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2024.4.2
九州地方は全体として温暖で、世界自然遺産に登録された屋久島や奄美大島など、貴重な生態系が残る地域が含まれます。
暖温帯林が広がる地域もある一方で、冬には積雪も珍しくない山間部もあるなど、変化に富んだ気候で豊かな森林資源を育む地域ともいえます。
今回は「九州の木材について知りたい」と考える方に向けて、九州の代表的な木材や木製品の紹介と合わせて、九州地方の木材事情や林業の現状についても解説します。
目次
九州は、変化に富んだ豊かな自然に育まれ、多くの有名な木材を保有しています。
今回はその中から、九州を代表する下記4つの木材を紹介します。
日田杉(ひたすぎ)は、大分県日田市日田郡の林業地帯で生産される杉です。
日田林業地域は筑後川の源流地帯に位置し、全国でも有数の林業地として古くからの歴史を重ねてきました。
日田地方の林業は、1491年(延徳3年)ごろ、中津江村宮園の梅野神社が社殿を再建した際に初めて、杉を植えたことから始まったといわれています。
筑後川という水運に恵まれ、木材を流域の消費地に運ぶ手段があったことや、製材業や木工業が同じ地域で発展したことで、日田林業は栄えてきました。
現在、日田杉は巨木で知られる屋久杉や、宮崎県の飫肥杉と並んで九州三大美林と呼ばれています。
九州北部、阿蘇山の裾野にある熊本県小国町で生産される杉を阿蘇小国杉(あそおぐにすぎ)と呼びます。
江戸時代に当時小国地域を治めていた熊本細川藩から、各戸に25本ずつの杉の苗木が配られ、林業が推奨されたことがこの地域の林業の始まりです。
小国町は標高400mを超える山間地域のため、平均気温が東北地方と同程度の冷涼な気候が特徴です。
夏は比較的涼しく、冬には厳しい寒さになるという寒暖の差があることから、木目の詰まった比重の高い杉が生産されてきました。
2008年には「熊本県阿蘇郡小国町及び南小国町産の杉木材」が「小国杉」として地域登録商標として登録されています。
飫肥杉(おびすぎ)は宮崎県の南東部にある日南市や宮崎市の一部で生産される杉のことで、旧飫肥藩の領地で生産されてきました。
飫肥林業地域の木材は、親木から採取したさし穂を使って造林することで、親木と同じ性質の木材を生産することが特徴です。
飫肥杉は樹脂を多く含むため、弾力性があることに加え、湿気に強く腐りにくいことが特徴です。
古くは、船用の木材(弁甲材)として利用されるほど耐久性にも富んでおり、現在では柱や板など、建築構造用材として利用されています。
巨木で有名な屋久杉(やくすぎ)は、鹿児島県屋久島の標高500mを超える山地に自生する杉のことをさします。
世界自然遺産にも指定された屋久島は「1ヵ月に35日雨が降る」とも例えられるほど、雨が多い地域としても知られています。
新鮮な水に恵まれながらも栄養の少ない花崗岩の土壌で育つ屋久杉は、成長が遅いこともあり、材質の緻密さが特徴です。
なお屋久島では、樹齢1,000年を超える杉は「屋久杉」、若い屋久杉は「小杉」と呼ばれています。
「屋久杉」と呼ばれるものの中では、1966年に発見された最大の屋久杉「縄文杉」や急斜面に生息し根元の上下落差が5.3mもある「大王杉」などが有名です。
九州地方には、雲仙普賢岳(うんぜんふげんだけ)や阿蘇山など、多くの火山があります。
また、九州地方を縦断し異なる水脈の境界線となる奥地脊梁山地もあることから、土壌や水源の保全に関わる森林が多いのも特徴です。
高低差による寒暖差に加え、鹿児島県奄美地方以南は南西諸島気候、福岡県や大分県の一部では瀬戸内式気候など、変化に富んだ気候が育む豊かな森林も特徴の一つといえるでしょう。
古くから林業が推奨されてきた地域も多く、山間部や山の裾野を中心に日田、小国、球磨、飫肥などの有名な林業地があります。
統計によると、九州全体での木材産出量は全国の約3割に上ります。
平成14年度まで減少傾向にあった九州の林業産出額は、その後、横ばいで推移、平成25年から増加に転じ、全国に占める割合を伸ばしています。
