中国地方の木材を利用するには?地域産材の証明や補助金がもらえる制度を紹介!各県の木材産業の概要も解説

eTREE編集室

◾️導入
域内に大口の木材需要を抱える中国地方では、スギ・ヒノキを中心とした木材生産が行われています。誰もが知っているブランド材ではないものの、素材や製材品の生産量で全国トップクラスを誇る県も存在します。
本記事では、中国地方の木材生産の特徴や近年の傾向、地域産材がどこで手に入るのかなどを解説します。当地域の木材を知りたい人、使いたい人はぜひ参考にしてください。

中国地方で生産される木材

中国地方では、以下の2つの樹種を中心とした素材生産が行われています。

  • スギ
  • ヒノキ

全国63の自治体が木材を提供した東京オリンピック・パラリンピック「選手村ビレッジプラザ」には、鳥取県・同県智頭町・島根県がスギ材を、岡山県がヒノキ材を提供しました。

参考:日本の木材活用リレー ~みんなで作る選手村ビレッジプラザ~​​|公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会|

スギ

全国的に植林されているスギは、中国地方各県でも素材生産が行われています。
令和3年、域内で最もスギ素材生産量が多いのは島根県で全国18位です。

古くから各地で植林されてきたスギは、日本の代表的な樹種といえます。

豊富な資源量、早い成長、まっすぐ伸びる性質は、スギが建築用材として評価される所以です。また、軽量であるため、アウトドア用など軽さが要求される家具作りにも向いています。

参考:各県における主な林産物の生産量|中国四国農政局

参考:お家で「森林ふれあい」森林の大工さん|北海道森林管理局​​

ヒノキ

ヒノキも中国地方全域で生産されていますが、中でも岡山県は、ヒノキの生産県として知られています。

全国的にスギはヒノキの5倍の生産量がありますが、岡山県は逆でヒノキの生産量がスギの2倍あり、熊本県・高知県・愛媛県などとヒノキの素材生産量で全国1、2を争うレベルです。

法隆寺などの歴史的建造物に使われているヒノキは、耐腐朽性・耐久性に優れる最高品質の建築材として、​​古来より重宝されてきました。
人を癒す特有の香りをもち、殺菌効果も期待できることから、ヒノキ風呂やまな板にも使われます。

参考:岡山県産材の特徴​​|一般社団法人岡山県木材組合連合会​​

参考:岡山県の素材(丸太)生産量について~ヒノキ生産量全国2位!~|岡山県

参考:お家で「森林ふれあい」森林の大工さん|北海道森林管理局​​

中国地方各県の地域産材と活用支援制度

中国地方各県も全国の多くの自治体と同様に、地域産材利用促進を目的として、次のような県産材の産地認証制度と、県産材を使った建物などへの助成制度を実施しています。

  • 広島県|県産材産地証明システム
  • 岡山県|森林認証・認証材普及促進事業
  • 山口県|優良県産木材の認証制度
  • 島根県|「しまねの木」認証制度
  • 鳥取県|県産材の流通履歴・産地証明

それぞれの概要や問い合わせ先を紹介していきます。

広島県|県産材産地証明システム

広島県は地域産材の利用拡大を目指し、広島県産材産地証明協議会が発行する産地証明書で、県産材であることを証明しています。

建築物への県産材の積極的な利用を目指して行なっているのが「県産材消費拡大支援事業」です。
県産材を使用する木造建築物において、県産材製品購入の費用を使用材積に応じて補助しています。

そのほか、建築物以外への県産材の需要喚起を目的とするのが「県産材製品開発支援事業」です。
県産材を使用した製品を企画・製造する事業者に対して、デザイン・試作・強度検査などの経費の一部に補助金を交付しています。
他の自治体ではあまりみられない珍しい取り組みです。

参考:広島県産材産地証明システム運用開始!|広島県産材産地証明協議会​​

参考:令和5年度 ひろしまの森づくり事業 県産材消費拡大支援事業​​|広島県農林水産局林業課​​

参考:令和5年度 森林経営管理推進事業 ~県産材製品開発支援事業~広島県農林水産局林業課

岡山県|森林認証・認証材普及促進事業

岡山県は、県内のFM認証森林から生産された原木を使用した乾燥材を県産森林認証材としています。
FM認証森林とは、独立した第三者機関に適切な管理をしていると認証された森林です。

