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インテリアの紹介などで、雰囲気のあるナチュラルな風合いの木材を見た方も多いのではないでしょうか。今、独特の風合いの中に、確かな強度をもった「古材」が注目を集めています。
そこで本記事では、古材を暮らしの中に取り入れてみたいという方に向けて、メリットやデメリットに加えて、入手方法やDIYのアイディアも含めて解説します。
目次
古材とは住宅に使用されていた古い梁や柱、桁などで、解体時に発生した質の良い木材のことです。
一般にいわれている定義は曖昧ですが、環境省が発表している資料によると「古民家の解体時や改修にまだ使える材として取り出されたもの」とされています。
多くの古材が十分に自然乾燥された強度の高い木材であることに加え、自然素材ならではの味わいや経年変化による独特な色合いが注目され、現在は、内装材やDIY用の木材として活用されています。
古材は、主に古い民家の解体時に発生するもので、主に下記のようなものが存在します。
和室や座敷などで使われていた板材は、強度が高く美しさもあるため、店舗でのカウンター材やテーブルの天板などにも利用されています。
また、建築現場などで使われる木製足場板も古材として需要が高まっています。木製足場板は本来の用途での強度が低下すると新しいものに交換されるため、サイズと数量がある程度そろった古材として重宝されています。
近年、古材が注目を集めるようになった理由にはどんなものがあるのでしょうか。そこには持続可能な循環の仕組みという点に、ポイントがあるようです。
SDGsとは「持続可能な世界の実現」を目指すものであり、貧困や不平等、環境問題といった課題を解決するためにたてられた目標のことです。
古材の活用は森林資源の有効活用という点から、SDGsの方針に沿ったものと言えるでしょう。DIYや商品開発のために、一度利用された木材を、廃棄することなく価値あるものに生まれ変わらせる「アップサイクル」という取り組みを行い、再利用しているからです。さらに、国産古材は輸入材と比較して輸送距離も少なく、CO2の排出量削減にも寄与します。
こういった理由から古材の利用は、SDGsの実現に貢献していると言えるのです。
SDGsと森林資源について詳しく知りた方は、ぜひ下の記事もご覧ください。
参考:国産古材の再利用促進でSDGsに取り組む|古材日和グループ
現在、日本の各地で空き家問題が取り沙汰されています。
総務省が2013年におこなった調査の結果では、全住戸数に対する空き屋の割合は13.5%です。10年前と比較すると1.5倍というスピードで空き家が増えていることになります。
古材の活用が進んで需要が増加することによって、古材を積極的に買い取る仕組みができれば解体費などの軽減も進み、全国の空き家問題の解決にもつながると考えられます。DIY用だけでなく、内装材として利用するなど、積極的な取り組みが期待されます。
古材は大きく分けて下記4つのメリットがあります。
古材はもともと古い家の梁や柱、桁として利用されていたもののうち、良質な木材を再利用したものです。もともとの強度が高いことに加えて、時間をかけて自然乾燥された結果、強度が高くなっているのです。
経年変化による自然な風合いも、活用方法の工夫によってメリットとなるでしょう。新しい木材では出せない味わいが、インテリアの重要な要素となることもあります。
そして、SDGsの実現に沿った環境に優しい素材であることに加えて、天然素材のため住む人にも優しい素材ですシックハウス症候群などを心配することなく、環境にも人にも優しい住まいを実現できます。
一方で、古材の活用には下記のようなデメリットもあげられます。
古材はもともとの用途で使用不可となった物であるため、同サイズ、同規格のものをそろえにくくなっています。同サイズがそろわないことで、想定しているデザインを実現しにくいということもあるでしょう。
また、解体した古い家から調達する古材は、経年変化による劣化があります。激しく劣化した部分をカットしたり、材の中に残った釘などの異物を取り除いたりと手間と時間を要します。
近年、古材を使用したDIYは人気が高まっています。
古材を使うことで、新しい木材では出せない自然な風合いを生かしたナチュラルなインテリアが実現できます。ここでは古材を使用したDIYの中から、代表的ないくつかのアイディアをご紹介しましょう。
古材の一枚板は、長年の使用で付いた傷や深みのある色合いが特徴です。使われていた場所によっては、木組みをするための穴の後や、大工さんの施工痕が見られることもあるでしょう。そんな一枚板を天板に使ったテーブルには新しい木材では出せない、唯一無二の存在感が生まれます。
