庭造りからバイオマス燃料まで|木材チップの活用方法とは?

eTREE編集室

ショッピングモールの植栽やドッグラン、あるいは整備された遊歩道など、最近、さまざまな場所で、木材を細かく砕いた「木材チップ」を目にすることがあるのではないでしょうか。

木材チップはさまざまな木材を原料に生産され、活用方法は多岐にわたります。
今回は「木材チップはどうやって作られているのだろう?」「原料は何だろう?」「どのような活用方法があるのだろう」と考える方に向けて、木材チップについて解説します。

木材チップとは「環境にも社会にも優しい素材」

木材チップは木質系原料を切削、もしくは粉砕して小片にしたもので、主に切削チップと粉砕チップの2種類に分かれます。
切削チップは刃物でカッティングされ、形状はフレーク状になっています。
一方、粉砕チップはハンマークラッシャーで棒状に粉砕されたものです。

廃棄されるはずの木材を加工し新たな価値を造り出す木材チップは、環境にも社会にも優しい素材として注目されています。

参考:木材チップ生産量の動向|林野庁

木材チップの原料

木材チップの原料は、主に原木、廃材、端材です。

山林で伐採される間伐材のうち、曲がっていたり小径だったりするものは、製材に向かないことから木材チップの主な原料となります。
また、製材の際に発生する端材も原料で、これらは主に切削チップとして加工されます。

家屋の解体現場で発生する廃材や梱包資材、パレットの廃材などを原料にしているのが粉砕チップです。
粉砕チップの原料はこの他に、道路工事や建設工事に伴う障害木や虫による被害を受けて伐採処理した原木なども含まれます。

なお、木材チップは製材所だけでなく、個人所有の山林や庭の木の伐採も手がける買取業者が製造を行っている例も多く見られます。

木材チップの用途

木材チップは約80%が製紙用パルプの原料として利用されています。
その他の用途として多いのがパーティクルボードやファイバーボードの原料です。

さらに近年では、個人宅でも利用が進んでいる薪ストーブの燃料として、圧縮成形してペレット状に加工、利用されることも増えています。

木材チップの用途として目につきやすいところでは、街路の舗装材、遊歩道の敷設材などを目にする機会も多いのではないでしょうか。
その他、堆肥材料、緑化基盤材、流出オイルや天ぷら油の吸着材としても利用されています。

木材チップの主な活用方法

ここからは、木材チップの主な活用方法について詳しく解説します。
木材チップは、主に次のような用途で活用されています。

  • 製紙
  • ファイバーボード
  • マルチング材
  • 木質バイオマス

それぞれを詳しく見ていきましょう。

製紙|森林資源の有効活用

紙の原料となっているパルプは、木材の繊維が原料です。
パルプの原料として使用される木材チップの割合は、曲がりなどの理由で製材には向かない低質材が約50%、製材時に発生する端材が約45%、その他、解体などで発生する古材が約5%となっています。

製材には向かない森林資源でも、無駄にすることなく有効活用する木材チップの、代表的な活用方法といえます。

ファイバーボード|端材や廃材もリサイクル可能

ファイバーボードは木材を原料とした建材で、木材チップや木片などを高温・高圧で成形した板状建材の総称です。
JIS規格では密度によって、下記の3種類に大別されます。

  • インシュレーションファイバーボード
  • ミディアム・デンシティファイバーボード
  • ハードファイバーボード

建材として利用する際、断熱性能や吸音性能に優れていることに加え、原料の木材チップには端材や廃材を活用できること、一般的な木製品よりも安価である点などがメリットです。

参考:ファイバーボード|一般財団法人 日本木材総合情報センター

マルチング材|雑草対策や土の乾燥防止

木材チップはマルチング材として、植木鉢の装飾や花壇などで雑草対策や土の乾燥を防止する目的に使用される他、公園や庭などで景観を高めるためにも利用されます。

自然由来の木材チップであることから時間経過とともに、土に帰り堆肥化するという点もメリットといえるでしょう。

公園や庭などで利用する際には、5~10cm程度の厚さに敷いた木材チップに転圧をかけて使用します。
ひのきなど香りのする木材チップを使用すれば、腐食しにくいだけでなく、良い香りも同時に楽しめます。

木質バイオマス|ペレット燃料や新たなマテリアル利用も

今後、さらに期待されるのが、木質バイオマスの原料としての活用です。

バイオマスとは「再生可能な生物由来の有機性資源」ですが、その中でも木材を原料としたものを木質バイオマスと呼びます。

主な用途であるバイオマス燃料については、生産性や安全性の向上を図ることが目的として「一般社団法人日本木質バイオマスエネルギー協会」がISOに基づいた品質規格を定めています。

燃料以外にも、未利用の木質資源を新たなマテリアルとして利用する研究が進められています。
例えば、セルロースナノファイバーや改質リグニンといった新しい産業資材は、木材の新たな需要創出や林業の成長産業化につながるとして期待されています。

