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前編で木材製品市場の歴史や仕組み、課題や可能性を見ていきました。ここでは首都圏における複式木材製品市場会社の雄である東京中央木材市場を紹介します。
東京中央木材市場はこのほど、住み慣れた浦安から酒々井へ移転しました。
従来からの市売機能に加え、木材製品の高度加工、さらに多様な木材製品の展示にも力を入れており、今、最も注目すべき木材製品市売市場会社です。
同社は首都圏の数ある木材製品市売会社のなかでも複式市場大手として知られ、私たちも大変お世話になっており、同社の林場をお借りしデザイナー、設計関係向け木材製品展示販売会(eTREE リアルマーケット-展示即売会-)を何度か開催させていただいております。
飯島社長は同社が有する市売機能を、既存の買い方だけでなく新たな需要家に向け積極的に発信しています。「ムクファースト」を提唱し、本物の木材だからこそできることがあるとの信念のもと、新たな需要開拓に取り組んでいます。「ムクファースト」千本ノックです。
同社は22年12月、千葉県浦安市から千葉県富里市に移転し、新装なった酒々井インター富里市場で木材製品市売事業を開始します。23年2月4日(土)、開設オープン記念市を開催します。全国から買い方が集結し大盛り上がりになることは間違いありません。
新市場は東関東自動車道の酒々井インターに隣接し利便性も抜群で、概要は下記です。
新社屋本社棟には全国の桧優良材が設置されており、産地は三重県、奈良県、和歌山県、長野県、多摩産材、茨城県、千葉県です。
私どもも本社管理棟の階段回りに杉CLT(片面現し)を納品させていただいております。
日本木青連の木づかいCO2固定量速算表を元に算出すると木づかいCO2固定量は140.4741 t-co2となります。
正門から入って左側(北棟)がセリ林場、右側(東棟)が所属問屋の製品保管場所、正門脇が木造の東京中央木材市場本社棟です。所属問屋は京南木材、カネイチ大東、国木市売、吉野、谷酒木材、農林、丸栄木材、東京丸文、もくもくサンワの9社(敬称略、順不同)。
構内にはもくもくサンワの木材加工設備もあり、その場で各種木材製品加工ができるようになっています。
高周波プレス、レベルプレナー(L5000×W1350)、ランニングプレナー(L5000×W1300)、自動1面カンナ盤(W1100)、同(W450)、手押しカンナ盤(W400)、超仕上げカンナ盤、ワイドベルトサンダー、軸傾斜昇降盤、軸傾斜丸鋸盤、バンドソー、リップソー、パネルソーなどを設備しています。
特に新規導入された高周波プレスは木材の曲がりや狂いを真っすぐにし、厚みをなるべく残して仕上げることができます。高周波ですから幅ハギ時の接着材の硬化時間短縮にもなります。このほか、飯島社長などが鹿島で行っているレーザー加工等の設備もここへ集約される計画です。
木造の大型木材展示場には各種銘木、高級木材をはじめとした一枚板、無垢の木材製品を多数展示し、買い方以外の来場者にも実物を見てもらえるようになっています。今回、大幅に展示スペースを拡張しており、商談室も完備されます。カウンター材等の一枚板、羽目板やフローリングといった内装仕上げ材、また、実際に木造軸組建築の実物大スケルトンを置き、柱や梁・桁、造作部材、和室のしつらえが一目でわかるようになっています。
特に真壁工法の復権を通じてムクファーストを実現するというのが飯島社長の構想です。
「ムク木材を現しで使用することこそが、国産材A材丸太需要に最も貢献し、山主をはじめとした林業川上へ収益を還元でき、地域の中小国産材製材、さらには市売流通とつながる地場の大工・工務店活性化につながる」
との考え方に立ち、
「実際に中小工務店で伸びている事業所はムク構造材を現しで使用するとの調査結果も出ている。1本の柱、1枚のテーブル材をきっかけに住宅1棟受注にまで結び付けられる提案力を付けていく。A材を適切に活用することが日本の森林を救う」
と信念を語っています。
同社は1953年1月、江東区深川木場で設立されました。その後、江戸川区に江戸川市場を開設し同地に本社も移転しました。68年には千葉県の四街道に千葉木材センター、70年には千葉県の大栄に千葉第二木材センターを開設しています。そして86年、浦安新市場に本社を移転、三井農林との協業も開始されました。市売・センター兼営という事業手法です。
そして、23年、酒々井インター富里市場が本格的に稼働します。
同社の強みは1,500社を超える買方組織でしょう。また、加盟問屋9社による全国の国産材産地、海外を含め木材製品集荷力に厚みがあります。同社では木材流通、施工、設計を一体化した「住まいるCHANCEネットワーク」を立ち上げ、販売店、工務店、設計者と施主をつなぐ活動も展開しています。関係者が三位一体となって営業活動を行うことで新たな需要創造に取り組むもので、この事業モデルは17年のウッドデザイン賞も受賞しています。
また、記念市を通じての全国国産材産地との連携も緊密です。優良紀州材展、優良土佐材展、優良奈良県産材展、岩手県産優良材展などは伝統もあり製材事業所など産地側も毎年来場を楽しみにしています。
このほか、本物の木材を見て触れて知ってもらう活動の一環として、浦安市場では地元の小学校の生徒や家族を市場に招き「木育」活動も熱心に取り組んでいました。
同社では買い方利便性を考慮し、移転後も東葛西に中継センターを設け、都市部の買い方の小口対応、輸送距離の軽減を図っていきます。同センターにも丸栄木材、谷酒木材、京南木材の製品在庫が置かれ、その他の問屋荷物の一時保管も対応してくれるようです。
前編でも述べましたが、木材製品市売流通は、活用の仕方次第でまだまだ機能を生かすことができると考えます。閉ざされたものではなく、多くの人がそれぞれの立場で活用することで新たな可能性も引き出せるのではないでしょうか。
弊社も引き続き、首都圏の木材製品市売市場会社と連携し、木材の活用の道を拓いていきます。
【前編はこちら】→ 木材製品市場を知っていますか?(前編)-市場の成り立ちとこれから-
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