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記事公開:2022.12.20

森林認証制度とは!?そのメリット・デメリットや種類、取得企業などついて簡単に解説

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森林を保有する方々の中には、森林経営の持続性や販路の確保などで不安に感じる方もいるのではないでしょうか。環境保護への関心も高まる中、適切で持続可能な森林管理と認証材を起点とした循環型社会の実現を目的とした、森林認証に注目が集まっています。この記事では森林認証について、各事業体の取り組みの実例などを交えてご紹介します。

  • 森林認証について色々知りたい人
  • 森林認証をゆくゆくは取得したい企業

上記の方におすすめの記事になっていますので、ぜひご一読ください。また、説明会も実施しておりますので、下記よりぜひご確認ください。

森林認証とは

森林認証とは、森林資源の持続可能な利活用と保全を図るための制度です。この制度により、森林を健全に管理し、適正に流通・加工を行う事業体が、第三者機関による認証を取得できるようになりました。各国政府主体の森林保護には限界があるとして、民間による市場ベースの取り組みとして始まりました。適切な森林管理や責任ある調達をしている生産者側と消費者を認証のラベルでつなぐことにより、森林破壊につながる木材を市場から排除し、適切な森林管理を応援し、広げていこうという取り組みになります。

また、消費者の意識の高まりや国や自治体による認証材を推奨する事業の増加により、販路拡大にも期待ができます。「責任ある森林管理」から、「消費者の選択的購入」を通じて、持続可能な環境保全を促すのが森林認証の役割なのです。一方で、国の支援がいつまで続くかが不透明のため、国主導の支援に依存してしまわないように注意しましょう。

森林認証の種類

森林認証は、企業の社会的責任や環境保護への気運が高まるなか発足した制度です。さまざまな国や機関が、持続可能な森林保全へ向けて歩みを進める契機となった制度ともいえるでしょう。国際的な認証として、現在、FSC®認証PEFC認証があります。(FSC® N004031)

※FSC ® は森未来が提供する研修 コンサルティングサービスの内容に責任を負いません 。

FSC®認証

1994年にWWF(World Wide Fund for Nature:世界自然保護基金)が中心となり、世界中の森林管理や林産物に関わる様々なステークホルダーが集まって設立されたのが「Forest Stewardship Council®️(森林管理協議会)」です。そして、その協議会の運営する認証がFSC認証になります。世界統一の厳正な基準が設けられ、第三者機関の審査を経て、基準を満たしている企業や組織が認証を取得できます。適切な森林管理を審査・認証する「FM認証」と、認証材の加工・流通過程を審査・認証する「CoC認証」の2つから構成されます。消費者が手にする製品にFSC認証マークをつけるためには、FSC FM認証を受けた森林で生産された木材や環境・社会的リスクが低いと認められた原材料をCoC認証を受けた事業体を通じて加工・流通させなければなりません。ここで原材料としているのは、管理木材だけでなく回収原材料も含まれるためです。

参考:FSCジャパン

PEFC認証

PEFC認証は1999年に発足しました。前身は欧州地域に限定された「汎欧州森林認証制度(Pan European Forest Certification Schemes)」でしたが、その後国際化が進んだことで、2003年に「PEFC森林認証制度相互承認プログラム(Programme for the Endorsement of Forest Certification Scheme)」と改称されるようになります。

そして現在、各国独自の認証制度を相互承認する国際認証組織として活動しており、2019年6月時点では、世界51ヶ国、約3億強haFM認証され世界最大の認証制度に、CoC認証は世界で11,741件となっています。なお、PEFC認証もFSC認証と同様、FM認証とCoC認証から構成されています。

参考:SGEC/PEFCシャパン

SGEC認証

SGEC認証(Sustainable Green Ecosystem Council)は、2003年に一般社団法人「緑の循環認証会議」によって設立された日本独自の認証制度です。PEFC認証で認められた「モントリオールプロセス」という基準をもとに策定され、2016年にPEFCと相互認証されました。

日本の森林独自の環境に即して持続可能な森林経営を実現する目的で設立され、状況に応じて見直しをしながら運用されています。現在の規格は2021年に改正され、2022年4月に改めてPEFCと相互認証されたものです。