県別に見ても、全国1位の産出額を誇る宮崎県を始め、全国3位の大分県、4位の熊本県、7位の鹿児島県など、10位までに4県がランクインする有数の林業地帯です。
一方で、令和2年の林業経営体数は6,050経営体と全国の18%を占めているものの、平成27年の13,939経営体と比較すると57%の減少が見られます。
多くの林業地域とブランド材を支える、林業経営体の充実へ向けた取り組みが課題といえるでしょう。
「国有林野の管理経営に関する法律」に基づいて、林野庁では国有林野の適切かつ効率的な管理・経営を行っています。
こういった背景の中、九州森林管理局では、木材の需要拡大と安定的な供給体制の整備、原木の加工・流通の合理化を目指して、国有林木材のシステム販売に力を入れています。
システム販売とは、買受けを希望する製材工場や素材生産業者などと販売に関する相互協定を締結、木材市場などを介さずに木材を直送する販売方法です。
国有林材の需要と販路の拡大、木材に関する川上から川下までの担い手の育成、さらに地域の管理システムの推進を通じて、木材の安定的な需給を目指した取り組みとなっています。
ここからは、九州の木材を使った下記3つの木製品を紹介します。
九州木材工業株式会社が手がけるのは、無公害の保存木材「エコアコールウッド」です。
1999年に産学官連携によって開発された「エコアコールウッド」は、これまでに製造されてきた保存処理木材と比較して高い耐久性を持っていることが特徴です。
世界文化遺産「厳島神社」の補修工事にも採用されており、水の中という過酷な環境においても腐りにくく、フナクイムシの被害も最小限に抑えるという成果を出しています。
九州木材工業株式会社では、現在、日本初の不燃木材の開発に着手しています。
現在は試作開発が終了、最終の製品評価まで進んでいる段階で、近い将来の製品化と共に、海外への展開も視野に入れた準備が進んでいます。
福岡県八女市にある隈本木工所は、九州でも有数の八女林業地帯に近く、伝統工芸品である提灯や仏壇の部品加工を行ってきた会社です。
実際に食べられる訳ではなく、木の表面を丁寧に研磨することで、赤ちゃんが遊ぶ時に口に入れてしまっても大丈夫なように仕上げてある製品です。
滑らかな手触りに加えて、ヒノキの抗菌効果もあります。
隈本木工所では、1899年創業から木工技術を生かし、夏には手持ちの線香花火、そして冬にはコマを製造販売していました。
創業から120年以上たった現在でも地元八女産のヒノキを加工し、現代に合った木のおもちゃ作りを続けています。
参考:コンセプト|隈本コマ
日本では古くから薄く加工した木の板を使って容器を作ったり、家の壁を葺いたりして利用してきました。
伝統的に利用されている杉で作った薄板を現代に合わせて加工し作られたのが、株式会社 高瀬文夫商店が販売するストローです。
2021年にはウッドデザイン賞2021を受賞しました。
木目を生かして優しい風合いで作られたタイプと、丈夫で口当たり良く仕上げられた漆仕上げタイプの2種類あり、洗って繰り返し使えるのが特徴です。
0.15mmの薄板を丁寧に巻き上げた通常の太さに加え、タピオカやスムージーなどを飲む際にも使える0.3~0.4mmの薄板を巻いて作られた太めのものも販売されています。
九州は、寒暖差の大きい山間部から、雨が多く高温多湿の亜熱帯気候の島嶼地域まで、変化に富んだ地理的条件を含む地域です。
古くから林業が推奨されてきた歴史もあり、さまざまな気象条件がある中で、日本有数の林業地が形成されています。
多くのブランド材を支える九州地方の林業は、林業産出額が全国の3割という実績を持つ一方で、林業経営体の減少が見られる点が課題といえるでしょう。
今後、林野庁が先導する取り組みに基づいた、九州森林管理局が行う木材のシステム販売などを通じて、林業の担い手の育成と木材の安定的な供給が期待されます。
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