サイズが小さく、テーブルに加工できない時はベンチの座面に使用するのも良いかもしれません。重厚感ある家具を作れるでしょう。
古材の中でも、比較的入手しやすい足場板は、棚板やシェルフとしての使用に人気があります。もともと作業現場で、床としても使用されていたことから強度が高く、重い物をのせても問題ありません。
黒い棚受けを使えばシックな印象に、白い棚受けを使えば清潔感のあるインテリアとなります。
また、足場板はアップサイクルな商品として近年注目を集めています。気になる方は、下の記事もご覧ください。
古材の入手方法は、大きく下記3つに分けられます。
それぞれのメリットを含めて解説します。
最近ではホームセンターでも古材を扱うお店が増えてきました。ホームセンターで購入するメリットは、実際に物を確認して購入できる点です。
古材は新しい木材と違い、規格が統一されているわけではありません。
入手できるものの中から設計する必要があることから、実際に素材を確認できるホームセンターでの購入は効率の良い方法と言えるでしょう。
通信販売やフリマアプリは、価格を抑えられることに加えて、種類や在庫が豊富です
在庫を一カ所に集めていることも多く、大量の素材が必要な場合でも、そろえられる可能性が高いでしょう。フリマアプリなどでは、DIY用に使いやすくカットされているものなども出品されています。
古材の需要と供給を円滑に進めるために、特定非営利活動法人 日本民家再生協会がおこなう事業のひとつとして「JMRA古材ネットワーク」という仕組みがあります。
JMRA古材ネットワークとは、解体される民家の古材や古い建具などを取り扱う会社が、ひとつのネットワーク上に参加し、買い手を探すというシステムです。
例えるならば、買い手と売り手をつなぐ、古材のマッチングサイトのようなものです。
古材を使ったリノベーションの事例として、下記4つを紹介します。
2022年9月に岡崎高島屋の中にオープンしたクラブハリエ岡崎高島屋店は、カウンターの壁一面に貼られた市松模様の古材が特徴です。
使用されている古材は、柔らかな質感が特徴のスギやマツなどの針葉樹、高級感が漂うケヤキやクリなどの広葉樹を組み合わせています。
さらに不燃処理を施して仕上げた古材も併用し、不燃材料の使用が義務づけられている商業施設などでの古材活用の良い事例となっています。
JOINSPOT袖ケ浦は、2021年に日本総合住生活株式会社が千葉県習志野市に期間限定でコワーキングスペースをオープンしました。
袖ケ浦団地内の商業スペースに利用者と共に作り上げていく施設として企画されています。
オープン前に開催されたワークショップでは、足場板の古材を使用したウッドデッキが製作されています。厚さ35mm、長さが違う足場板を置いて敷くだけの簡単な施工方法が採用されました。
残念ながらJOINSPOT袖ケ浦はすでに閉館しているため、このウッドデッキを見ることはできませんが、置くだけという施工方法は、すぐにでも真似できる事例と言えるでしょう。
2020年に開業20年を迎えた長野県小谷村の「道の駅おたり」は、古木や自然素材を取り入れた牧歌的空間を作ることをコンセプトに改修工事をおこないました。
店内の柱や梁、その他の意匠部分にも古民家から調達された古木を使用し、力強く印象的な店構えになっています。店内には古木に加えて、古民具やかやぶき屋根の技法も取り入れられ、古木の味わいがより印象に残るデザインになっています。
2021年4月に東京駅構内にオープンした治一郎エキュート東京店では、新しい素材と古い素材の融合をコンセプトに、古木とステンレス素材を組み合わせた店構えになっているのが特徴的です。
使われた古材は、古民家や蔵で柱材として使われていたもので、店内の各所に柱として配置されています。本来使われていた貫の穴が残されたまま施工されていて、近代的な中に、温かみの感じられる事例となっています。
参考:エキュート東京店 オープンのお知らせ| 株式会社 治一郎
古材は、SDGsなど環境問題への意識が高まるなか、環境に優しい素材としての存在感を増しています。
インテリアなどに取り込むことで、自然な風合いや味わいが出せる上、強度が高く、人にも優しい木材です。しかし、加工に手間がかかったり、同じものを複数そろえたりしにくいなどの点から、デザインや施工には工夫も必要となるでしょう。
また、古材はDIY用の木材として個人ユースでの人気も高まっています。
テーブルの天板からベンチ、棚板まで応用の幅も広く、ホームセンターや通信販売でも気軽に購入できることから、さらなる普及が期待されます。
森未来では古材をはじめ様々な木材を取り扱っています。気になる方は、ぜひ、お問い合わせください。
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