中部地方の木材を知ろう!有名な地域材は?県産材の認証制度・取扱事業者も紹介

eTREE編集室

国内でも有数の林産地を抱える中部地方は、多くの地域材・ブランド材を有します。
さらに、地域材の利用拡大を目指す全国的な流れの中で、地元の木材の認証制度を整えている県がほとんどです。

この記事では、中部地方の主要なブランド材や、各県の認証材とその調達先を紹介しています。
中部地方の木材について知りたい人や、地域材を活用したい人は、ぜひ参考にしてください。

中部地方の主な地域材・ブランド材

最初に、中部地方が抱える下記のような有名な地域材やブランド材を紹介します。
なお中部地方とは、北陸地方(新潟県・富山県・石川県・福井県)、中央高地(山梨県・長野県・岐阜県)、東海地方(愛知県・静岡県・三重県)を合わせた10県とします。

  • 長良杉(岐阜)
  • 東濃桧(岐阜)
  • 東濃杉(岐阜)
  • 木曽桧(岐阜・長野)
  • 信州唐松(長野)
  • 三河杉(愛知)
  • 天竜杉(静岡)
  • 尾鷲桧​​(三重)
  • 能登ヒバ(石川)

長良杉(岐阜)

長良川流域の岐阜県郡上市・関市周辺で育ったスギは、「長くて良い杉」という意味も込めた名前である「長良杉」と呼ばれています。

長良杉は、木目の美しさに定評がある材です。木目が均等で、冬目(年輪の色が濃い部分)の幅が広いので、材にすると魅力的な表情が現れます。

また、スギ特有の美しいツヤも魅力です。

スギは一般的に、白っぽい辺材(白太)と淡紅色から赤褐色​​の心材(赤身)を持ち、白太と赤身が混在した材を「源平」と呼びます。
スギらしさが味わえる源平が際立っていることも、長良杉の特徴です。

参考:ぎふの木 利活用のススメ​​|岐阜県林政部県産材流通課

東濃桧(岐阜)

岐阜県は、国内でも有数のヒノキの資源量を誇ります。

なかでも、岐阜県南東部の東濃地方を中心に産出されるヒノキは「東濃桧」​​と呼ばれる銘木として知られており、伊勢神宮の式年遷宮で「外宮用材」として用いられる御神木としても有名です。

東濃桧は、正円に近く幅が均一な年輪と通直な木目、ツヤと香りが豊かな薄いピンク色の木肌を持つこと、節がほとんどないことが特長です。

ねばりがある強度面でも優れた材質は、建築用材として重宝されています。

参考:岐阜県林政部県産材流通課|ぎふの木 利活用のススメ​​

東濃杉(岐阜)

「東濃杉」とは、東濃桧の産地と同じ、岐阜県東濃地方で産出されるスギのことです。

木目が美しい上に、ねばりが強く加工しやすい​​ことから、さまざまな建材として利用されています。
また、水や湿気に強いので、雨の多い地域で使う木材としても優れています。

美しい木目と癒し効果・抗菌作用をもたらす香りをもつ東濃杉は、積極的にあらわしで使用したい木材です。

参考:東濃ひのき製品流通協同組合|東濃育ちの桧と杉

木曽桧(岐阜・長野)

長野県の木曽谷から、岐阜県の木曽川上流地域に分布する天然のヒノキを、「木曽桧」といいます。
木曽桧が生育する天然林は、秋田杉、青森杉の生息地とともに「日本三大美林」として知られています。

優れた材質を持つ重要な建築用材であった木曽桧は、法隆寺や伊勢神宮にも使われてきました。

平成25年より、天然木の「木曽桧」と同等の品質をもつ、国有人工林のヒノキが「〇高〇国(マルコウマルコク)​​木曽ひのき」としてブランド化されています。

マルコウとは高齢級、マルコクとは国有林という意味で、国有林野の樹齢80年以上のヒノキの生産・販売が推進されています。

参考:中部森林管理局 木曽森林管理署​​|〇高〇国(マルコウマルコク)​​木曽ひのき

信州唐松(長野)