住宅などの新築や改修に県産森林認証材を使用すると、助成金が交付される「おかやまの木で家づくり支援事業」が実施されており、県産森林認証材の取扱事業者一覧が公開されています。

県産森林認証材取扱事業者一覧表|一般社団法人 岡山県木材組合連合会

参考:森林認証・認証材の普及促進について​​|岡山県

参考:【受付中】令和5年度おかやまの木で家づくり支援事業について|岡山県

山口県|優良県産木材の認証制度

山口県は、原木産地および製材・加工地ともに県内である木材製品を「県産材」として認証しています。

さらに、県産材のうち、強度・含水率・材面規格などの認証基準を満たした短辺90mm以上の構造材は「優良県産木材」として認証しています。
認証にあたっては、抜き取り検査ではなく全数検査を行い、品質管理を徹底している点が特徴です。

県は、県産材の使用割合などの基準を満たした住宅建築に補助金を交付する「 やまぐち木の家補助金​​」事業を実施しています。
取扱事業者は、山口県木材協会のHPで検索可能です。

取り扱い業者|一般社団法人 山口県木材協会

参考:やまぐち県産木材活用ガイドブック|やまぐちの農林水産物需要拡大協議会

参考:令和5年度 やまぐち木の家づくり推進事業補助金(やまぐち木の家補助金)について​​一般社団法人 山口県木材協会

島根県|「しまねの木」認証制度

「しまねの木」とは、島根県の森林で生産され、県内で製材・加工された木材製品のことです。
取り扱うのは、認証を担う「しまねの木認証センター」の会員名簿に登載された事業者です。

県では、設計・施工に県産木材を積極的に使用する建築士と工務店を、それぞれ「しまねの木」活用建築士、「しまねの木」活用工務店として認定しています。

これらの認定建築士・工務店の登録名簿は県のHPで公開されており、彼らが関わる住宅・非住宅には補助金が交付されます。

「しまねの木」活用建築士登録名簿​​|島根県

「しまねの木」活用工務店登録名簿|島根県

参考:「しまねの木」認証について|「一般社団法人島根県木材協会​​

参考:「しまねの木」活用建築士・工務店認定制度|島根県​​

鳥取県|県産材の流通履歴・産地証明

鳥取県は、県内で伐採・生産された原木を原料として県内で加工された木材を「県産材」としています。

定められた「鳥取県産材販売管理票」によって、県産材は生産から加工、最終消費者まで、産地や流通の履歴が分かる仕組みです。
工務店や施主などの最終消費者は、販売管理票を元に購入した製材品が県産材であることの証明を受けられます。

「とっとり住まいる支援事業」は、県産材を使用した住宅の新築や改修に対して補助金を交付する事業です。

参考:県産材の産地証明​​|鳥取県

参考:とっとり住まいる支援事業​​|鳥取県

中国地方の森林・林業・木材産業の概況

ここからは、中国地方各県の木材を取り巻く森林や林業の状況、木材製品生産の特徴などを、以下の順番で大まかに紹介します。

  • 広島県|全国トップクラスの製材品出荷量
  • 岡山県|全国有数の国産材加工県
  • 山口県|供給量を上回る県内外の旺盛な木材需要
  • 島根県|全国トップレベルの原木生産量伸び率
  • 鳥取県|合板・CLT・LVL工場が牽引する原木需要