参考:SGEC/PEFCシャパン

CoC認証

CoC認証は、「Chain of Custody(管理の連鎖)」という意味の認証で、主に製材所や工場、加工業者や流通業者が対象となっています。FSC認証、PEFC認証、SGEC認証のいずれにも言えることですが、FM認証を受けた森林から生産された木材が、加工・流通過程で適切な由来から調達された木材が、不適格な他の木材と混ざってしまうとと認証の意味がなくなります。

そのため、森林から最終製品になるまでの間に関わる全ての事業体※1がCoC認証を受けることで、初めて製品に認証ラベルの表示が許されるのです。

※1:一般の最終消費者にFSC認証製品を販売しているだけの小売業者には認証取得は必要ありません。ただし、建設業者などに認証製品を卸し、その建設業者がFSC認証製品を建築における環境認証のクレジットとして活用するような場合は認証が必要です。

FSCジャパン

参考:FSCジャパン

FM認証

FM認証は「Forest Management(森林管理)」の意味を持つ認証で、森林管理者が取得する認証です。森林が適切に管理されているかどうかを第三者機関が審査し、認証するのがFM認証となります。5年間の有効期限があり、毎年の審査に加え5年毎に更新審査を受ける必要があります。またFM認証の目的は、環境保全という面から適切に管理されることだけではありません。社会的な利益に適い、経済的に継続可能な経営を行うことも含まれています。

プロジェクト認証

プロジェクト認証とは、一回限りのプロジェクトや連続する類似プロジェクトに対する認証で、事業体を認証する通常の場合とは異なります。これは多くの事業体が関わるプロジェクトの場合、すべての組織が恒常的にCoC認証を保持することが難しいことから誕生した認証だからです。

有名なものでは2012年のロンドンオリンピック公園がプロジェクト認証を受けています。

事例:2012年のロンドンオリンピック公園(参考:FSCジャパン

PEFCとFSCの違い

同じように第三者機関による審査を経て認証されるPEFC認証とFSC認証。森林管理に関するFM認証と、加工・流通に関するCoC認証で構成されている点は同じですが、PEFC認証が「各国独自の基準を相互承認する仕組み」であるのに対して、FSC認証は「世界統一の原則基準」がある点が大きな違いです。

一方で、PEFC認証が森林管理に関する持続的な保全と生産を主な目的としているのに対して、FSC認証は労働者や先住民の権利にも踏み込んでいる点が大きな違いとして解釈されるケースがありますが、英国では、UK Woodland Assurance Standard (UKWAS)という規格がFSCとPEFCどちらも満たすものとして使われ、FSC = PEFCとなる国もあります。そのため、そういった解釈は間違っているといえるでしょう。また、マレーシアの認証制度MTCS(Malaysian Timber Certification Scheme)においては、元はFSCの国内規格を作成する試みを断念し、PEFCと相互承認したものなので、FSCの原則と基準(旧版)がもとになっています。

森林認証を取得している国内企業

多くの森林を保有する日本でも森林認証に対する意識は高まっており、直近3か月間だけでも500近い企業や組織がCoC認証を取得、100以上の企業や組織がFM認証を取得しています※2。実際に森林認証を取得している企業の事例をご紹介しましょう。

※2:SGEC/PEFC認証企業10月21日更新リスト(2022年7月〜9月分)

日本製紙グループ

日本製紙グループは、2007年にPEFC、FSCのCoC認証を同時取得しています。これにより、紙製品を製造・販売している同社では、森林認証材を使用した環境対応紙へのニーズに対応可能となりました。2007年に国内の社有林、2008年には海外の植林地すべてでFM認証を取得しています。

持続可能な森林経営で生産地が明らかな木材を使用すること、またその内容を説明できることの2点から、環境と社会に配慮した調達と製造を実現しているのです。

参考:日本製紙グループ

株式会社イトーキ

オフィス家具の製造・販売や建材、パーテーションなどの供給など、オフィス環境の整備を手がける株式会社イトーキでは、FSC、PEFCのCoC認証を取得しています。地域材や国産材を活用した製品の開発・提供に積極的に取り組み、認証材を使用したイスやテーブルなどデザイン性も豊かな製品に特徴があります。同社の東京イノベーションセンター1階は、2012年に日本で7例目、世界で46件目のプロジェクト認証を取得し建設されました。