森林資源の豊富な長野県において、針葉樹の人工林の半分以上を占めるのが、落葉針葉樹の唐松です。
長野の厳しい冬の影響を受け、しなやかでねばり強い強度のある材質です。

以前は、ねじれやヤニが生じるため、土木用として用いられてきました。

近年は、乾燥技術の進歩によりそれらの問題を克服し、美しい木目と深いツヤを生かして構造材や羽目板としても利用されるようになっています。

経年変化によって、飴色に変化する点も魅力の一つです。

参考:有限会社伊藤木材|信州唐松(信州の木)​​

三河杉(愛知)

「三河杉」は、愛知県東部に位置する奥三河地方の、南設楽郡・北設楽郡・新城市・東加茂郡・額田郡から産出されます。

夏目と冬目が鮮明で均一な年輪に、美しい木目が特長です。

狂いが少なく、耐水性・耐久性にも優れる上、柔らかく加工がしやすい優れた材質を持ちます。
なかでも、降水量の多い鳳来町の三河杉は品質が高く、日光東照宮や江戸城にも使われるほど評価されている杉材です。

参考:株式会社明陽住建|東海地方の木材

天竜杉(静岡)

静岡県は浜松市天竜区、天竜川流域から産出される杉が「天竜杉」です。
この地域の人工林は、三重県の尾鷲桧​​、奈良県の吉野杉の産地とともに、日本三大人工美林といわれています。

天竜杉は、曲がりが少なく、渋い赤みを帯びたツヤのある木肌を持ちます。脂が多いため、カンナをかけたあとには輝くような光沢を呈し、塗装の必要がないほどです。

強度は高く、肌触りの良さもあり、内外装ともに幅広く使われています。

参考:株式会社明陽住建|東海地方の木材

尾鷲桧​​(三重)

先述の「日本三大人工美林」の一つが、三重県南部の尾鷲地方に位置する、尾鷲桧(おわせひのき)の産地です。

尾鷲地方は、急峻な山の斜面と日本有数の雨の多さのため、土壌の養分は海へ運ばれて土地が痩せており、木の生育には厳しい環境です。

そのような環境下では、木はゆっくりと時間をかけて育ちます。
そのため、緻密な年輪、油分を含むツヤのある木肌、高い耐朽性を誇る、品質の高い尾鷲桧が育まれるのです。

厳しい自然環境の中で適切な密度管理を行い、高品質な尾鷲桧を生産し続ける伝統技術として、「尾鷲ヒノキ林業」は日本農業遺産に登録されています。

参考:東紀州・尾鷲ひのきの会​​|尾鷲ヒノキとは

能登ヒバ(石川)

強度が高く、曲げにも強い「能登ヒバ」は、能登半島全域に広がる国産材で、石川県を代表する木材です。

ヒバには共通して多く含まれる、殺菌性のあるヒノキチオールのおかげで、高い耐久性・耐水性を持っています。
また、独特の強い芳香には、リラックス効果もあるといわれています。​​

参考: 国産材総合情報館|地域材の紹介 能登ヒバ(ノトヒバ)​​

中部地方の認証材と取扱事業者

有名なブランド材以外にも、地域の森林には多くの木材が存在し、貴重な資源として活用が望まれています。
各県で行われている、地元の木材に認証制度を設け、利用拡大を図る取り組みを紹介します。

岐阜県の取り組み|ぎふ証明材認証

「ぎふ証明材」は、岐阜県内で合法的に伐採された木材として認証された木材です。
ぎふ証明材の中でも、品質・性能が担保された木材は「ぎふ性能表示材」として認定されています。

「ぎふ証明材」を扱えるのは、登録を済ませた「岐阜証明材推進事業者」のみで、その一覧も公開されているので、問い合わせる際の参考にしてください。

岐阜証明材推進制度に係る「推進事業者」管理台帳(令和5年9月20日現在)

