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2025.2.25
日本は国土面積の約3分の2を森林が占める、世界でも有数の森林大国です。
日本の森林の約4割は、人の手で苗木を植え育ててきた「人工林」であり、天然林は伐採などによって減少してきています。
森林の中でも、かつて日本にも広く存在した「照葉樹林」は面積を減らし、現在では数少なくなりました。
今回は照葉樹林の分布や代表的な樹種について解説するほか、国内の貴重な照葉樹林の保全活動についてもご紹介していきます。
目次
「照葉樹林」とは、落葉する時期のない常緑広葉樹で覆われた森林のことです。
葉の表面にクチクラ層(角質の層)が発達しており、厚く光沢のある深緑色をした葉に特徴があります。
照葉樹林は、主に亜熱帯から温帯にかけて分布しています。日本で照葉樹林を構成する主な樹種は、シイ類やカシ類が一般的です。
照葉樹林の基本情報について、以下の3つの切り口から解説していきます。
樹木は大きく「針葉樹」と「広葉樹」の2つに分類され、葉の形状や幹の特徴、木材の性質などが異なります。
さらに、広葉樹は「常緑広葉樹」と「落葉広葉樹」に分類されます。
常緑広葉樹は1年中葉を落とさず、落葉広葉樹は秋に葉を落とすのが特徴です。
照葉樹林を構成する「照葉樹」は、常緑広葉樹の一種です。常緑広葉樹には、以下の3つのタイプも含まれます。
照葉樹林は、ヒマラヤ山地から中国南部、台湾、沖縄、そして日本南西部にかけて、主に東アジア地域に広く分布しています。
日本における照葉樹林は、かつては西南日本を中心に広がり、国土の30〜40%を占めていたと考えられています。
しかし、現在の日本ではまとまった自然林はほとんど見られず、南九州を中心に、四国や紀伊半島の一部などに点在している状況です。
本州では、社寺林や急斜面などに断片的に残る照葉樹林が多く、その面積は国土の1%にも満たないとされています。
森林が形成されるには、樹木が生育可能な気候条件が必要です。
地域ごとの気温や降水量などの気候要因によって、発達する森林の種類が異なります。
照葉樹林は、年間を通して温暖で、夏に雨が多く、冬に乾燥する気候のもとで発達する森林です。東アジアの亜熱帯から暖温帯にかけて広く分布しており、日本では主に暖温帯地域に分布しています。
ここでは、照葉樹林を構成する代表的な樹種について紹介します。
次の4種について、樹種別の特徴や木材の用途などの面から解説します。
日本で見られる主なカシの木の種類には、アカガシ、ウラジロガシ、ツクバネガシ、シラカシなどがあります。
カシの木材は非常に硬く、強度が高いことが特徴があります。そのため、耐久性に優れ、耐風性や防火性も備えています。
この特性から、生垣材や防風林として利用されることが多いです。
一方で、加工が難しく乾燥に時間がかかるという欠点もあるため、取り扱いには注意が必要です。
カシの木材は、道具や建築材など幅広い用途で活用されています。
日本では、主にツブラジイとスタジイが分布しており、シイ属に近縁のマテバシイも「シイ」の名で呼ばれることがあります。
木は、大きいものでは高さ25mにも達します。
木材は乾燥すると割れやすく、非常にデリケートであるため、耐久性はあまり高くありません。
そのため、材木として利用されることは少なく、主に薪やシイタケ栽培用の榾木(ほだぎ)として活用されることが多いです。
クスノキは、日本の照葉樹林を代表する樹種の一つで、樹高は20m、幹の直径は2mにも達します。
クスノキの木材は、美しい木目と独特の香りが特徴です。
特徴的な香りの元となる「樟脳(しょうのう)」という成分には防虫効果があり、古くからタンスなどの家具類に使用されてきました。
また、クスノキは湿気に強く、高い耐久性を持つため、家具だけでなく、社寺建築や床材、楽器など、長期間にわたり使用されるものにも幅広く利用されています。
ツバキは植栽としてもよく利用される低木で、美しい花を咲かせることが特徴です。
暑さや寒さに強く、防音効果もあるため、住宅周りで使用されることも多くあります。
また、ツバキの種子からは良質な油が採れるため、古くから整髪料として重宝されてきました。
ツバキの大木は過去に多くが伐採されたため、現在では木材としての入手が難しくなっています。
ツバキの木材は均質な材質を持ち、摩耗に強く、磨くと美しいツヤが出ることが特徴です。そのため、漆器や工芸品などの製作にも利用されています。
照葉樹林は、一度伐採などの人為的な撹乱が加わると、落葉広葉樹との混交林へと遷移しやすい傾向があります。
現在では、開発などの影響により、照葉樹林の大部分が失われ、まとまった面積を持つ森林はほとんど残っていません。
日本で失われつつある照葉樹林を守るため、行政や地域住民による保全活動が進められています。
以下では、照葉樹林の保全活動の代表的な例を2つご紹介します。
宮崎県綾町は、約2,500ヘクタールにも及ぶ日本最大級の照葉樹林が今なお残る地域です。この貴重な原生的照葉樹林を保護するとともに、周辺の二次林や人工林を照葉樹林へ復元することを目的に、「綾の照葉樹林プロジェクト(綾川流域照葉樹林帯保護・復元計画)」が進められています。
プロジェクトには、九州森林管理局、宮崎県、綾町、公益財団法人日本自然保護協会、一般社団法人てるはの森の会が参画し、連携・協力して取り組んでいます。
プロジェクトでは、50〜100年後に保護林と復元区域を合わせ、6,000ヘクタール以上の広大な照葉樹林の復活を目指しています。
鹿児島県に位置する屋久島は、貴重な生態系と優れた自然景観が評価され、島の約2割が世界自然遺産に登録されているほど、自然の宝庫です。一部は国立公園にも指定されています。
屋久島の中でも、特に河川流域にわずかに残存する照葉樹林には、貴重な森林生態系が存在しています。
「屋久島照葉樹林ネットワーク」は、屋久島の低地照葉樹林の森林植生や希少植物の調査を実施し、生物多様性と生態系保全に向けた活動を実施しています。
年間を通じて温暖で降水量の多い地域に分布する照葉樹林は、常緑広葉樹から構成される森林です。
現在の日本では、まとまった自然林としての照葉樹林は数少なくなりました。
照葉樹林には、シイやカシといった代表的な樹木が生育するだけでなく、多くの野生動物が生息する貴重な生態系が広がっています。
行政や地域住民を中心に、国内の貴重な照葉樹林を保全するため、保護林の拡大や人工林の整備など、さまざまな取り組みが進められています。
照葉樹林を次世代へと引き継ぐために、まずは照葉樹林について知ることから始めてみませんか。
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