出量です。バイオマス燃料供給過程で発生するGHG(輸送過程、チップやペレットへの加工過程などで発生する化石燃料起源の二酸化炭素など)を減らすため、GHGの発生量を推定して、化石燃料による発電で発生するGHG(比較対象GHG)を基準にして一定割合以上のGHG(基準値)を発生させるバイオマス燃料をFITの対象範囲から外す動きがあるあります。
欧州発の制度ですが、日本でも今年度から(やっと)制度化?
2030年から比較対象GHGの7割減を基準値とし、それまでは基準値を5割減とする方向。
下図の青いグラフ3つは化石資源の排出量(燃焼で排出するもの+輸送加工過程で排出するもの、の合計)、その下のうすい青はバイオマス燃料の輸送加工過程(燃焼での排出ははいっていない)の排出量、縦線は真ん中が比較対象GHGの5割減、左が7割減です。
前回から続く、この議論です。
この議論については、あとの質疑の重要なテーマなんで、ちょっとお待ちください
関連して、泊さんのプレゼンは北米に行った時の話になりました。
大規模な木質ペレット工場があちこちにできています。
左上の工場は年間76万トン生産と書いてありますが巨大。日本のすべての工場で生産される年間生産量は全部で15万トンです
年間40万トン生産するペレット工場があると、80万立方メートルの木材供給が必要となります。
いろんな伐採地のケースがあるが中には「全部ペレット工場いったよ」というところもあったそうです。
伐採後更新しそうにない場所もありました。
まとめると
の以上でした。
ここから質疑時間。
泊さんのプレゼンのあと、私から3点にわたってコメントと質問してダイヤログセッションです。
FITにおけるGHG排出量の基準に関連して、この話は私自身が、数年前から気にしていたことでした(固体木質バイオマスエネルギーの 需給動向と 環境基準の展開の可能性ー環境経済政策学会報告(2016/9/24))。
FITは「再生可能なバイオマスエネルギーを使って化石資源からの排出を抑える!」という素晴らしいプロジェクトなんですが、燃料の供給過程でたくさんの化石資源由来のGHGは派生している!という点が欧州などで指摘されていたのです。
やっと、今年度GHGの排出量を供給の制約にする仕組みになったんですね。どんな方向性なのか?導入にあたって注意点など伺いたいです。
GHG基準をFITの認定に使っていこうという話は、今後の新規認定発言事業者に対してこんな原料はダメですよと義務付けられるようです。
つまり、今までの認定発電者は利用している原料の供給過程のGHGを報告だとか開示して、なるべくGHGの少ない原料を利用してくださいね、となるはず。
これから作る人は熱電併給で効率性をあげるとか、色々工夫して取組んで、徐々にGHG問題などを解決していこうということだと思います。
米国から多量の木質ベレットが輸入されようとしており、現地にいかれて持続可能性に関する問題点を指摘されました。
米国産地で大量のバイオマス燃料の供給体制ができている!これが持続可能な体制でできたのであれば、次世代の循環社会を見通していくうえで、すごいことだと思いました。
ご指摘は、これが持続可能な形態でなく数々の問題点を抱えている、というご指摘です。供給ポイントが極めて広いプロジェクトで、その中の何か所かをご覧になって問題点を指摘されたので、この場で全体を評価することは難しいんでないかと思います。
そこで、質問は・・・なんでこれが、欧州や日本に輸出されるのか?米国は中国について世界で二番目にGHG排出量が多い排出量大国です。苦労されて米国で循環可能なバイオマス燃料の大量な供給が可能になったのなら、何故、自国内で供給ができないのか?という点です。
FITがなければ供給できないようなエネルギー源なら、持続可能でない、ですね。
ペレットを発電に利用するのは、大規模なものはFITのような補助制度がなければ成立しません。木材工場が製造過程の排出物を使って自家用の発電をするならできるかもしれませんが。
英国ではバイオマス発電への助成を行っていたが、バイオマス利用の湿地林の伐採問題など跡地問題などがでてきて、廃材だけなど助成範囲を厳しくしています。
それで、日本はFITがあるから日本に売ろうとしています。すこし、ゆがんだ制度になっています。
私からの最後の質問は、スライドの9番目バイオマスはカーボンニュートラルか?についてです。
この点については、前回のイベントでゲストできていただいたバイオマスエネルギー協会の加藤顧問が言われていましたが、この話は、長期的な視野で話をしなければならない、という点です。それも踏まえて、私の考えを申しますので、ご意見をいただきたいです。
石炭や石油をつかって、エネルギー効率のよい生産・流通システムを大規模に造成し、コンビニに行けば世界中の原料を組み合わせて生産された製品が安く買える。すばらしい便利な社会を作ってきた。その結果が、気候変動問題で、この社会を循環社会に換えていかなければならない、というのが私たちの世代の、基本的なミッションです。
その前提としての、化石資源エネルギーから再生可能なエネルギーへの転換の一つが、木質バイオマスエネルギーの利用です。確かに木質バイオマスエネルギーを得るにはGHGを排出します。ただ、その二酸化炭素は数十年か数百年の間に大気中から吸収固定されたものであって、次世代の循環社会の構成要素としてよいものかどうかという視点で考えると、何億年前に固定された大量の化石資源からのGHGとは明らかに違う。
私は、化石資源のGHGとバイオマス由来のGHGとは、次世代に残れるかどうかという観点で全く違うのでカーボンニュートラルなんだ、と、思っていました(長期的視点)。
もちろん、再生可能エネルギー利用にはいろんなリスクがあります。ので、原点にかえり、持続可能な循環社会を作っていくための木質バイオマス利用!その点に帰って、GHGの排出問題、供給された木材の持続可能性しっかりリスクをチェックする必要があることは前提です。
気候変動のGHGの排出は大半が化石資源由来だけど、10%ぐらいは土地利用の転換。だから、土地利用も重要。
森林が増えているんなら大事にとっておいたら。木材利用を否定する分けでではありません。FITがなれれば伐られない森林が伐られているのが問題だと言っています。合目的性を考えると、発電でなく熱利用にしてください。
気候変動のために負担してFITをしている。そのために森林が切られるのは問題です。
新たな循環社会を視野に入れて、木質バイオマス燃料が大きな役割を果たす!その移行過程でFITの補助制度で木質バイオマス燃料が供給されるのは当然のことですが、仮に補助事業がなければ決して供給できないような資材が日本のFITのために世界中から大量に供給されるといった事態になっているとしたら、大きな問題ですね。
ただ、現地に負荷をかける持続可能でない原料が供給されているのだとすると、それは、「発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン」で対応できるはずなんですね。この辺は関心をもってフォローしていきます。
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