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2024.6.12
山や森を見たときに秋でもないのに葉の色が変化している木があったら「ナラ枯れ」かもしれません。
近年、ナラ類やシイ類の木で「ナラ枯れ」の被害が拡大中です。
そこで、今回はナラ枯れの原因やメカニズムと合わせて、ナラ枯れが問題視される理由についても詳しく解説します。
なお、ナラ枯れの被害木に近づくのは危険を伴います。
本記事でナラ枯れの見分け方や具体的な対策方法についてもご紹介しますので、見つけた際の参考にしてください。
参考:ナラ枯れ被害|林野庁
目次
ナラ枯れとは「カシノナガキクイムシ」による、ナラ類が受ける被害のことです。
幹に入り込んだカシノナガキクイムシが「ナラ菌」を持ち込むことで、木が病気に感染します。
ナラ菌に感染した部分は細胞が死に、水を通すための道管が目詰まりを起こします。
その結果、木は水を吸い上げることができなくなり、枯死に至るのです。
被害を受けやすいのは、コナラ・ミズナラ・クヌギなどのナラ類、スダジイ・マテバシイなどのシイ類です。
1980年代以降、全国でナラ枯れ被害が報告されるようになりました。
2000年前後に被害量が一時的に減少したものの、近年、再び増加しています。
参考:ナラ枯れの被害をどう減らすか|国立研究開発法人 森林研究・整備機構
ナラ枯れ被害が拡大した背景の一つには、生活様式の変化があります。
かつて、薪やしいたけ原木として使われていたナラ類やシイ類などの木材が、生活様式の変化により、日常的には使われなくなりました。
伐採される機会がなくなった樹木は年々大径化し、カシノナガキクイムシが幹に入りやすいサイズとなっています。
また、もう一つの背景として、街路樹や公園などにナラ類やシイ類の樹木が植えられていることもあげられます。
カシノナガキクイムシの体は非常に小さいため、下草や低木が茂っていると対象となる木に容易に近づけません。
街路樹や公園ではしっかり周辺が整備されているため、カシノナガキクイムシがたどり着きやすい環境になっていることも要因の一つです。
ナラ枯れの原因とメカニズムは次の通りです。
①ナラ菌を保有したカシノナガキクイムシが木に飛来
②集合フェロモンによって集まったカシノナガキクイムシが集団で木に潜入して産卵
③ナラ菌が孔道を通して木にまん延し、樹木の細胞を破壊
④細胞が壊れると道管が詰まり、水を通さなくなるため多くのナラの木が枯死
潜入したカシノナガキクイムシは木の中で産卵します。
卵からかえった幼虫は孔道内で成育し、6月から8月に羽化して次の木へと飛び立ちます。
ナラの木に潜入したカシノナガキクイムシが次々と増えることで、被害が拡大していくのです。
なお、カシノナガキクイムシの被害を受けた樹木は、全てが枯れてしまうわけではありません。
全枯れしてしまった木が復活することはありませんが、一部、枯れるのみでとどまる生命力の強い木もあります。
参考:ナラ枯れ被害|林野庁
カシノナガキクイムシによるナラ枯れ被害は次の点で見分けます。
夏に遠くから山や森を見て、葉の色が変わっている木があったらナラ枯れ被害の可能性があります。
近くで木の幹の状態を確認して、小さな穴が空いていたりフラスがたまっていたりしたら、ナラ枯れの被害と見てほぼ、間違いないでしょう。
参考:ナラ枯れ被害|林野庁
ナラ枯れが問題視される理由は、ナラが集団で枯死することに加えて、枯死した木による被害が大きいことがあげられます。
ナラ枯れによる問題点は、大きく分けて次の3つです。
ナラ枯れ被害による最大の問題は、枯死した木が倒れる恐れがあることです。
街路樹や公園などに植えられているナラ類・シイ類は多く、その中には大径化している木も多くあります。
ナラ枯れ被害によって、人通りの多い場所にある大きな木が倒れると、人的・物的被害が大きくなる恐れがあるでしょう。
行政がナラ枯れに対する対策に力を入れる理由は、ナラ枯れによる倒木被害を防ぐためとも言えます。
もう一つの問題は、ナラ菌によって枯死した樹木がカエンタケの菌床になることです。
カエンタケとは漢字で「火炎茸」とも書く、赤い色をした猛毒のキノコです。
食べると死に至るケースがあるだけでなく、汁に触っただけでも皮膚が炎症を起こすほど、危険なキノコです。
カエンタケが生育する環境は、ブナ属の木が枯れて腐り始めた株や根の周辺であることが多いと分かっています。
そのため、ナラ枯れの影響でコナラやクヌギ、シイ類などが枯死すると、時間の経過とともにカエンタケの菌床となる可能性が高まるのです。
