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2023.4.19
高断熱住宅では、暑さ寒さに影響されない快適な生活が送れます。
カーボンニュートラル実現のために、今後ますます重視される住宅の省エネ化にも、断熱材は欠かせません。
しかし、表出された存在ではないため、よく知らない人も多いのではないでしょうか。
この記事では、断熱材の役割や素材で異なる特徴、性能の表し方などを解説します。
新築や断熱リフォームを考えている人に役立つ基本情報なので、ぜひ参考にしてください。
目次
脱炭素社会の実現のために、日本のエネルギー消費量の3割を占める住宅・建築物分野の省エネ推進が求められています。2025年4月には、一部の例外を除き原則全ての新築建造物に、省エネ基準への適合が義務化される予定です。さらに、2030年までに、より高い水準の省エネ性能を目指すことが求められており、今後省エネ基準の引き上げは必至といえます。
ますます厳しくなるであろう省エネ基準を満たすために、避けては通れないのが住宅の断熱化です。
省エネ基準とは、求められる省エネ性能を満たすために必要な、建物の構造と設備に関する基準です。
建物の構造とは「断熱材」と窓・扉などの「開口部」、設備が指すのは冷暖房設備・給湯設備などの「設備機器」です。省エネ基準への適否は、これら3項目、断熱材・開口部・設備機器を評価対象に決まります。
住宅の断熱性能を左右する断熱材の考慮は、避けては通れないことなのです。
高い断熱性は、安心して住める家には欠かせないものです。断熱性能を決める要因の一つが断熱材ですが、その主な役割として次の4つが挙げられます。
住む人の心身や経済、住宅そのもの、さらには地球環境を守る効果がある断熱材。その役割を具体的に解説します。
断熱性能が高い住宅は、人の健康や室内環境にプラスに働きます。暖かい室内では、コタツなどに縛られることがないので運動量が増えたり、睡眠の質が向上したりすることが示唆されています。
また、室温は健康診断の結果にも影響し、寒冷な家に比べて温暖な家に住む人は、心電図と総コレステロールの結果が良好です。さらに、居室だけでなく脱衣所まで暖かいことで、入浴事故のリスクも軽減されます。
断熱化された住宅では、結露ができにくい点もポイントです。結露が少ないと掃除の手間が減り、カビやダニの繁殖も抑制できると考えられます。
このように、断熱化で温暖な環境を保てる住宅では、心身ともに満足度の高い生活を叶えられるのです。
光熱費を抑えられるのも、省エネ住宅の特徴です。
省エネ住宅には、断熱性能の強化と高効率設備の導入、両方が必要であり、断熱性能の強化には断熱材が欠かせません。
記事冒頭で触れた通り、2025年から原則全ての新築住宅に省エネ基準への適合が求められます。さらに2030年以降は、ZEH水準と呼ばれる、より高い省エネ基準を満たすことが求められる予定です。2025年基準の省エネ住宅と比較して、ZEH水準の省エネ住宅が削減できる光熱費の参考値は、次の通りです。
地域によって差はありますが、無視できない金額が節約できるということが分かります。
参考:国土交通省|家選びの基準変わります 年間の光熱費も節約できる!
高断熱化で省エネ性能を高めた住宅は、資産価値の面でもメリットがあります。
今後、住宅の省エネ水準は段階的に引き上げられる予定です。現在許容されているギリギリの水準で家を建てると、数年後には新基準を満たせないという事態を招きます。そうなれば、せっかく建てた住宅の資産価値が一気に落ちることにもなりかねません。
省エネ住宅を建てるのであれば、補助金や減税などの優遇措置も用意されています。省エネ住宅普及段階である現在ならではの措置でもあり、将来的にはなくなる可能性もあります。住宅の資産価値を高く保つためにも、高い省エネ基準を満たすことを検討してみましょう。
参考:国土交通省|家選びの基準変わります 優遇措置で建てたい人を応援!
