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2023.2.27
建材として使われる木材の種類は、大きく分けて二種類あります。すなわち、原木から切り出されたまま適切な形状に加工して使用する無垢材と、小さく切り分けた木の板や小角材を乾燥させ、接着剤などで接合して必要な形・サイズに加工した集成材や合板などの木質建材です。特に後者は、工業的に生産されることから、エンジニアリングウッドとも呼ばれます。
この集成材のうち、複数の木材を組み合わせて大型化し、かつ圧縮や張力の強度を高めた製品はマスティンバーと呼ばれ、生産過程が機械化され品質が安定していることから大型建築などにも活用されています。今回は、DLTと呼ばれるマスティンバーについて紹介します。
目次
DLTの製造方法や特徴について解説します。
DLTとは、「Dowel Laminated Timber」の略で、この「Dowel」とは「ダボ」のことを意味します。ダボとは合わせ釘ともいい、部材と部材の接合面の両方に穴をあけて、このダボを差し込むことによって木材同士をつなぎ合わせる構造をさします。
つまり、DLTは「ダボによって重ね合わせられた木材」という意味です。
DLTは一般的に木質建材で使われる接着剤や金属製の釘を使用せず、木ダボのみで接合される積層材のため、100%木質原料であること、また単純な構造のため生産工程を簡略化できることなどの特徴があります。
本章ではDLTのメリットについて紹介します。
工業的に生産されるマスティンバーにおいて、一般の集成材やCLT(直交集成板)、合板などに使われる石油系の接着剤を使わずに、木ダボを用いて製造されるDLTは完成した製品が100%木質材料であるという大きな特徴があります。
製品の強度を高める工夫としては、接着剤等に依存せず、木材同士の水分量の違いを利用しています。つまり、製造過程において高圧でプレスするときに、スギなどの積層板が縮小、ブナ系などの木ダボが膨張することでお互いに締め付けあうようになり、より緊密に圧着させることができるのです。
このようにして製造されたDLTは、100%木質材料なので手触りや風合いがよく、調湿作用など木材ならではの良さが活かせるというメリットがあります。
CLTに関する記事はこちら
DLTは接着剤不使用のため、シックハウス症候群など化学物質由来の影響や環境負荷がなく、エコフレンドリーな製品であると言えます。
また、木質以外の原料を含まないため、DLTの二次加工や、解体後の廃棄、再利用がしやすいというメリットがあります。つまり、使用後のDLTをそのまま燃やすことも、チップにすることも、あるいはばらして再び板として使用することも容易であるということです。これは、木材のカスケード利用と呼ばれ、木材製品を最後まで余すところなく使うという木材の有効利用においてとても重要な考え方になります。
DLTは、板を並べて、穴をあけ、木ダボを差し込むという、シンプルな工程で作れるため、現場の細かなニーズにも対応することが出来ます。そのためDLTは高付加価値型の少量多品種生産に適しており、そのことは中山間地に点在する日本の多くの中小製材業者にとって参入障壁を下げる大きなメリットとなります。
大規模集約的でなく、各地の林業地に根ざした製材業者にもこのDLT製造に取り組んでもらうことで、低迷する日本の林業の活性化、地域材の活用が進む可能性があると考えられます。
DLTは、製品木材の断面形状や配列によって、多彩な製品の製造が可能となっています。そのため、これまであまり活用されてこなかった皮付きの木材や、製材時の端材など、利用価値が低いものまで製品化できるようになります。
これにより、製材の歩留り向上や製品の高付加価値化が望めます。
多くのメリットをもつDLTは、現在どのような活用方法が期待されているのでしょうか。本章で詳しく解説します。
もっともオーソドックスな活用は構造用パネルです。日本の木造住宅における最も一般的な工法、木造軸組工法において、耐力面材、横架材としてDLTを取り入れることができます。
DLTの大きな面構成が地震などの外力を「面」として全体で受け止め、分散させることで、住まいを災害から守ってくれます。場合によっては現しとしても使うこともできるので、木の良さを存分に感じられる室内空間を作り出すこともできます。
内装用のパネルやボード、また家具としての活用も広がっています。あえて丸身や皮交じりのひき板を使用することにより、均質でない、木そのもののラフな印象を与えることができます。
また、吸音材を挟み込んだDLTも開発されており、音楽室など、これまで吸音材で覆うように施工することで隠されてしまっていた無垢材の仕上りを表に出しつつ、吸音性能を付加することが可能となっています。
参考:(株)長谷川萬治商店
カスケード利用に優れたDLTには、環境配慮の点からも様々な期待が寄せられいています。本章で詳しく解説します。
これまで紹介したDLTは、屋内利用がほとんどでしたが、現在DLTの屋外への使用についても研究開発が進められています。すなわち、DLTパネルを構成するひとつひとつの積層材に、防腐・防蟻剤を加圧注入することで木材の耐久性を向上させ、かつ仕上げ時に木材保護塗料を塗布することで、木材の腐朽劣化を防ぎ、屋外使用にも長く安心して耐えられるDLTが開発されています。
現在、この屋外利用を目的としたのDLTは、横浜市の幼稚園のボルダリングウォールなどで実用化されています。
参考:(株)長谷川萬治商店
DLTは簡易な工程で作成できるため、各地の林業地で生産が可能ですが、現在ブランド材を活用したDLTを推進することでDLTそのものの認知拡大と市場拡大を図っている取り組みがあります。そのひとつが「秋田杉×DLT」です。
もともとネームバリューのある秋田杉を用いてDLTを製造することで、DLTのさらなる普及を目指す取り組みです。現在、秋田県大館市役所の庁舎内に秋田杉DLTのショールームとして秋田杉DLTを活用した打ち合わせスペースとウェブ会議専用ブースが2023年1月に設置されたほか、秋田県能代市では2024年に大型製材所の稼働が予定されています。
参考:令和4年度 顔の見える木材での快適空間づくり事業レポート
DLTは特別高度な技術や加工設備を要しないうえに、これまで利用が進んでいなかった低質材も活用できることから、環境意識の高まりや国産材利用推進の動きなどと相まって近年注目が集まっている製品です。
DLTの更なる普及によって、より木材が身近になり、日本の森が元気になってくれると良いですね。
森未来では、このような新しい木質建材の情報発信や調達等を行っています。気になる方は、ぜひお問い合わせください。
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