広島県|全国トップクラスの製材品出荷量

広島県の約7割を占める森林は、9割以上が民有林で、おおよそ人工林3割、天然林7割の内訳です。

瀬戸内海に面する沿岸部に多数の大規模製材工場を抱える広島県は、製材品出荷量で全国首位を争うほどです。

従来、製材用原木の9割近くを輸入材に依存していましたが、近年県産材の供給量が増加しており、県内大規模工場への原木直送が多くなってきています。

森林資源を「伐る​​、使う、植える」サイクルを回すために、大部分が伐期に達しているスギ・ヒノキ人工林の更なる活用が望まれています。

そのため、施業の低コスト化、スギ・ヒノキのコンテナ苗や少花粉杉苗木の供給、早生樹種「コウヨザン」の普及などの取組中です。

参考:広島県の森林・林業・木材産業の現状について|一般社団法人 広島県木材組合連合会

岡山県|全国有数の国産材加工県

岡山県は、全国でも有数の国産材加工県といえます。
県土の7割ほどを占める岡山県の森林は、9割以上が民有林で、うち約4割が人工林です。

県内の木材需要の7割は製材用ですが、供給量のうち国産材の割合は99%を占めています。また、県内にある69の製材工場のうち、実に9割が国産材専門工場です。

人工林においてヒノキの占める割合が高いことが、岡山県の大きな特徴です。全国では人工林の47%をスギ、28%をヒノキが占めるのに対し、岡山県ではスギが22%、ヒノキが74%となっています。

参考:岡山県森林・林業統計​​|岡山県農林水産​​

山口県|供給量を上回る県内外の旺盛な木材需要

山口県は、県土面積の約7割が森林で、その97%を民有林が占めています。民有林のうち約4割が人工林です。

県内の大型製材工場と森林バイオマス発電施設、隣県の大規模合板工場が原木を求めていますが、県内の素材生産量は昭和43年の84万m3をピークに減少傾向で、近年は22万m3ほどで推移しています。
旺盛な原木需要に供給が追いついておらず、県産木材の増産と安定供給が求められています。
対策の一環として平成27年度から始まったのが、スマート林業の実現に向けた取り組みです。

参考:令和3年度 山口県森林・林業統計要覧|山口県農林水産部森林企画課​​

参考:最近の原木市場の動き|山口県森林組合連合会

参考:山口県におけるスマート林業の取組|山口県農林総合技術センター​​

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島根県|全国トップレベルの原木生産量伸び率

島根県は、県土面積のうち8割近くを森林が占めており、森林率は、高知県、 岐阜県、 長野県に次ぐ全国4位の高さです。

県内の原木生産量は、価格低迷などが原因で長く低迷していましたが、平成15年頃から合板用原木の国産材への切り替えなどにより徐々に回復してきています。

さらに、平成24年度から全国に先駆けて原木増産対策を開始して以降、令和3年には原木生産量が約2倍にまで増加しており、その伸び率は全国トップレベルで推移しています。

県内に全国有数の大規模な合板工場が複数立地するため原木需要は大きく、令和3年の県内原木需要量は7割近くが合板用です。

参考:令和4年度 島根県の森林・林業・木材産業|島根県農林水産部

鳥取県|合板・CLT・LVL工場が牽引する原木需要

鳥取県は、県の約7割を森林が占め、その約9割が民有林です。民有林の55%を占める人工林は、その半数以上が伐採可能な時期を迎えています。

西部の日野川流域は、大規模合板工場で使用する原木の国産化によって大量消費地となっています。

また、LVL工場や近年注目されているCLT工場の生産体制強化、木質バイオマス発電施設の稼働などが重なったことも大量消費の要因です。

原木需要の高まりを受けて施業集約化・路網整備・機械化などの施策を進めてきたことで、県内の素材生産量は拡大してきましたが、まだ十分とはいえません。

間伐から皆伐への転換や、協定による原木供給量の確保、需要先への原木の直送などによる、さらなる原木の安定供給を目指しています。

参考:林業・木材産業成長産業化促進対策​​|鳥取県​​

参考:鳥取県林業・木材産業構造改革プログラム|鳥取県農林水産部​​

​​まとめ

中国地方には高級ブランド材こそないものの、スギ・ヒノキを中心とした原木生産・製材品生産が行われており、広島県や岡山県などは部門によって生産量が全国上位です。

近年製材原料の国産化が進んでいることや、大規模な製材工場や合板工場、バイオマス発電所を域内に抱えることから、より多くの地域産材が求められています。

各県、伐期を迎えた豊富な森林資源を活用する取り組みを行っている最中です。

また、地域材の活用促進を目的に、木材の産地を認証する制度をそれぞれの自治体が設けています。
認証材を入手する際の問い合わせ先も公開されているケースもあるため、産地限定の木材を使用したい際にはチェックしてみましょう。

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