省エネ住宅は、2050年のカーボンニュートラル実現を見据えて、普及が推進されています。断熱性能強化と高効率設備導入の両輪で進められる住宅の省エネ・省CO₂化に、断熱材は欠かせない存在です。住む人の快適性や光熱費の節約だけにとどまらず、地球温暖化対策への貢献が期待されているのです。
住宅用の断熱材は、素材別に大きく4つに分類されます。
それぞれの特徴や用途を解説します。
無機繊維系の断熱材は、ガラスや岩を繊維状にしたものです。ガラスを原料にした「グラスウール」と、玄武岩や鉄鋼スラグを原料にした「ロックウール」があり、いずれも繊維の間に空気が含まれることで断熱性を発揮します。両者とも火に強いため、火災時の安全性が高いとされています。
グラスウールは価格が安く国内で広く普及している一方、ロックウールはヨーロッパの住宅断熱で高いシェアを誇ります。
木材由来のリサイクル素材を原料とする、環境配慮型の断熱材です。無機繊維系に比べると、価格は高くなります。
新聞古紙を粉砕して綿状にした「セルロースファイバー」や、廃材由来の木材チップを繊維化した「インシュレーションボード」があります。両者とも、断熱性能だけでなく吸音性能にも優れています。
セルロースファイバーは、吹付け充填工法によって、配管などの影響で隙間ができず、気密性を高めた施工が可能です。
インシュレーションボードは、外張断熱以外に、畳床や屋根下地、押し入れ壁など住宅建築で幅広く使用されます。
木質繊維系の断熱材をお探しの方は、下の記事もご覧ください。
天然素材を使った断熱材は、環境や人への負担が少ない点がセールスポイントです。一方で、高価格で施工できる業者も限られるため一般的ではなく、多くは健康志向の住宅に使われます。
代表例は「ウールブレス」と「炭化コルク」です。
ウールブレスは羊毛を使った断熱材で、高い調湿効果が特徴です。建物内外の気温差で発生し、カビや腐朽の原因になる壁内の結露を防ぐ効果が期待できます。
炭化コルクは、コルクを作る際に出る端材を利用した断熱材です。コルクを加熱・圧縮してボード状に固めます。コルクに含まれるヤニだけで固まるため、化学物質を一切含まない人に優しい素材です。
発泡プラスチック系は、さまざまなプラスチックを発泡させて作る、種類が豊富で扱いやすい断熱材です。
最もよく使われるポリスチレンフォームは、熱に弱い性質があり、製法の違いで「ビーズ法」と「押出法」に分けられます。
硬質ウレタンフォームは、ボード状のタイプのほかに、現場で吹付け施工するタイプもあります。
フェノールフォームは、発泡プラスチック系の中でも高性能で価格も高い製品です。
断熱性・不燃性・耐久性に優れており、火災時も有毒ガスが発生しません。
断熱材の性能は、素材の性能だけではなく、厚みも考慮して決まります。素材の性能を表す「熱伝導率」、厚みも加味して断熱性能を表す「熱抵抗」をそれぞれ説明します。
熱の伝わりやすさを表す「熱伝導率」は、素材の性能を表す単位です。具体的には、厚さ1メートル・両側の温度差が1℃の素材1平方メートルあたり1秒間に流れる熱量を表しています。
値が小さいほど「熱が伝わりにくい=断熱性能が高い」ということです。厚さが1mと決まっているため、どの素材も同じ条件で性能を比較できます。一方、同じ素材でも厚みが異なると、断熱性能も違ってきます。
厚みも考慮した断熱材の性能は、熱の伝わりにくさを示す「熱抵抗R」で表します。熱抵抗Rは、厚みを熱伝導率で割ったもので、値が大きいほど断熱性能が高いということになります。
同じグラスウールを使った断熱材でも、厚みが50mmと75mmであれば、75mmの方が1.5倍断熱性能が高くなります。断熱材の性能は、素材の性能だけでなく、どのくらいの厚みで施工するかにも左右されるのです。
参考:断熱性能は「性能×厚み」で決まる|岐阜県立森林文化アカデミー
住宅への断熱材の施工方法は「充填断熱」と「外張り断熱」に大別されます。
さらに、両方を合わせた「付加断熱」もあります。この章では、充填断熱と外張断熱の違いや特徴を説明します。
充填断熱は内断熱とも呼ばれ、柱や壁の隙間などに断熱材を敷き詰める工法です。無機・木質含めた繊維系断熱材や、吹付けタイプの硬質ウレタンフォームがよく使われます。
建物の躯体を断熱材の充填に利用するため、新たなスペースが不要で、敷地面積に影響を与えない点が特徴です。また、施工が容易でコストを抑えられるメリットもあります。
一方、柱などで断熱材が途切れるため、気密性が低下して断熱効果が下がりがちです。また、内部結露が発生しやすいので、施工時に防湿フィルムを貼るなどの対策が必要です。
外張断熱とは、建物構造体の外側に断熱材を入れる工法で「外断熱」とも呼ばれ、主に発泡プラスチック系断熱材が使われる工法です。建物全体を外側からすっぽりと包むので、高い断熱効果が得られ、室内の結露も抑えられます。
一方で、外壁が厚くなるので敷地に余裕が必要で、コストも高くなる傾向があります。また、充填断熱に比べて経年劣化が早い点もデメリットです。
断熱材の選定は、商品・工法・地域などによって最適解が変わるので、おすすめを挙げるのは難しい面があります。
大切なのは、施工業者やハウスメーカーの専門家に、求める断熱性能や予算をよく相談して決めることです。
ただし、丸投げにするのではなく、断熱材に関する基本情報は押さえた上で主体的に関わり、後悔ないように進めましょう。
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