ナラ枯れは、生態系へ長期的・間接的に影響することも問題点の一つです。
カシノナガキクイムシは集団で飛来するため、飛来した場所周辺のナラの木を集団で枯死に至らせるケースもあります。
一帯の樹木が集団で倒木すると、木の下で暮らす動物や周辺の植物に対して大きく影響するでしょう。
周辺環境への影響を軽減するためにも、さまざまな対策が求められているのです。
ナラ枯れに対する対策で必要なのは大きく分けて次の3点です。
カシノナガキクイムシが飛来する季節に、木の幹をシートやフィルムで覆って潜入を防ぐ方法があります。
これは、健全な木を守るために行う対策です。
カシノナガキクイムシは6月から8月頃に羽化して他の木へと移動するため、夏になる前に対策を行います。
幹をシートで覆うのが難しい場合、クリアファイルと中性洗剤を使用して飛来するカシノナガキクイムシを捕殺するのが効果的です。
クリアファイルを水が溜まるように広げて幹に貼り付け、少量の中性洗剤を溶かした水を溜めたトラップを設置します。
完全な予防はできないものの、集合フェロモンによって集まったムシが滑って水の中に落ちれば、幹への潜入を防ぐ効果が期待できます。
被害を受けてしまった木の幹に、薬剤を注入する孔を空け薬剤を注入することによって立木のまま「くん蒸」する方法があります。
ナラ菌を殺菌すると共にカシノナガキクイムシの繁殖を防ぐために行います。
カシノナガキクイムシが羽化する前に駆除する目的もあるため、春ごろから5月ごろに行うのが効果的です。
なお、カシノナガキクイムシは伐採した木の中でも繁殖して羽化します。
そのため枯死して伐倒する予定の木であっても、伐倒前にくん蒸するのがおすすめです。
立木のままくん蒸するのが難しい場合は、伐採した後、シートで皮膜・密閉して殺虫剤でくん蒸します。
被害木に空いた穴に楊枝のような細い棒を刺して孔をふさぎ、羽化したカシノナガキクイムシが飛び立てないようにする方法があります。
この方法は薬剤などを使わないため、個人の方でもできる対策です。羽化前の5月頃に実施するのが効果的です。
カシノナガキクイムシによる孔が確認できた木に対し、全ての孔に楊枝のような細い棒をさして、孔をふさぎます。
完全に枯死してしまった被害木は、自然に倒木する前に伐倒するのが安全です。
枯死した木でも、すぐに倒木するわけではありません。
時間をかけて大小の枝を落としながら、最終的に倒木に至ります。
人通りの多い場所での落枝には危険が伴うため、被害が出る前に伐採・伐倒処理しましょう。
なお、カシノナガキクイムシは、伐採した木でも繁殖します。
そのため、伐倒後の幹は焼却するか、できるだけ細かくチップ化して十分に乾燥させた上で処理しましょう。
ナラ枯れによる被害を抑えるため、各自治体が補助金の制度を設けています。
現在、埼玉県さいたま市・東京都あきる野市・神奈川県厚木市など、多くの自治体で実施しています。
細かい補助内容は、自治体によって異なりますが、対策にかかる費用の一部もしくは決まった上限額の低い方を補助すると定めている自治体が多いようです。
具体例を、以下の表でいくつかご紹介します。
市町村名 | 対策 | 補助金の対象 | 補助金額 |
埼玉県さいたま市 | 予防 | かかった経費 | 上限30万円 |
駆除 | 実施した際の経費の1/2 | ||
東京都あきる野市 | 防除 | 経費の1/2 | 上限10万円 |
伐採 | 経費の1/2 | 上限20万円 | |
神奈川県厚木市 | 伐採等 | 経費の1/2 | 上限20万円 |
埼玉県川越市 | 防除対策 | 経費の1/2 | 上限20万円 |
参考
ナラ枯れ被害が拡大しています。(補助制度を創設しました。)|さいたま市
ナラ枯れはカシノナガキクイムシが媒介するナラ菌による伝染病です。
1980年代ごろに発見され、現在までナラ枯れによる被害が拡大し続けています。
ナラ枯れの大きな問題点は、枯死した被害木が倒木することによって、人的・物的被害が大きくなる可能性があることです。
被害を出さないためには、予防・防除・駆除・伐採を含めた対策が必要です。
健全な木には伝染させないこと、被害を受けた木は早急に殺菌・駆除を行うこと、枯死した木は伐採することの3点が重要と言えるでしょう。
生活様式の変化によって伐採されずに大径化した樹木が増えている中、それぞれの木の状態に応じた対策が求められています。
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