参考:木質バイオマスのマテリアル利用技術開発について|林野庁

木材チップ活用で期待できる環境や社会への効果

今、木材チップの活用が期待されるのは「再生可能」な資源であるためです。
木材の未利用部分を活用できる可能性を秘めていることに加え、環境や社会にも優しい素材として、注目を集めています。

ここでは、木材チップの活用で期待できる環境や社会への効果について解説します。

カーボンニュートラルへの貢献

石炭や石油などの化石燃料を利用した場合、燃料中の炭素がCO2となって大気中に排出され、元に戻すことはできません。
木材チップなどを利用した木質バイオマス燃料も、利用すれば大気中にCO2を排出しますが、森林によるCO2の吸収を通じて排出分を相殺できるといわれています。

政府が推進する2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、木材チップが果たす役割は大きいと期待されています。

化石燃料使用量の削減

木材チップをバイオマス燃料として活用することは、カーボンニュートラルの実現に貢献することと合わせて、化石燃料の使用量を減らす効果も期待できます。

化石燃料のほとんどを海外からの輸入に頼る日本では、燃料を利用する際に発生するCO2以外にも、輸送に伴うCO2排出量も大きな課題です。

地域で生産される木質バイオマス燃料の活用を進めることで、化石燃料の使用を減らすだけでなく、燃料の輸送にかかるCO2を抑えることも期待されています。

循環型社会の構築

木材チップの活用は、環境省が進める「循環型社会の構築」にも効果が期待できます。
循環型社会とは「廃棄物という概念のない社会」ともいわれます。

木材チップはこれまで廃棄されていた製材には向かない原木や、建築物の解体現場で発生した廃材、製材の現場で発生した端材などが主な原料です。

建築物などへの木材利用が推進されていく中で、未利用の木材を原料とした木材チップの活用先として、化石燃料の代替品としてのエネルギー利用に大きな期待が集まっています。
今後、エネルギーの需要特性に応じた技術システムを整備するなど、木材チップの活用を通じた循環型社会の実現に向けた取り組みが求められていくでしょう。

木材チップ活用時の注意点

環境にも社会にも優しい素材として、さらなる活用が見込まれる木材チップですが、活用方法によっては事故につながることもあります。

ここでは、実際に起きた事故を参考に、木材チップ使用時の注意点について解説します。

自然発火|大量保管時に注意

木材チップを大量に保管する倉庫などで、自然発火が原因とされる火災が発生することがあり、近年、日本各地で被害が報告されています。
木材チップの火災は、微生物の代謝による発熱や可燃性ガスの発生など、蓄熱と酸化反応によって起こると考えられています。

火災を予防するためには、積み上げの高さを5m以内にする、積み上げる山は2m以上のスペースを空ける、定期的に堆積物の切り返しを行うなど、内部温度を下げ、蓄熱させない工夫が必要です。

参考:木材チップ等の自然発火に注意|栃木市

酸素欠乏|狭い空間での保管に注意

狭い空間に大量の木材チップを保管すると、保管中に木材が空気中の酸素を吸収し、炭酸ガスを排出することで、保管した場所の酸素が欠乏することがあります。

実際に、貨物船の船倉内で酸素欠乏症により、作業者が倒れるという事故が発生しています。

通常の保管で密閉した空間に木材チップを入れておくことは少ないかもしれませんが、輸送などで木材チップを保管する際には、作業開始前と作業中に十分換気を行うなど注意が必要でしょう。

参考:労働災害事例|厚生労働省

植物の生育阻害|過剰なマルチングに注意

木材チップはマルチング材として、公園などで歩道に敷設される他、樹木の周辺に敷き詰めて利用されることもあります。

雑草対策や土壌の保温・保湿などで効果が認められる一方で、大量に使用することで雨が土壌に染み込まず、植物の生育を阻害する可能性があります。
また「ならたけ」というきのこが侵入寄生し根から枯らしてしまう「ならたけ病」の発生原因になったりする可能性もあります。

植物の生育に影響を及ぼすことを避けるためには、品質の高い木材チップを利用することや、土壌の様子を確認しながら過剰なマルチングに注意することが必要でしょう。

まとめ

木材チップは、木材を切削または、粉砕した小片で、製材には向かない原木や製材所で発生する端材、解体時に発生する廃材などを原料に作られています。

製紙用のパルプを始め、マルチング材や木質バイオマスとしても活用されるだけでなく、繊維を抽出して新しいマテリアルを生み出す開発も進められています。

木材チップは、木質系資源として、カーボンニュートラルの実現や化石燃料使用の削減への効果が期待される素材です。
また、これまで廃棄されていた木材を有効活用して作られているため、循環型社会の実現に対しても貢献が期待できます。

木材チップは、環境にも社会にも優しい、大きな可能性を秘めた素材といえるのではないでしょうか。

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