長野県の取り組み|信州木材認証製品

長野県では、信州木材認証製品センターが県産材に対して、一定の品質基準を満たした製品であることを認証しています。

信州木材認証製品センターのHP上では、認証された県産材製品の製造および取扱事業者を、地域別・樹種別に検索できる形で公開しています。

県産材製品製造・取扱店の紹介

山梨県の取り組み|山梨県産材認証

山梨県では、県産材の生産履歴の明確化とその認証を、山梨県産材認証センターが行っています。

産地の認証に加えて「合法性の証明」も行っていることが特徴です。
「合法性の証明」とは、その木材が合法的に伐採されたものであることを証明するもので、国際的にも重要視される違法伐採への対策です。

HP上では、県産材を取り扱う認定登録事業者のリストを公開しています。

県産材取扱認定登録事業者リスト

愛知県の取り組み|あいち認証材

愛知県では、県内で産出された木材、および、それらを加工した製材品を、愛知県産材認証機構が「あいち認証材」として認証しています。

5つの区分(原木・製材品・集成材・合板・その他)と地域別に、取扱業者を検索可能です。

あいち認証材|検索

三重県の取り組み|三重の木認証

三重県の認証県産材は「三重の木」と呼ばれています。
「三重の木」は、三重県内で育成されたという産地認証と、寸法や乾燥度合いなどの規格基準への適合の品質認証、両方を満たした製品です。

また、山梨県の取り組みと同様に、合法的に伐採された木材であることも保証されています。

「三重の木」を取り扱う製材工場・設計事務所・建築業者・地域ネットワークを、地域や取扱樹種、製材品目などから検索できます。

「三重の木」認証事業者

静岡県の取り組み|静岡県産材証明制度

静岡県では、「県産材取扱業者」として木材業者登録を認められた事業者が、「県産材販売管理票」(マニュフェスト)の発行によって県産材証明を行っています。
サプライチェーンのどの段階でも、対象木材の産地が分かるようにシステム化されたものです。

県産材取扱業者の名簿が公開されているので、県産材を調達したい時には役立つでしょう。

2023-2025 静岡県産材証明制度・名簿

石川県の取り組み|石川県材産地及び合法木材証明

石川県では、「石川県材産地及び合法木材証明制」に基づいて、合法木材供給事業者が、工事請負者に「県材産地及び合法木材証明書」を発行することで県産材を証明しています。

合法木材供給事業者は、下記サイトで確認できます。

合法木材ナビ|公益社団法人石川県木材産業振興協会​​

福井県の取り組み|福井県木材トレーサビリティ認証

福井県では、木材のトレーサビリティシステムを確立し、原木から製材品​​、建築現場まで、木材に関するさまざまな履歴を管理しています。

丸太や製材品に貼り付けた認証ラベルで、産地などの情報を追える仕組みです。

参考:福井県木材組合連合会 福井県木材協同組合連合会|ふくい県産材トレーサビリティ

富山県の取り組み|とやま県産材

富山県は、県産材を表す「とやま県産材シンボルマーク」を活用して、県産材の普及啓発を行っています。

マークを使用する商品の材料は、納入されるたびに、納入元である素材生産業者・製材等加工業者・流通業者から証明書の提出を受ける必要があります。

参考:富山県|とやま県産材シンボルマークの使用に関する規程

新潟県の取り組み|新潟県産材

新潟県には、県産材を使った住宅建設に対して補助金を出す「家づくり支援事業」があります。規定された県産材工場から納品された木材の量に応じて、補助が受けられる事業です。

県産材工場とは、県産材の分別管理を行う旨の誓約書を提出した、製材・加工工場のことで、一覧が公開されています。

県産材工場一覧|新潟県

また、先述の「家づくり支援事業」を活用して、県産材を使用した住宅建設に取り組む事業者も確認できます。

新潟県産材を利用した家づくりに取り組む事業者|新潟県

まとめ

国内でも有数の林産地を有する中部地方の域内には、銘木として名の知れた歴史あるブランド材が複数存在します。

また、ブランド材以外にも、国内の木材需要に欠かすことができない良質で美しい木材を産出する産地も多くあります。

各県では県産材の活用を推進しており、取扱業者や店舗も広く一般に公開されていることが多いので、地域材を使いたい場合は活用してみてはいかがでしょうか。

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