参考:株式会社イトーキ

清水建設株式会社

1884年に開設された清水建設株式会社の東京木工場は、2018年にFSCのCoC認証を取得しました。東京木工場は、古くから受け継がれる木工技術を伝承すると共に、時代と共に変わる技術革新にも取り組む場所です。

同社では特に、静岡県浜松市で生産される天竜杉のFSC認証材に着目しています。現地に直接出向いて確認と買い付けをおこなう認証材は、同社のKinostyle製品や竣工記念家具として活用されています。

参考:清水建設東京木工所

三井物産株式会社

三井物産株式会社では、同社が持つ森や山すべてについて2006年にSGECのFM認証を取得、2009年にはFSCのFM認証を取得しました。さらに、グループ企業の三井物産フォレストがFSCのCoC認証を同時取得したことで、グループ全体で森林認証のチェーンをつなぎ、国産のFSC認証材を提供できるようになりました。

三井物産では、持続的に森林経営するために、人工林よりもコストが低い天然林への転換に力を入れている点にも特徴があります。

参考:三井物産株式会社

森林認証のメリット・デメリット

森林認証は、取得することで森林の保全を始めとした環境問題へ貢献できるだけでなく、地域振興や資源循環型の製品の拡充などを実現できます。環境への関心の高まりとともに、消費者にも認知が広まっている森林認証取得のメリットやデメリットをみてみましょう。

メリット

森林認証を取得するメリットは以下のような点が挙げられます。

  • 生産者から消費者まですべての人が、森林保護や環境保全に関われる
  • 補助金や助成金などの優遇措置
  • 自治体の推進による販路確保
  • 第三者が入って客観的な基準に基づき自身の森林管理を評価してもらうことにより、様々な気づきや改善の効果
  • 企業のイメージアップ効果が見込まれる

生産者は、信頼ある木材を適正価格で販売することで健全な森林経営を持続でき、加工業者は企業としての取り組み姿勢をアピールできるだけでなく、製品の差別化を図れます。

消費者は環境に配慮された安心な製品を選択、購入することで間接的にでも、環境保全に貢献できるのです。

デメリット

  • 認証の取得と維持に手間とかかる費用がかかる

森林認証は一度取得して終わりではなく、毎年監査を受ける必要があります。その手間と費用は軽視できません。したがって、その手間と費用を正当化できるだけの経済的なメリットを見いだせず、一度取得しても断念してしまうところもあります。

森林認証の要件

森林認証を取得するためには、制度で定められた基準を満たしたうえで、認定を受けた認証機関から審査を受けなければなりません。そして、それぞれの認証制度で定められた基準を満たしていることを確認してもらう必要があります。基準には法律や規則の遵守は当然ながら、環境や地域社会に配慮した長期短期の経営計画を立てることや、運用についての証明が可能であることなどが盛り込まれています。

森林管理認証(FM認証)

FM認証を森林管理者が取得する要件のポイントは以下の2点のようなことが挙げられます。

  • 計画や運用について文書化するということ
  • 計画内容が遵守される体制を整備すること

文書化する内容は、森林の管理・経営計画だけでなく、日頃の施行マニュアルも含まれる点がポイントです。体制の整備は、従業員への教育や訓練の体制、計画に対する進捗状況の確認体制などが求められます。

とはいえ、認証を取得する場合に新たに文書を作成する必要はありません。既存のマニュアルや計画書を活用して審査を受けることも可能なのです。

加工・流通過程の認証(CoC認証)

CoC認証を流通管理者が取得する要件のポイントは以下の2点のようなことが挙げられます。

  • 認証材を使用していることが文書で明確になっていること
  • 記録が最終製品まで追跡できること

調達段階では認証材であることが重要で、製造段階では非認証材と混じることのない運用ができているかを証明する必要があります。

そして販売段階で、適切な認証マークを表示できる体制作りが求められます。CoC認証は1つの拠点からなる単独認証のほか、企業や組織が集まってマルチサイト認証グループ認証を申請できますが、その場合はマルチサイト内、グループ内での情報共有が必要となります。

FSC認証の商品

森林認証の制度が始まってから20年以上が経った現在、さまざまなFSC認証商品が市場に出回っています。消費者の目に触れやすい日用品や利用者の多いサービスでも取り上げられて、ニュースになることも増えてきました。

FSC認証材の家具

FSC認証材を使って作られる木製家具は、消費者が森林認証についてイメージしやすい製品と言えるでしょう。たとえばカリモク家具株式会社は、FSCとPEFCの2つのCoC認証を取得して家具製作をおこない、認証材を使用したオーダーメイドにも対応しています。また株式会社ワイス・ワイスの「ニューモロツカ」シリーズは宮崎県諸塚村で生産される、大きくなり過ぎたしいたけ原木の認証材を家具として生まれ変わらせる取り組みから生まれた製品です。

参考:カリモク家具株式会社 株式会社ワイス・ワイスについて|三菱王子販売株式会社

トイレットペーパー

王子ネピアでは、2011年からトイレットペーパーやキッチンタオル、紙おむつなどの主力商品をFSC認証ラベル表示した商品に切り替えてきました。同社は2017年には環境NGOのWWFジャパンとライセンス契約を結び、FSC認証ラベルの普及に努めています。また、アスクルやカウネットといった通販業者も王子ネピアとの共同開発に取り組み、オリジナルトイレットペーパーでFSC認証商品を販売しています。

参考:王子ネピア株式会社

紙ストロー

脱プラスチックの流れを受けて、大手飲食店が紙ストローに切り替えたニュースは記憶に新しいことでしょう。スターバックスコーヒージャパン株式会社では2021年9月から、国内店舗で販売するフラペチーノにつけるストローを、FSC認証紙を使用した紙ストローに変更しました。

2022年1月には株式会社すかいらーくHDが、2022年10月からは日本マクドナルドでも、FSC認証紙を利用した紙ストローに変更するなど、飲食業界には大きな流れが来ていると言えます。

参考:スターバックスコーヒージャパン株式会社 株式会社すかいらーくHD日本マクドナルド株式会社

各自治体の森林認証の普及に向けた活動

日本には面積の多くに森林を抱える自治体が多く、森林資源の持続的な活用は関心の高い分野になっています。補助金制度の実施や、セミナーの開催、PR活動など、独自の促進策を設けている自治体もあり、森林認証の今後の普及が期待されます。

福島県

福島県では2020年東京オリンピックに際し、復興推進のためのプランを打ち出しました。これは県産材の森林認証の取得と、流通の促進を通して、循環型社会の実現と福島県の復興の促進を狙ったものです。

プランの中には、大会関連施設への県産材活用が盛り込まれ、森林認証制度のPR活動やセミナーの開催、森林認証制度の講習会などをおこなう組織や企業の支援をおこなっています。

参考:福島県

岡山県

岡山県では、県産材の活用と需要拡大をめざし、森林認証取得に関わる審査費用を補助する形で促進を行っています。岡山県にはもともと、森林の二酸化炭素吸収量を評価する独自の認証制度があり、この制度を通じて森林の管理や保全活動に力を入れていました。

その上で、森林認証について理解を深め取得を促進するために、取得を希望する事業体に対して、県として必要な助言や指導、調整を行う役目も担っているのです。

参考:岡山県

三重県

県面積の65%を森林が占める三重県は、江戸時代から400年にわたって引き継がれてきた「尾鷲ヒノキ」の産地でもあります。尾鷲林業地区では2000年に個人所有の森林が日本で初めてのFSCのFM認証を取得、2003年には尾鷲市の私有林が市町村有林単独としては初めて、FSCのFM認証を取得しました。

現在、県内各地でセミナーや体験イベントを実施し、森林認証の取得促進と持続可能な森林管理の実現を目指しています。

参考:三重県

まとめ

適切な森林の管理と流通を通して、持続可能な森林経営の実現を目指す森林認証。この記事では、森林認証制度と事業体や自治体の取り組み、それによって生まれた製品についてご紹介しました。

森林認証の取得はゴールではなく、そのプロセスすべてが環境問題への貢献であり、社会的な責任を果たすことであるとも言えるでしょう。森林認証についての理解を深めることは、持続的な循環型社会の実現へのきっかけになるのではないでしょうか。

森未来は「Sustainable Forest 〜森林を持続可能へ〜」 をミッションに掲げ、森林ツアーの企画や森林認証コンサル、林業家とのトークイベント など森林・林業にまつわる様々な事業を展開しています。 気になる方は、ぜひお問い合わせください。

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